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クレヨンでお日様を描きながら生きていく

BUMP OF CHICKEN「Aurora」が教えてくれたこと

いつもより遅く寝て、早く起きた寝不足の朝。ぼーっとしながら開店間際のスーパーに立ち寄った。有線放送が流れている。back number「HAPPY BIRTHDAY」が聞こえてきた。歌詞が気になって買い物よりも音楽を聞くことに集中し始めていた。そして次の曲がBUMP OF CHICKEN「Aurora」だった。バンプの「Aurora」はドラマ主題歌としてテレビで聞いていたし、MVが公開されて以来、スマホやパソコンで飽きるほど聞いていた。初めて聞いたわけではないのに、なぜか初めて聞いたような衝撃を受けた。きっと寝不足でちょっとした催眠状態だったからだと思う。

気付くと私はよりよく聞けるスピーカーの真下に足が赴いていた。「藤くんの歌声、こんなにやさしかったんだ…。」私はその時、藤くんの歌声がいつも以上にやわらかく、やさしく聞こえた気がした。最初はささやきのようにさえ聞こえた。サビに向かうにつれて力強さが増す。バンプと言えば、いつもなら、真っ先に歌詞の方に注目してしまうのに、この曲に限って私は、藤くんの歌声の方に心を奪われてしまった。

曲が終わるまでそのスピーカーの側から離れられなかった。一応商品を選ぶ素振りはしていたけれど、店員さんから見れば挙動不審な客だったかもしれない。バンプの後は米津玄師「Lemon」、あいみょん「マリーゴールド」と続き、ようやく歩き出した私はついつい聞き続けてしまったのだが、やはり藤くんの歌声が一番印象深かった。

それはまるでギリシア神話に登場するセイレーンのようだと思った。美しい歌声で海の上を航海中の人を惑わし、遭難や難破させたという神話がある。私はまさしく藤くんの歌声に心を惑わされている。恋に近い心境だと思う。Auroraを聞いてドキっとしたし、家でひとり聞いている時は書くつもりはなかったのに、こうしてAuroraについて書いてしまっているから。あの朝聞いた忘れられないやさしい歌声にときめいてしまっている。

「Aurora」アウローラはローマ神話では曙の女神の名前でもある。神話上、彼女の父と兄は太陽神となっている。鮮やかな黄色の衣を身にまとい、光と輝きという意味を持つ二頭の馬がひく戦車に乗って、花を撒きながら大空を走り、天空の門を開く美しい女神ということだ。知性の光、創造性の光が到来する時のシンボルであり、そこから転じて気象現象のオーロラのことを指すようになったらしい。

それを踏まえた上で、改めてMVを見てみると何とも意味深く感じるものがある。一人生き残った少女はまさにアウローラのようだと思った。

<お日様がない時は クレヨンで世界に創り出したでしょう>

それはまるで太陽神である親や兄弟たちと決別しても、自分の力でひとり生きていく少女の覚悟のように思える。彼女が<クレヨン>で<好きなように><好きな色で>描いたものこそ、オーロラに他ならないだろう。

私はバンプの「Aurora」を知るまで、オーロラに関しては漠然と、めったに見られない美しい自然現象としか思っていなかった。近年、オーロラ色の小物や雑貨が流行っていることもあり、インテリア好きの私は、オーロラ色のグッズをむやみに集めていた。部屋の中は太陽の光が入ると至る所で、オーロラ色に輝いている。貝型の紙皿、星型のモビール、カボチャの馬車、クリスマスツリー、ヘアアクセサリーなど、オーロラ色に光るものなら、何でも飾ってしまっており、まとまりのない混沌とした部屋になっている。そんな部屋に住んでいるものだから、オーロラはどちらかと言えば、夢かわいい、ファンシーなイメージで捉えてしまっていた。

しかし、バンプの「Aurora」を聞き、MVを見て、神話について調べるという過程を経て、オーロラを単純にただのふわふわした夢のような現象と捉えてはいけないと気付いた。歌声はやさしく、力強い。けれど、歌詞の言葉が<お日様><クレヨン>などと純粋無垢で、あどけない子どもが使うような言葉遣いでありながらも、実はひとりの少女が孤独になり、ひとりでたくましい大人の女性に成長しなければいけなくなったという過酷な現実がMVにも描き出されていたからだ。

<正義の味方>に救ってもらえなかった少女が、自分で涙を拾って、<闇の中にいて 勇気の眼差しで 次の足場を探して>、炎という涙と向き合う成長物語だった。夢見心地のかわいらしいイメージのオーロラなんて、1ミリも描かれておらず、過酷な戦いの世界において唯一残った勇気の光のシンボルとしてのオーロラが描かれていると思った。

これこそまさに真の意味でのオーロラだと思った。オーロラは<ああ、なぜ、どうして、と繰り返して>孤独な戦いを続けた末に、言葉では伝えられない解き放たれた思いから生まれた魔法のような神々しい光の集合体なのだと気付いた。

何か困難なことに直面した時は最終的には自分ひとりで解決するしかない。<正義の味方>に見つけてもらえないなら、自分で自分を救うしかないのだ。ひとりぼっちでも、大人にならなきゃいけない。未来へ向かって生きなきゃいけない。ひとりで未来に向かう勇気をくれるのは、大切な誰かと過ごした幸せな過去の記憶や思い出に他ならない。それさえあればきっとひとりきりでも、<クレヨン>を使って、自分の手で<お日様>を描いて、未来へ向かって生きていける。たとえ本物の<お日様>じゃないとしても、偽物でも自分で描いた<お日様>なら、きっと信じられる。本物じゃなくてもいいから、自分で創り出すことが大切なのだとこの曲が教えてくれた気がする。まやかしでもいいから、人生において希望の光は必要なんだと思う。言い換えれば、自分で<クレヨン>を操って描くことさえできれば、自分の手で未来を掴んで、生きていけるということだろう。いつだって藤くんの歌詞は途方に暮れていることが多い私に、やさしい「生き方」を教えてくれる。

バンプが「Aurora」という名曲を生み出してくれたおかげで、私はオーロラについて深く考察することができた。いつか本物のオーロラを見てみたいと思う。その旅をする時は、忘れることなくきっとバンプの「Aurora」を携えたい。

それよりまず先に、バンプのライブに行ってみたい。スーパーのスピーカーから聞こえる藤くんの歌声だけでときめいてしまった私なら、生で藤くんの歌声を聞く機会があれば、もっとドキドキしてしまうだろう。もっとリアルに藤くんの歌声とバンプのサウンドを体感してみたいと思った。

以前ここでバンプのファンクラブにも入っていないなどと記述してしまった身としては、チケットを確保することさえ難しいかもしれない。なぜならバンプのファンクラブが存在しないことを記述した後に知ってしまったから。やはり本物のバンプファンの人たちには決して敵わない、ちょっとしたファンのはしくれに過ぎないけれど、こんな私でも、一度はバンプのライブに行ってみたいと「Aurora」を聞いて思った。そしてバンプのライブを堪能し、いつかはオーロラを見るという夢も実現させたい。

<クレヨン>なんて長いこと触っていなかったけれど、まずは<クレヨン>を手に取って、<お日様>、オーロラ、バンプのライブを描いてみようかと思う。<好きなように><好きな色で>魔法に変えて、未来を信じて生きていこう。

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