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拝啓 wowakaさんへ

終りのない謎々の答えを探すひとりのリスナーからヒトリエへの手紙

拝啓

wowakaさんヘ

お元気ですか? あれから2ヶ月以上が経ちますが、そちらの世界はどうですか?
2019年5月1日。あなたが「きれいだー。」そうツイートしたこの「令和」という時代を、あなたとともに迎えられなかったことがわたしはとても悲しかったです。
あなたが「きれいだ」と、そう言ったこの令和の時代は、高齢者ドライバーが起こした交通事故のニュースや、弱い子どもたちを狙った事件のニュース、そして児童虐待のニュースなどが絶えずメディアから垂れ流されていて、お世辞にもきれいとは言えません。

わたしがあなたの訃報にふれたのは、2019年4月8日の午前11時を少し過ぎた時でした。
「…嘘だろ」そうとしか思えませんでした。
そして、わたしにヒトリエを教えてくれた人のことを思いました。
今、こうして思い出して書いているだけでも体の芯が冷えていくのがわかります。

その時、FM802なら何かヒトリエの曲を流してくれるだろうと思い、すがるようにradikoを立ち上げました。
そして、番組エンディングでにwowakaさんの突然の訃報に驚きを隠せないといった様子の声だったDJの加藤真樹子さんの曲紹介のあとに流れたのは『センスレス・ワンダー』でした。
わたしはその時初めて『センスレス・ワンダー』がかつてFM802のへヴィーローテーションだったことを知りました。
まるで空間を切り裂くように鋭いギターのイントロが印象的でした。

そして、この日はたまたま月曜日で、毎週いつも聞いているFM802の『REDNIQS』という番組の放送日でもありました。
このREDNIQSという番組は、3月4日にヒトリエがメンバー全員でゲスト出演したばかりでした。あのときは1ヶ月後にまさかこんなことになるとは夢にも思っていませんでした。
REDNIQSで何かヒトリエの曲を流して欲しいと、そう思いリクエストしました。だけど何の曲をリクエストするかがどうしても思いつかず、選曲はDJの浅井博章さんとスタッフさんたちにおまかせしました。

その日のREDNIQSの放送で、浅井さんと、そしておそらくは番組スタッフさんたちが選曲してくださったのは『青』でした。
だけど正直わたしはアッパーチューンを期待していたので、全編に渡って物悲しい雰囲気のこの曲の選曲は意外でした。そう、自分でリクエストしておきながら、まるでこの曲の歌詞みたいに《心なんて自分勝手》だったんです。
だけどそんな思いは間髪を容れず始まった次の曲のイントロで吹き飛ばされました。
そう、この曲も『センスレス・ワンダー』とはまた違ったアピールで、イントロの空間を切り開くようなギターの音色が印象的な曲です。
 

《生きてく強さを重ね合わせ 愛に生きる》
《セピアの色に染まれ 悲しむ事の全て》
 ───GLAY『生きてく強さ』
 

それは、浅井さんや番組スタッフさんたちからのこれ以上ないくらい強烈なメッセージでした。
どんなに悲しいことや辛いことがあっても、それでも生きていかなければならない。
1995年にリリースされた『生きてく強さ』と、今年リリースされた『青』。リリースされた年が20年以上も違う一見接点のなさそうなこの2曲から、「生きて」と、そんな強いメッセージを受け取ったのは、きっと音楽だからこそ伝わったのだと思います。そして音楽は時を越えるんだと思いました。
本当なら多くの人にこの日の放送を聞いてもらいたいくらいです。しかしこの日の放送はradikoでのタイムフリー配信はすでに終了してしまいました。
それでも。できたらヒトリエの『青』と、GLAYの『生きてく強さ』。この2曲を立て続けに聴いてみて欲しい。そう強く願っています。
 

次にわたしがwowakaさんの作った音楽にふれた機会は、2019年4月20日にニコ生で放送された『【追悼wowakaさん】投稿楽曲・ヒトリエ ミュージックビデオ一挙放送』でした。
前半はwowakaさんの作ったボカロ曲、後半はヒトリエのミュージックビデオの一挙放送でした。
ここでわたしにとってふたつの出会いがありました。
実はそれまでwowakaさんの創ったボカロ曲をほとんど聴いたことがありませんでした。反感を買うことを承知で書きますが、わたしはボーカロイドに偏見を持っていました。なのでずっと自分とは縁遠いものだと思っていたんです。
そんなわたしが、この日初めて聴いたwowakaさんのボカロ曲で一番耳に残ったのは『ローリンガール』でした。

《もう一回、もう一回。 / 「私は今日も転がります。」と、 / 少女は言う 少女は言う / 言葉に意味を奏でながら!》

《「もう良いかい?もう良いよ。そろそろ君も疲れたろう、ね。」/ 息を止めるの、今。》

これらの歌詞はわたしの胸に突き刺さりました。
wowakaさん、あなたがいなくなるなんてそんなの考えもしなかった。まるで転がるような運命に飲み込まれていくしかない。
お願いだから「息を止める」なんて言わないでと、聴くたびに胸が締めつけられる思いにかられるのです。

そしてもうひとつの出会いは『カラノワレモノ』に、[ReREC]バージョンとは違うもうひとつのバージョンのMVがあることをこの日初めて知ったことでした。
[ReREC]バージョンのMVも好きですが、こちらのバージョンも一目見て好きになりました。一目惚れです。
このMVをまた何度も繰り返し見たい。そう思ったわたしは『センスレス・ワンダー』の初回盤をタワーレコードで取り寄せてもらい購入しました。
わたしがこのMVを見て感じたことは「優しさ」です。

《どうやってそうなった? 君は僕に何を求める? / 弱いな、って逃げ込んだ場所 此所はどうしようもなく、今日だ》
MVに登場する女の子とwowakaさんがここで互いを求めるかのように手を伸ばし合い、

《失くしたばかりの手、を伸ばすかの様に》
ここでwowakaさんと女の子が手をつなぐシーンがもうたまらなく好きなんです!

『ルームシック・ガールズエスケープ』に収録されている曲全部がMV化された経緯をわたしは知りません。
なのでたとえば『アレとコレと、女の子』のMVではなぜwowakaさんがシノダさんに突き飛ばされているのか、『るらるら』ではなぜメンバーが踊っているのか、『サブリミナル・ワンステップ』ではなぜ旅館でメンバーが枕投げをしているのか、そういったことはわかりません。
でもひとつひとつのMVがつながっていて、まるでひとつの短編映画みたいなところが好きです。

また、わたしの中にこんな疑問がわきました。
「どうしてヒトリエには“ガール”“女の子”など、タイトルや歌詞に“女の子”をモチーフにした曲が多いんだろう」
けれどそれを考えたところでこの疑問に答えてくれるあなたはもういません。それでもわたしはその答えを探し続けてしまうのでしょう。まるで『センスレス・ワンダー』にある《終りのない謎々》という歌詞みたいに。
 

そして2019年4月26日、こんな報せが届きました。
〈6月1日に新木場スタジオコーストにて『wowaka追悼 於 新木場STUDIO COAST』を実施致します。〉

本当ならその日は新木場STUDIO COASTで『TOUR 2019 “Coyote Howling”』のツアーファイナルが行われるはずだった場所でした。
そしてその様子がニコ生で生中継されることもあとから発表されました。
ニコ生で生中継されることはすごくありがたかったです。
でも、もし献花台にファンの人たちが次々と献花する様子を延々と見ているのだったら辛いなあと、そう考えた意気地なしのわたしはそれを最初から見る気にはなれなかったんです。

迎えた6月1日当日。
どうしても気持ちが落ちつかず、午前中は『センスレス・ワンダー』を延々と聴いていました。
そして、そろそろ終わった頃かなと思い、Twitterを開いたわたしは目を丸くしました。

「シノダさんが歌った」

驚いたわたしはすぐニコ生のタイムシフトを見ました。だってシノダさんはギターだよ!? ギター弾きながらヒトリエの曲を歌える人はwowakaさんしかいないと、そう思っていたからです。
けれど映像を見てびっくりしました。
機材が置かれたステージの奥に設置されたスクリーンに映し出されたwowakaさんが歌う姿。それを演奏で支える3人。SEが流れ、その3人がステージに現れる。シノダさんはwowakaさんのギターを掲げて。そして3人が定位置につく。シノダさんがおもむろにギターを奏で、時々声を詰まらせながら話す。
「ヒトリエです。よろしくどうぞ」
そして、これを予想していた人はきっと少ないと思います。

──本当だ、シノダさんが歌ってる!

これは怒られる覚悟で書きますが、『ポラリス』でシノダさんの歌声を聴いた瞬間「あ、ヒトリエは大丈夫だ」と直感的に思いました。この先も続いてくって。
ギター弾きながらこれだけ歌えるようになるまで短期間でどれほど練習したんだろう。そう思いました。
シノダさんの声すごく好きです。もちろんwowakaさんの歌声やwowakaさんの作った曲が好きなこと大前提ですけど、シノダさんの歌声も好きです。
イントロで大歓声が起こった『センスレス・ワンダー』はライブでもイントロで鋭いギターの音が空間を切り裂いていました。
『SLEEPWALK』では何と! ハンドマイクで歌うシノダさん。これには驚きました。
「ほんと忙しい曲ばかり作りやがって」とおそらくわざと毒づいてみせるシノダさん。
特に好きな『カラノワレモノ』がヒトリエが初めて作った曲だとシノダさんの言葉で初めて知り、『トーキーダンス』の最後のシャウトに鳥肌が立ち、『アンノウン・マザーグース』で涙腺が緩みました。
そして、聴くのに覚悟がいった『青』。しかしここで、ある歌詞にハッとしました。

《それでも僕らが終わることはないだろう》

これは3人からの、いや4人からの「ヒトリエが終わることはない」というメッセージではないかと、そう聞こえました。

シノダさんは何回か「天国のwowakaにも届いてると思う」と言っていましたが、きっとwowakaさんもあの場所にいたんだと思います。見えないけれど。
きっとシノダさん、イガラシさん、ゆーまおさんの頑張りを見ていたwowakaさんが手を貸してくれたんだと、そう思います。
ラストの方で、座り込んでも、倒れ込んでも、それでも全力でベースを弾いていたイガラシさんと、力強いドラムのゆーまおさんも素敵でした。

この日ラストの曲に選ばれた『ローリンガール』は、オーディエンスの割れるような「もう一回! もう一回!」という声がwowakaさんをここに呼び戻したい、そんな強い願いのように聞こえました。けれどそれは叶わない。きっとみんな頭ではわかってる。けれど願わずにはいられない。そんなことを思いました。

シノダさんもこの日言っていましたが、ヒトリエが今後どうなるかはわからない。
それは悲しいかな、ファンにはどうすることもできないです。
3人が音楽活動を再開するにはきっと時間がかかると思います。いろいろな意見があるでしょうし、決めるのはゆっくりでいいと思います。でもこの日シノダさんが言っていた通り解散はしない、活動ペースはゆっくりになってもいいから、ヒトリエを続けてくれたら、わたしはそれで十分うれしいです。

そういえば『カラノワレモノ』でwowakaさんはこうも歌っていましたね。

《咲きたいな、笑いたいな / 此所は、何処へも繋がる、そうだ。》

ヒトリエの音楽が生き続けるかぎり、wowakaさんも、シノダさんもイガラシさんもゆーまおさんも、ヒトリエの音楽が好きなわたしたちも、この空の下、何処へも繋がっている。
そうですよね? wowakaさん。

wowakaさん、わたしはあの日から《終りのない謎々》の答えを探し続けています。
そしてそれはきっと、わたしの性格上ずっと探し続けていくことになると思います。

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