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初めてのライブ、踊った日のこと。

念願のヒトリエのライブが、追悼会に変わってから、それでも彼が生きていると感じた話。

 
初めてのライブのチケットが当選した。

あの日のことはまだ鮮明に思い出せる。
そのチケットを申し込んだのは、タワレコで予約していたヒトリエのシングル「ポラリス」が家に届いてからすぐだった。
それには『ヒトリエ TOUR 2019 “Coyote Howling”』の先行チケット抽選申し込みの券がCD封入特典として付いていて、開けてすぐに申し込みをした。
12月には抽選結果が出て、6/1の新木場STUDIO COASTでのファイナルへ参戦が確定した。初ライブがファイナルなんて、自分的には勇気ある一歩だったと思う。
 

ヒトリエを知ったのは、1度目の大学受験に失敗して、浪人生となったばかりの頃だった。2017年、春のことである。
諸事情により中学及び高校時代は、ネットに触れる機会は少なかった。閉鎖環境の中で、私たちはオタク趣味によりストレスを紛らわし、踊り狂い、外の情報を知る機会を減らされて尚、隙を見てはネットを漁り、また新曲の情報に狂喜乱舞した。
2012年、中学二年生、私たちのボカロ最盛期だ。
口を開けばやれカゲプロだ、やれハチさんの新曲だ、伝説入りした楽曲の数々、その中にローリンガール、そしてワールズエンド・ダンスホール。ボカロという新たな音楽の境地に(勿論当時はそんなこと考えもせず聴いていたわけだが)、私たちは胸を躍らせた。

そして、伝説入り楽曲から投稿者を遡り、見つけた曲が「テノヒラ」だった。
2019年6月4日、午後11時56分現在、ニコニコ動画での再生数は619,036回である。他の100万回再生を超えた楽曲に比べれば、若干マイナー路線であったこの曲に、私はどハマりしてしまったのである(マイナーとはいえども、殿堂入りしている時点で神である。ボカロ時代からのファンでアルバムCDを買って聴いているなら、この曲も知っているはずだ)。その頃から私は密かなwowakaファンであった。夏休みに帰宅した際は、アルバムCD「アンハッピーリフレイン」も購入した。
私がその存在を知った頃には、彼はボカロの投稿をぱったりとやめてしまっていた。そう、それはヒトリエの前身たる「ひとりアトリエ」が現在のヒトリエとなり、自主制作ミニアルバムを頒布していた頃であったのだ。

隔絶された環境から一転、浪人生として社会に放り出された私は、適当にネサフをしていた時(浪人生らしからぬ行為だが)、ふと思い立ってwowakaのWikipediaを検索した。そこで、私はヒトリエの存在を初めて知ったのだ。
YouTubeに上がっている、「センスレス・ワンダー」のPV。それから、「シャッタードール」、「5カウントハロー」、「るらるら」、他にも思わず踊り出してしまうような楽曲の数々。そして「フユノ」。最後に、「カラノワレモノ」。
カラノワレモノは、私に別の出会いをもたらした楽曲であるが、それはまた違う話になってしまうので割愛する。
行こうと考えたこともなかったライブ。母は昔から某J事務所のとあるアイドルのファンで何度も行っていたライブ。それに、初めて行ってみたいと思った。
しかし自分は浪人の身。母に許可を得られるわけもなく、私は大学生になったらヒトリエのライブに行くんだと、密かな目標を立てた。

隙間時間に抜け出し、タワレコに走って買った「ai/SOlate」。「IKI」のツアーライブは、ちょうど申し込みが2回目の受験真っ只中で間に合わず、新生活への移行へバタバタとし、次の機会を待つことにしていた。
 

そして、待ちに待った機会がやってきた。
 

初めてwowaka氏の歌う姿を、この目で見ることができると。このツアーライブが始まった時からはいつも以上にTwitterを追いかけていた。
岡山、京都公演が中止になった時は、心配になった。
そして、その知らせは唐突にやってきた。

私は生涯に一度も、彼の生の歌声を聴くことはできなかった。

「HOWLS」の中で最も好きになった曲は「November」であった。ヒトリエのアルバムは全てiPhoneに入れ、大学へ向かう道中も、どこかへ出かけた時も、ヒトリエ専用に作ったプレイリストをヘビロテしては、その歌詞と歌声、そして掻き鳴らされる楽器たちの音に耳を傾けていた。

その時はやってこなかった。

追悼会の知らせを知った時、よし、行こうと心に決めた。私はまだ現実を受け入れておらず、涙も流していなかった。

チケットを手に、新木場へと向かった。
初めてのライブ会場は、哀しみの空気に満ちていた。
献花台の前に立った時。眩しい笑顔の彼が、グレーの遺影の中で輝いていたこと。それを目にした瞬間、PVやCDの音源からあふれんばかりの生を唄う声が私の中で響いた。
彼は生きていた。確かにそこに息があったのだ。
その時初めて、私は彼の死に涙した。
目の前の机に白いカーネーションをそっと置いて、静かに手を合わせた。献花台横のスピーカーから流れていた曲は、「November」だった。
 

そして、何をするのか告知のないまま、追悼会の開場時間となった。戸惑いながらも初めてのライブハウスに入り、手すりにもたれ掛かって始まりの時を待った。

カーテンが開き、拍手で始まったのは、映像の投影。「ワンミーツハー」「目眩」、どちらも何度も聴いた曲で、でもライブの中の彼は、CDで整えられた声よりも何倍も息を吸って、声に吐き出していた。生きていた。
すすり泣き、興奮、戸惑いが入り交じった会場。目眩のラスト、彼が画面の中で「ありがとう!」と叫ぶと、私たちは拍手し、その声にまた泣いた。

そして、映像の投影が終わり。
シノダ、イガラシ、ゆーまおの3人がステージ上へと姿を現した。画面越しでしか見たことのなかった彼らが、今目の前にいるという興奮は、何物にも代え難かった。しかし、そこには私がひっそりと愛した彼はいなかった。

それでもライブは始まった。ボーカルを代わったシノダの声は、今にも泣き出しそうに震えていた。そんな彼らに合わせるように、私たちは腕を上げた。手を振った。クラップに命をかけた。
4人の音が3人に、私には3人が、リーダーの分まで命を削り、魂を鳴らし、叫んでいるように聴こえた。そのうちシノダが、時折wowakaと重なって見えた。彼の遺志は見事に3人に引き継がれていたのだ。それはいっそ美しいほどの、wowakaの音楽への愛であった。

そして、私の初めて体験する、煽りが始まった!
「お客様の中に、踊り足りない人はいらっしゃいませんかっ!!!!」
もちろん足りない! 私はまだ命を燃やしていなかった。燃やし足りていなかった! 何度も聴いて、その度に踊り出しそうになっていた曲が、今目の前で始まったのだ。初めて来たライブだなんて忘れ去って、その場の人々に合わせて踊り狂った。「1! 2! 3!」-『踊るマネキン、唄う阿呆』 より-
何度も聴いた曲が、もう覚えてしまった歌詞が自然と口からこぼれた。

そして、「ローリンガール」。
中学生の頃から聴き続けたあの曲を、全力で歌った。全力で走って転んで転がっていた少女だったあの頃から知っていた曲を、声が枯れるほど叫んだ。
「もう一回! もう一回!」
そう、もう一回。私たちに、もう一回を。

ヒトリエは解散しないと知ったから。

アンコール、ライブ映像の「リトルクライベイビー」。私が浪人していたとき、自分が生きる意味を見失いかけていたときに、出会った曲。「また会いましょう!」と画面の中で言う彼に、心の中で応えた。私がそちらに行くときに、また会いましょうと。そちらのライブも楽しみにしていますと。
 

ライブ映像が終わり、幕が閉じ、レーザーでwowakaのアカウント画像になっている、少女をかたどったマークが投影され、「HOWLS」の音源がBGMとして流れ出した。1曲目、「ポラリス 」。誰一人としてその場を動かないまま、まだライブは終わらないとばかりに腕を振り上げる人たち。手拍子をする人たち。そして、歌い始めた人たち。
最後には全員で、合唱。静かな、しかし確かな歌声。

ポラリスが終わり、出口へ誘導する係員の声が聞こえたとき、やっと私は我に返った。先ほどまでの興奮が嘘のように冷め、しかし疲れで痺れた腕と脚が、あれは現実だったのだと語っていた。そのまま呆然としたまま外に出て、東京湾の潮風を感じた。お台場のVENUSFORTにほど近い新木場の潮風は、枯れた喉には少し痛かった。
その痛みは、生きている証だった。
 
 

初めてのライブで、息を止めた彼が、しかしここに生きていることを知った。そして、その息遣いを感じながら踊り狂った。
全く同じようにとは決していかないだろう。
私の愛した音楽は、もう円盤の中でしか聴けない。
それでも、彼が愛した音楽を、もしかしたら本人以上に愛しているかもしれない3人が、これからの「ヒトリエ」の音楽を作っていくのだと思った。

私は、wowakaの音楽が好きだった。
でも、それ以上にヒトリエの音楽が好きだったのだ。それに気づき、私は未だ彼を亡くした悲しみの中にはあるが、同時にこれからのヒトリエを応援していきたいと決意した。
 

以上、これはただの自己満足の、彼が生きていることを再認識したいが為に書いた文章である。

最後に、帰宅後ニコ生でライブ映像をタイムシフト視聴しながら踊り狂ったら、机の角に足の小指をぶつけて悶絶したという、何とも締まらない話をして終わりにしようと思う。

wowakaさん、そしてヒトリエのみなさん、本当にありがとうございました。

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