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スキマスイッチの実験は続く

カバーライブ「THE PLAYLIST vol.2」を体験して

『カセットテープの交換』

いつの頃だったか、近所の仲のいい友達や、たまたま席が近くなったクラスメイト、あとはちょっと気になっていたあの人と…
お互いがよく聴いている音楽の話で盛り上がったら、家に帰ってすぐに棚からCDを取り出して、曲順を考えてカセットテープにダビングして。翌日ちょっとドキドキしながら渡したなあ…

のちにMD、配信元のURLを共有、とカタチは変わっていったけれど、誰かとの『好きな音楽の共有』って今でも凄くワクワクする。
スキマスイッチが、2019年3月から4月にかけて開催したカバー曲限定ライブ『THE PLAYLIST vol.2』は、自分の数少ない甘酸っぱい青春の思い出を心の奥底から掘り起こしてくれる、そんなライブであった。
 

スキマスイッチがカバー曲限定ライブを行うのは、今回が2度目。2016年に行われたvol.1は東阪の2公演のみであったが、今回は5都市7公演でのツアー形式で開催された。

vol.1とvol.2の大きな相違点は、選曲の仕方だ。彼らが普段から聴いているプレイリストを紹介するというテーマで、洋楽を中心にマニアックな選曲が光っていたvol.1に対して、vol.2はファンから歌ってほしい楽曲のリクエストを募り、それが数曲反映されていた。

勿論、今回もセットリストの中には彼らからのオススメ曲も入っていたし、知名度が高そうな曲はここぞとばかりにアレンジ・マッシュアップを加え、楽曲名を文字でなぞるだけでは想像することができない、スキマスイッチらしさ溢れる『一筋縄ではいかない』ラインナップになっていたのである。

各開催都市のラジオ局とタッグを組んでリクエスト曲の募集を行い、後日選ばれた楽曲のライブ音源をオンエアするという試みも行われ、普段彼らを追いかけてはいなかった幅広い層からもSNS等での反応が多数見られた。

まさにこのライブ自体が、カセットテープの交換のようだった。
vol.1は、スキマスイッチが私たちにカセットテープを貸してくれたかのようなライブ。そして、今回はまるで彼らから「みんなの好きな曲も教えてよ!」と言われたかのよう。
自分のリクエストを好きなミュージシャンが読んでくれるだけでも嬉しいのに、実際に目の前で演奏してくれるなんて、そんな人生の贅沢、あってもいいのだろうか!?

オリジナル曲が好きなファンにとって、カバー曲限定のライブを開催すること自体、反応がわかれるのかもしれない。だが、彼らはそれも見越した上で実験的なライブを行い、観客とのコミュニケーションで得たものを新たな楽曲制作に反映させている気がする。

(カセットテープを渡した後に、あの人の反応が気になっていた頃、あったなあ…)

そんなことを考えながら、今回のライブについて記録するにあたり、前回のライブを振り返ろうと当時の自分のメモやSNSなどを見返したところ、そこにも「実験は続く」と一言だけ書き残してあった。

THE PLAYLISTシリーズでは、スキマスイッチがミュージシャンとともに『THE PLAYLISTERS』という5人バンドを結成している。メンバーは、Dr. 吉田佳史 from TRICERATOPS、Gt. 山本タカシ、Ba. 紺野光広。ちなみに彼らは、昨年話題になったスキマスイッチの楽曲『Revival』のレコーディングメンバーでもある。
バンドメンバー全員でセットリストから開場時のBGMまで選曲。大橋卓弥のボーカルとそれに劣らぬコーラスワークは、カバーライブということを忘れてしまいそうになるようなクオリティだ。演奏に関しても、常田真太郎の周りに要塞のように積み上げられた鍵盤をはじめとし、様々な種類の機材を駆使して繰り広げられ、そしてMCも5人で喋り倒す。
オリジナル曲を演奏するツアーのバンドとは異なる形態だからこその新しい発見もでき、シンプルな編成なのに目も耳も忙しい。

ところで、今回私の記憶に強く残ったのは、THE PLAYLISTERSのダークな一面だ。

前回は、『氷の世界(井上陽水cover)』が強烈なインパクトを残したが、今回は『Californication(Red Hot Chili Peppers cover)』や『Viva La Vida(Coldplay cover)』といった、栄光の先の闇を歌った洋楽のヒットナンバーを、骨太なバンドサウンドと力強いボーカルで表現。スキマスイッチのオリジナル曲で見せる姿とはまた異なったアプローチを見ることができ、MCなどから見えるいつも楽しそうな5人とは真逆のパフォーマンスに痺れた私は、しばらく身動きがとれなかった。
 

スキマスイッチはこのシリーズ以外にも、過去に二人だけで様々な仕掛けを用意しながら演奏する『DOUBLES』、アルバムを引っ提げずに全国を回り新旧織り混ぜた楽曲をCD音源から大幅にアレンジした状態で披露する『POPMAN’S CARNIVAL』、敬愛するミュージシャンとの対バン企画『re:Action』と、様々なコンセプトでライブ活動を精力的に行ってきたが、全ての公演でいつも感じるのは「本当に音楽が好き」ということ。ただそれだけのことなんだけれど、一番大切なことでもある。
彼らは音楽の魅力を伝えるため、思いつく限りのアイデアをいくつも探し、実際に企画し試みてきたアーティストなのだ。
 

今ツアーで大橋が「自分達の曲全くやっていないのに、こんなに盛り上がって凄いよね」なんて言いながら、最後に伝えていたことがとても印象に残っている。

「こうやって好きな曲をみんなで共有できて、音楽って本当に楽しい。自分達なりの解釈でカバーしたが、家に帰ったらぜひ原曲を聴いてほしい。本当に素晴らしいから。僕たちも負けないように頑張ります。
もしよかったら、スキマスイッチもまた色んなライブをやりたいと思っているので、遊びに来てください」
 

終演後、
「丸ノ内サディスティックにJamiroquai混ざっていたよね」
「Perfumeは凄くファンキーなアレンジだったけれど、どんなミュージシャンを参考にしたんだろう」
「最後の曲知らなかったけれど凄くよかった。原曲聴いてみよう」
「開場の時に流れていたサンバ調の曲は何?」
と尽きない話題。
オリジナルの楽曲が好きで集まったはずの観客達の興味の幅が、確実に広がっていく時間だった。
 

「音を楽しむ」と書いて「音楽」。この醍醐味を、色々な切り口で伝えようと試行錯誤を止めることのないスキマスイッチ。私は、この二人の実験の対象者であり続けたい。

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