1935 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

「人間」である為に必要なこと

4人組人間集団 パノラマパナマタウンが刻んだ新たな人間史

パノラマパナマタウン史上初の全国ワンマンツアー。

全9公演の中のツアーファイナルである 2019年 5月18日、恵比寿LIQUID ROOMで巻き起こった出来事を書き留めたいと思う。
 

それは自分の人生と言う決められたコースの途中に、ただふと現れた。彼らの音楽に肩を叩かれて振り変えると「同じ人間代表」の4人組が、音を鳴らし歌詞を紡いでいるのが見えた。

もしかしたら、それだけのこと なのかもしれない。
 

今回のツアー、「人間集会」には、このだだっ広い世界には一人一人の人間がいて、それぞれ違う生活をしている と言う、この世の中で1番の「当たり前」を、今になってやっと気づかせてくれるようなタイトルだと感じていた。
人間はあまり物事を深く考えたくならないようで、当たり前が当たり前にならないのは多分そのせいなのだけれど。

そんな事は考える暇もなく、「Top of the Head」の一音目は掻き鳴らされた。同時に、
「100点のライブは出来なくてもいい!
今日、ここ恵比寿リキッドルームにいる、一人一人に届けにきた!」と、ボーカル岩渕が先陣を切る。

その言葉と音をスタートに、
「$UJI」、「Gaffe」と、絶えること無く繋がってゆくメロディ達は、ツアー初日の千葉LOOKとは良い意味で全くの別物になっていて、正直なところ驚きを隠せなかった。

“売れたい”
周りのロックバンドがその言葉を強調する中、
そう話す彼らの姿を、あまり見たことがないと感じていたら、

「今日、売り切れなくて、すげえ悔しかったんすけど。」

と言う言葉が、このタイミングで出てきた。

その瞬間のメンバーの眼差しはそれぞれ本当に真剣で、今でも忘れられない。間違いなく4人とも同じ気持ちだっただろうし、私達オーディエンス側もきっとそうだ。

でもその言葉から滲み出るのは、「後悔」とか「諦め」とか「弱音」ではなく、間違いなく「未来」だった。

そこで演奏される「パノラマパナマタウン」の産まれ故郷 神戸・新開地に思いを寄せた曲、「SHINKAICHI」に、いつもよりも少しだけ胸がキュッとなった。
ボーカル岩渕は、ギターを持つと自分の中の弱みを楽器に乗せて演奏しているのか、心做しかいつも彼にはないように見える「弱み」がそこはかとなく滲み出しているように見える。その時彼は、表現者 と言う言葉が良く似合う。

ベースタノ作曲「Sick Boy」は、今作 “情熱とユーモア”の2曲目でパノパナ節炸裂の明るいナンバー!と紹介したかったのに、このセットリストは予測不可能。順番が違うだけ、聴こえ方も全くもって違う。

ギター浪越作曲「月の裏側」。曲が始まったと同時に、どんな人間にも「裏側」がある、と話していた。
中でも印象的な“人生は爆発だ!”と言うフレーズは、何が起こるかわからない中で、この歌詞に出会ったことに意味合いを感じる。人生は選べるわけじゃない。岩渕は自身の媒体で、「芸術は爆発だ」と言う岡本太郎のかの有名な詞から感化されたものだと話している。

尖ったギターリフとドラムのテンポ。「シェルター」。
オーディエンスからは歓声が上がる。ファンの中でも人気がある曲だなあと、ライブで演奏される度に思う。

そしてアルバムの7曲目、「真夜中の虹」のイントロギターを「俺の地元の曲です」と一言混じえながらギターを掻き鳴らす姿は実に人間臭く、それでもって美しい。と言えるものだった。ギター浪越が鳴らす、CDには収録されていないアウトロには 哀愁 と言う言葉で表すにはとても勿体ない、古いシャッター街に差し込む陽のような美しさ、表現力があった。
そこで一気に引き込まれる。

個人的な話だが、ここまで超笑顔で見ていたはずの私は、何故だか涙が止まらなくて、ステージの上が霞んでよく見えなかった。

その流れで演奏された「Waterfront」、Waterfrontの主要イントロがサンプリングされている「Who am I???」には、人間の感情の奥底にある、普段誰もが“隠して生きている感情”を代弁してくれているように聴こえた。

余計なものには惑わされるな、「自分の人生を タイムラインを 生きろ」と言う強いメッセージを改めて訴えかけてきた、「distopia」。くだらないことに執着してばかりじゃ勿体ない、あんたは余計なもんを背負い込みすぎなんじゃない!と言うのをそのまま私達へ問う。「くだらnation」。

そんな、しんと静まり返った暗闇の中から聞こえる明るい声。

「俺たちの名前、わかりますか?」

大歓声の嵐の中、紡がれる自己紹介ソング・「PPT」。
そのまましれっと繋がれていった「リバティーリバティー」。

さっきまでのしっとりとした空気は何処へ?と聞きたくなるような盛り上がり。この時、完全に彼らの計算に乗らされていることに私達は気づかない。遠回しに、且つ不器用に、「弱さ」や「恥ずかしさ」 そんな感情をごちゃまぜにしてぶつけた後、散々ユーモアを撒き散らしながら“エンターテイメント”を上乗せし、盛り上げると言う。

人間が裏の部分を隠して表の部分で生きていると言う事実に、本当によく似ている。だからこそ分かっていたいのに、いつだって終わってから気づくし、つくづく彼らはインテリだなあと思わされるのである。

「ロールプレイング」のギターが鳴ると同時に、会場のボルテージが一気に上昇する。ドラムの安定したテンポが本当に気持ち良い。それに乗っかるギターとベースのメロディも心地がよい。「個々が立つ」とはこういうことなのだなと、強く思わされる。決して1人じゃ完成しない物語だ。

「ほっといてくれ!」

このフレーズが本当に、本当に強いと思う。
この一言で、何千、何万もの人々を振り向かせた彼らにはもう、怖いものはないのではないかと感じてしまう。

「フカンショウ」。周りを見渡せば、なにしたらそんな出るの!?って量の汗をかきながら、皆が皆、飛び跳ねている。
けどやはり、飛び跳ね方も、手を上げるタイミングも、身長も、性別も。当たり前だけどバラバラで、これが“人間”なんだと。ラストに向かうにつれてそんな事を考えていた。

「MOMO」のイントロが掻き鳴らされると同時に、隣にいた友人が走って前の方に突っ込んでいったのを見て、何故か少し泣きそうになった。少し背伸びするとステージ上がよく見える。そんな場所から見ていたけれど、そこから見える景色ですら、どうしようもなく美しかった。輝かしかった。
 

「俺ら今ここで、

“めちゃめちゃ生きてる!”」

そんな台詞を受け止めるのが私達で本当に良かった!と、勝手に誇らしくなる。
ラスト、「めちゃめちゃ生きてる」。

アルバムの肝になる大切な曲だ。
来るとわかっていても私もイントロの時点で、我慢の沸点に達して前に突っ込んでいた。

「遊園地よりも映画より ここで生きてる それが幸せ!」

と言うフレーズをとびきりの笑顔で歌う彼と、その横で音を鳴らす3人を見て、また涙が出そうになっていたところ。
終わりがけに
「涙も笑顔も俺のもんだから」
と言う最強の言葉をかけられてしまった。
心做しか、表情がニヤッとしてるように見えた。

「ありがとう、パノラマパナマタウンでした!」

その言葉を聞いた瞬間、あぁ終わってしまうのだなと言う純粋な気持ちが汗と一緒に流れていったのが分かった。
 

初めて巻き起こったアンコールでの“PPTコール”に顔をニヤつかせながら割と早めに出てきた4人は、
「パパラッチタイム」(その時間行われたことを、iPhoneでもデジカメでも、心の中だけでも。なにで収めてもOKな時間。)をはじめると宣言し、「世界最後になる歌は」を演奏し始めた。

「5年経って、やっと伝わることもある。
ずっと、この歌を歌い続けたいと思う。
十年後も、十五年後も、二十年後も。」

その言葉の通りだった。
ただ私達が願い続けるのは、ここよりももっと綺麗で、広大な景色を見せてくれること。「今日」を越す時間はない!と思える日に立ち会えているのだから、尚更。

カメラのシャッター音が鳴り響く、不思議で変な空間の中歌い上げられたこの曲に終わりはないと、明るい未来が見えた気がした。

「新曲やってもいいですか!
タノが作曲した曲なんですけど、ずっとマイペースという曲です。」

…ずっとマイペース?と思っていたのもつかの間。

「俺は子供の頃から肉がそんなに好きじゃなくて、野菜の方が好きなんですよ。中学時代、野球部の打ち上げで 焼肉か、バーベキューか、すき焼きかどれか選んでって言われて、男だからって理由だけで、どれか出しときゃいい と思われるのに、すげえ腹が立って。」と話し、観客の頭の中をハテナだらけにして始まった、初披露 新曲「ずっとマイペース」。

曲の内容は確かに、「野菜」だった。最早野菜の圧が強すぎて、終演後友人達と集合した瞬間の第一声が「野菜」だったくらいには。

終えた後には、この曲を0:00に配信スタートします、そして自主企画渦:渦vol.2をやります!との発表もされた。

「ずっとマイペース」について、まだ細かく話されていないのでちゃんと書けないのだが、さっすがパノラマパナマタウン!と言う気持ちになると思うので、是非聴いてみてほしい。この曲はパノパナにしか歌えない。
 

「今日、来てくれて本当にありがとうございました。
今日、この日。この場所。この時間を選んだ皆さん!

いい趣味してるね!」

そう言いながら、最後オーディエンス側に背を向けた時の頼もしい背中と言えば。
改めて
人間らしさは美しい、
人間の感情は美しい。
夢は醒めるから美しい。
そして、なんとも言葉に、文字にするのが難しい。

彼らは本当に、心の底から、カッコいいと思えるライブをしていた。

そしてなにより、その場所に居た人間にしか伝わらないものがそこにはある。
文字だけで伝わるならば、別にわざわざお金を払ってライブハウスに行かなくたって良いのだから。
それだけで満足するのは、本当に勿体なさすぎる。
正直、これだけ長文で書いても、伝わらないものの方が多い。少し悔しいけれど、絶対にそうだと断言出来る。

ライブハウスを出れば、倒れそうになりながら眠る人、居酒屋の前で胴上げされている人、駅の改札で恋人との別れを悲しむ人、コンビニから大量のカップ麺が入ったビニール袋を抱えて家に向かう人、隣で今日の事を話す友人、そして、汗に塗れた夢見心地な「私」がいる。

私たちは今日この瞬間も、「日常」という茨の道を歩きながら、「人間」と共存していく。
文字にすれば簡単だけれど、そう上手いことはいかないこの世の中こそが、「人間集会」なのだ。

そんな、一人一人の人生に、情熱とユーモアを分けて与えてくれるロックバンドが叫んだことを忘れたくないと強く思う。

このだだっ広い世界で、寝過ごしたり、道を間違えたりしながら “ 人間が、人間であるため ”の音を鳴らす。

パノラマパナマタウン、HUMAN PARTY TOUR 完結。

でも、
「人間集会」は、終わった瞬間が始まりかもね。

そんなことを、深く考えた夜だ。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい