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これまでとこれからを背負って生きる

生と死と、米津玄師の「Lemon」と「海の幽霊」

未だに「Lemon」が音楽ダウンロードの上位にランクインしている。MVの再生回数も3億回を超え、4億を間近にし…まさに驚異的ロングヒット。そして、新曲「海の幽霊」のYouTube再生回数が自身最速の1000万回を記録。音楽ダウンロードの配信も間近に控えている。
 

自分が、米津玄師の「Lemon」に出会ったのは、ある意味人生の分岐点を邁進し始めた頃のように思う。
 

〝夢ならばどれほどよかったでしょう〟
〝未だにあなたのことを夢にみる〟
8ヶ月程前に亡くなった父を思い出しては、生きていてくれたらと思い、いやでも…と自問自答を繰り返していた。
脳内出血を発症して約2年半が過ぎ、寝たきりに近い状態で、肺炎を起こしては入退院を繰り返す。
そんな矢先に腸閉塞を併発し、そのまま呆気なく逝ってしまった父。
生前、延命治療をしてまで生きていたくないと言っていたからこそ、父らしくて潔い死に様で、これ以上点滴や胃瘻に繋がって生きていたくはなかったのだろうと思ったし、そう思いたかった。
そして、いつも夢でみる父は、病床に臥せっている父ではなく、一生懸命に働き寡黙ないつもの父だった。
これが私の父なのだ。

〝自分が思うより 恋をしていたあなたに〟
〝あれから思うように 息ができない〟
〝あんなに側にいたのに まるで嘘みたい〟
父が他界した時、私はまだ心拍も確認できない程の妊娠初期だった。
夫に妊娠を報告した時、夫に喜びの様子はなく、生まれてくることを望んでくれなかった。
それは長女を溺愛していたからこそ、もうひとりは望んではおらず、金銭的不安もあるからと。
同居していた夫の家族も、同様の意見のようだった。理解はした、けど納得はできなかった。
それからは、話しかけても返答が返ってこないことが多くなり、投げても返ってこないキャッチボールをすることを避けた…避け続けた。
はっと思っては、何度か歩み寄ろうとしたつもりだったが、その度にぶつかり合い平行線をたどる。
そして次女は生まれた。
生まれてみると、少なからず愛情は感じている様子はあったが、もう手遅れだった。
夫は私を愛してくれていないのがわかった。わかったからこそ、最後までしがみつきたい自分の気持ちにも気づいた。
けれど、捨ててしまおうと決めた。自分の中で、妊娠中の孤独感は恐怖に変わり、同居家族は他人に変わってしまったのだ。
 

「Lemon」を聴いて父の死をうまく受け入れられたように思う。
死んだ人間は帰って来ないが、生者の時間は良くも悪くも刻一刻と進むのだ。美しい思い出を残したまま。
次女が父の生まれ変わりのようにも感じ、その小さな存在の温かさや偉大さが尊い。そして、力強い。

「Lemon」を聴いて離婚を負ではないものと考えれた。初めは捨ててしまおうと思い込んでいたが、形を変えただけなのだと思う。
捨ててしまえれば楽だろう。でも結局は無くならなず、形が変わり背負いやすい形に変わっただけなのかもしれない。
今では、子供2人を通し父親と母親、一個人として気楽な関係を築けている。あんなにギスギスしていたのが不思議である。
 

今の私をみたら、父はどう思うのだろうか。どんな表情をするだろう。
私は、何から話すのだろうか。何から聞いてほしいのだろう。
時々無性に、あの温かく恋しい匂いのする背中に会いたくなる。ちょうど、今日で三回忌だ。
まずは、一晩誰もいない部屋に、椅子を置いてみようかと思う。何か変化があるだろうか。そうあって欲しくもあり、ありえないとも思う。
とりあえずは、いつか、〝また会いましょう〟
では、また。

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