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「QUIZMASTER」は誰か

NICOと僕の8年間

「どうして夢を見るの?」
今の自分にとってこれ程までに核心を突く、しかしそれ故にしっくりと心に馴染む詞が、果たして今まであっただろうか。

先日、NICO Touches the Wallsが約3年ぶりに発売したフルアルバム、そのタイトルは「QUIZMASTER」。
初めはNICOからリスナーである僕らへの問いかけとしての作品なのかと思っていたが、楽曲1つ1つを聞いてみて、「あ、これは違うな…」と思わずにはいられなかった。
あくまで個人的な感想として言えば、楽曲から見えてきたのは、自分がこれまでNICOに抱いてきた、あるいは求めてきたようなイメージや姿とはまるで違う像だった。それはカッコ良さと繊細さを併せ持つ王道のロックスターというより、いわば人間臭さの極みのようなものだった。将来への不安、理想と現実とのギャップ、言い表せない孤独、そういった誰しもが心の何処かに抱えながらも、なかなか目を向けられないモノたち。今回のアルバムが「人生の謎」をテーマにしているだけあって、そうした心に抱えた疑問や矛盾に、スポットライトを当てた曲たちが揃った作品となった。
ファンの中には、「こんなのNICOっぽくない」と感じる人ももしかしたらいるかもしれない。感じ方は人それぞれであるから、それは仕方の無い事だ。だが、少なくとも僕自身は、このアルバムに、そしてこの作品を生み出してくれたNICOに、心から感謝する程今回のアルバムが大好きになった。
確かに今までのイメージとは違う。でも好きなのだ。
こんな風に思えるようになったのは、恐らくNICOと出会い、NICOの曲たちと共に過ごしたこの8年の間に、自分自身が様々な変化を経験し、感じてきたものがあるからなのだと思う。

僕がNICOと出会ったのは14歳、中学2年の時だ。
YouTubeで初めて見た「妄想隊員A」のMVに、とてつもない衝撃を受けた事を今でも覚えている。曲のカッコ良さ、ボーカルの特徴的な歌声、映像の奇天烈さ、全てが当時の自分にはセンセーショナルだった。
それからというもの、アルバムを買っては聞き漁り、雑誌にインタビューが掲載されれば欠かさず読み、ライブにも沢山足を運んだ。
光村龍哉に憧れて自分でもギターを弾くようになり、バンド活動を始め、高校の部活や大学のサークルでも何度も何度もコピーしてきた。NICOは自分にとって青春時代の思い出そのものと言っても過言では無いくらい、無くてはならないものである。
そんな自分も気付けば大学4年となり、今も就活に追われる日々を送っている。個人的な話をすれば、長かったこれまでの学生生活の中でも様々な疑問や矛盾、葛藤なんかとぶつかってきたし、挫折や失望も経験したり、後悔も多くあったりと、それなりに紆余曲折な人生を送ってきた。中には未だに答えを出せていない悩みもあったりするが、それも時間が経てば何故あんなちっぽけな事で悩んでいたのだろうと、いつかは笑い話に出来るのかもしれない。むしろ新社会人の1人として、これから社会に出れば、正解の無い物事に取り組んでいくのが当たり前になるのだろう。
しかし、年金問題に終身雇用制度の限界、少子高齢化やブラック企業など、今その社会自体が答えの見つからない問題を溜め込み、その歪みが様々なところで見え隠れしているのも確かだ。自分自身、個人的な悩みや葛藤だって1つや2つでは無いというのに、これから社会人になる身として、もとい1人の人間としてこの先どうなっていくのか、どう生きていけば良いのか、正直不安だらけである。

そんなタイミングでのこのアルバムとの出会いは、僕には運命的な何かを感じずにはいられなかった。NICOが示した疑問が、自分の抱えている様々な葛藤や悩みとそのままシンクロして聞こえてきて仕方なかった。
何か明確な救いや答えを得られたわけでは無い、しかし少なくともこの表しようのない気持ちが、決して自分だけのモノでない事が分かっただけで、今の自分には十分なきっかけを掴めたと感じられるのだ。

これから先も、まだまだ謎は深まり続けていくだろう。新たな疑問や不安にも出会い続けるだろう。
しかし、それだけでは無い筈だ。NICOも今回のアルバムの中で様々な疑問を投げかけながら、そのそれぞれにはっきりとこうだという答えを示してはいない。それはNICO自身にも、リスナーである僕ら自身にも、きっとそれぞれの答えがあり、それを見つけられるのは誰でもない自分なのだ、ということを意味しているんじゃないだろうか。
そして彼ら自身、きっとその答えを出すことを諦めてはいないのだろう。1曲目に収録されている「18?」の「何度も夢を見るよ 信じてたいんだ 未だわかっちゃいない事だらけだったって」という歌詞にはそんな想いが込もっているように僕には思える。
ならば今は、僕自身にもいつか、答えを出せる日が来ると信じて、NICOと共にこの先も謎の彼方へ向けて進み続けていくだけだ。そして、NICOの辿り着いた答えと、僕自身が辿り着いた答えとで丸つけを出来る日が来るのを、待ち続けるとしよう。

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