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不確定な未来も楽しんでいきましょう

Czecho No Republic《ツアーオデッセイ~未知との遭遇2019~》札幌公演を観た

4月3日にリリースされたEP「Odyssey」のリリース記念ワンマンツアーの4本目である。北の歓楽街すすきので私たち観客は、そしてCzecho No Republicの面々は何と遭遇したのか。来月のツアーファイナルを見届けてから演出も含めてレポートすることも考えたが、興奮冷めないうちに荒削りな表現のままお伝えすることにした。というのも、このツアーでしか観られないCzechoを必要とする方が各地にいると確信しているし、久しぶりにこのバンドのライブに足を運んだ筆者にとって驚きずくめの公演だったからだ。

約1年半ぶりに目にするCzecho No Republicのワンマン公演。その間に彼らを構成するハードもソフトもずいぶん変わった。外的な状況の変化に対応せざるをえなかったという部分もあれば、メンバーが主体的にスタイルや技術を選びとって練り上げた部分もある。新譜「Odyssey」や関連インタビューから浮かび上がってきたのは、自分のコントロール下にない変化にもポジティブな態度で応対し、まさに偶然的な事象との遭遇を楽しんでいるメンバーの姿だった。その姿勢に「めっちゃいいやん!」と反射的に心でLikeをつけ、ここに今のCzecho No Republicの真髄があると直感した。

このバンドの作品はしばしば「多幸感」というタームを軸にして語られる。本公演もまさにピースフルで多幸感溢れるものだったが、過去にない要素がいくつも重なってより深化しているように感じた。たとえば今までもフロア全体を揺らしてきた曲がピッチや編成の工夫により、振れ幅を増して新たな姿で迫ってくる。新譜から披露された作品もまるで昔からの定番曲のように観客を踊らせる。制作の過程でこだわった部分を一旦手放したり演奏上の負担を増やしてでも、このツアーに来た人をユートピアに連れて行くというメンバーの気概が演奏にも演出にも満ちていた。

楽曲の着想についてメンバー自身の経験や実在する場所が引かれることもあるが、想像力を介したフィクション世界への拡張なくして豊かな彩りは出てこないだろう。近年の発表作を並べて聴いてみると、Czecho流のフィクション世界がいっそう豊かになっていることが分かる。「Czechoのイメージって?」という問いかけに、以前であれば「夏」「パレード」など限られたワードがファンの共通見解として挙がっただろうが、今はもっと多様な答えが返ってくるのではないだろうか。テーマ別にセクション分けされたセットリストからも、このバンドのイメージが広がっていく過程がバンドとしての着実な積み重ねの延長線上にあることがうかがえる。

楽曲や演出の新鮮さもさることながら、強烈に印象に残ったのはメンバーとの心理的距離の近さだ。毎年のように全国ツアーを敢行し、各地の大型フェスを盛り上げるほどのキャリアを築きながら、こんなにも観客一人ひとりとしっかり視線を合わせて向き合ってくれるバンドはなかなかお目にかかれない。それに呼応するかのように突き上げられた手の数がフロア後方まで増えていき、会場が一体となって今ここで対峙している喜びを分かちあっているようだった。「一体(感)」という語はライブの盛り上がりを表現するのにとても便利だ。けれど、私はこの言葉が持つハードルの高さから躊躇を覚える。どんなにプッシュされているアーティストのライブでもフロントエリアと後方エリアの温度差は残酷なまでにくっきり表れるし、素人のやっかみでしかないが、招待ゲストの興醒めするような行動が視界に飛び込んでくるのは珍しいことではない。でも本公演は違った。間違いなく会場が一体になっていた。その証左として、本ツアー初のダブルアンコールを所望するクラップはファーストアンコール以上の音量でいつまでも鳴り止まず、彼らのホームである東京から1000km以上離れた北の大地で、バンドが大切にしてきた曲を全員で歌って《ツアーオデッセイ~未知との遭遇2019~》前半戦は幕引きとなった。

終演後も名残惜しそうに会場に残るファンが多く見られた。許されるならば扉の向こうの狭いバーエリアからテーブルを引っ張ってきて皆で今宵の感想を語りたいと思うほど、温かい余韻がフロアを満たしていた。場所がすすきのじゃなかったらオススメのお店をセッティングしたんだけど。

広島を皮切りに札幌まで北上を続けてきた本ツアーも、残すところ後半戦の5公演のみとなった。しばらくCzechoを観ていないという方はもちろん、何かに押しつぶされそうになっている方にはぜひとも足を運んでほしい。

コントロールできない自然や他人の気まぐれの前で、私たちはとても無力だ。だからせめて想定外の出来事もポジティブに楽しみ、不確定な未来に期待したい。それでも眼前の問題に行き詰まったら、とりあえずペンディングしてフラミンゴが犇く名前のないビーチに、まだ足跡のない惑星に佇んでみよう。Czecho No Republicはその近道を示してくれるし、さらなる未知の世界へと連れ出してくれるはずだ。

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