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男の子になりたかった。

セーラー服とミッシェル・ガン・エレファント

「ミッドナイト・クラクション・ベイビー」「デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ」「リボルバー・ジャンキーズ」
当時、私は高校生。ミッシェルの曲の中では、進学校の女子クラスに通っていた私の生活とは一切関係のなさそうな言葉たちが暴れまわっていた。一方こちらは、ダサめのセーラー服に白い三つ折りソックス。髪を染めることはおろか、通学路でコンビニに入ることさえ禁止されているような真面目な女子高生だ。

それでも私はミッシェルの曲を聴くと、自分の心の中のどこかがビリビリと共鳴して刺激されるのを感じた。笑われるかもしれないけれど、あの時は、それが紛れもなく本当だった。
駅から家まで自転車をこぐ間、入学祝いに買ってもらったMDウォークマンで大音量のミッシェルを聴く。電車の中、部活の試合前に、ミッシェルを聴く。英単語帳を覚えながら、ミッシェルを聴く。

MTVで、カッコ良さの塊のようなミッシェルの佇まいと音楽に出会い、一瞬で好きになった。地元の寂れたレンタルCDショップで借りたのは、「SABRINA HEAVEN」だった。ちょうどミッシェルの解散が発表された頃だったように思う。1曲目「ブラック・ラブ・ホール」ってタイトルの意味は全くわからない。

数秒の無音の後、ギター・・・そしてチバユウスケのボーカルが入り、下腹に響くようなベースとドラムがなだれ込んでくる。カッコいい。
「こ、これがバンドか!!!」
とりあえずボーカルとギターがとにかくイケてると思っていた当時の私には衝撃的だった。
「ボーカルとギターだけじゃなくて、ベースもドラムもメチャクチャカッコイイではないか!!!バンドって最高だ!」
教えてくれたのはミッシェルだった。私は叫び出したいほど興奮したけれど、それを共有できる友達は1人もいなかった。

ライブハウスに行くなんて想像もできなかった私は、伝説のミュージックステーション出演時には、テレビに釘付けになっていた。生放送でミッシェルが観られるなんて夢のようだった。そして、もうあまりにも有名なエピソードだけれど、その日ドタキャンした外タレの穴うめにミッシェルが急遽2曲目を演奏した。震えた。
でも、またしてもそれを共有できる友達は1人もいなかった。
「t.A.T.u観れなくて残念だった〜。代わりに、なんかうるさい人達が演奏してたね。」
これがクラスメートの感想だ。

趣味の合う友達がいなくても、音楽雑誌やスペースシャワーTVやMTVのおかげで、好きなロックバンドは増えていった。
けれど、好きになればなるほど、ロックバンドは男の子のものだという気がして仕方がなかった。
電車で見かける、楽器を背負った同い年くらいの男の子達がうらやましかった。もちろんたまには女の子もいた。でもそれは、当時でいえばジュディマリのYUKIちゃんとか、椎名林檎とか、そういう人達に憧れているような子で。まあ、つまり、そこそこ可愛くてモテて、思春期ど真ん中に人前で歌えるくらいの容姿とメンタルを持ち合わせているということで(偏見)。ともかく、そういう女の子は私とは全く違って見えた。
私はむしろ、「ミッシェルのあの曲ヤベーよな!」とか言い合って、学校の部室でコピーバンドをやるような男の子になりたかった。自分への苛立ちとか、大人や社会への反抗心とか、あり余るエネルギーをそうやって誰かと共有して発散したかったんだと思う。その象徴がミッシェル・ガン・エレファントというバンドだった。
何も行動に移せなかった高校生の私は、悶々とした気持ちを抱えながら郊外の住宅地を自転車で走り抜けるしかなかった。

その後、私はたくさんのバンドを好きになったし、NUMBER GIRLの田渕ひさ子というスーパーギターヒーローに出会い、ついに自分でもギターを始めた。大学のバンドサークルで気の合う仲間達とコピーバンドをやるのは最高に楽しかった(ギターは全然上手くならなかったけど)。

それでも、ミッシェルだけは特別にキラめく私の青春のスターで、楽器を背負った制服姿の男の子達は、永遠に私のやり残した青春なのだ。

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