526 件掲載中 月間賞発表 毎月10日

2017年6月12日

成佳 (23歳)
278
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

過去を肯定する、誰かのための希望の歌

All Our Yesterdaysツアーで見えたこと

6月11日、back numberのベストアルバム『アンコール』を引っさげたAll Our Yesterdaysツアーが終了した。back number史上最大動員を記録した今ツアーは幅広い年齢層の人たちが訪れていた印象だった。
若いカップル、親子連れ、中高生の友達同士、おじさまおばさまの夫婦…。『アンコール』を聴いてback numberを知りライブに足を運んでくれたのだと思う。私は横浜と静岡公演に参加し、会場の照明が落ちるのを今か今かと待っていた。一気に場内が暗くなったとともに客席から歓声があがり、オープニングの映像が流れた。
 

道を横断していく人たち、揺れるスカート、空に流れるシャボン玉がピアノのSEに合わせてゆっくり逆再生されていく。その映像を眺めて私はふと自分の過去に戻っていくような感覚を覚えた。きっと誰もが過ごしてきた「全ての昨日」の中に忘れられない過去があるんじゃないのか?意図せず、その昨日たちと久々に私は向き合うことになった。
 

私の忘れられない過去といえば、高校三年生の夏。初めて付き合った彼氏に振られた。振られた理由は今思えばそれなりに理不尽だったけれど、別れたくなかったあまり私は無意識で彼にとって一番ひどい言葉を言ってしまった。その傷ついた顔が今でも忘れられなくて、別れてからも自分が許せなくてずっと責めていた。その感情は最終的にねじ曲がって元カレに振られたことへの怒りに変わった。
そんな煮え切らない思いを抱えたまま一浪していた2012年、たまたま見ていたドラマのエンディングが流れた。エンドロールに書かれていたのは『青い春/back number』。
初めて聞いた時に直感で「あ、良い」と思ったのを鮮明に覚えている。それからというもの、YouTubeで他の楽曲を調べていくうちにさらにのめり込むようになり『逃した魚』から『blues』まで大人買いをした。back numberと出逢ってもう五年になる。出会った当初、彼らを知っている人はごく少数だったけれど、今は逆にback numberを知らない人を探す方が難しいんじゃないかと思う。

back numberが好きならば、その歌詞の世界観に共感する人がほとんどだろう。back numberの楽曲の大半を占める失恋の歌。あの曲たちは失恋で出来た心の傷に対しては荒療治に近い。パックリ割れた傷口に消毒液が垂らされるあの感じ。聴いている当の本人は相当悶え苦しむに違いない。かく言う私も通ってきた道である。
「本当は自分もこう思っていた!!」「そうだよ!!よくぞ言ってくれた!!」とback numberに出会った当時の私は失恋ソングにあまりにも共感し過ぎて、未練を隠さない赤裸々な歌詞にのたうち回っていた。私はこの「消毒液」で共感を得られたせいか傷口が塞がり、そのあとの立ち直りは早かったのである。負の気持ちをきちんと肯定してくれるところがback numberらしさだと私は思っている。この「肯定」は恋愛の歌だけに限らない。
 

ツアー中盤。ベースの小島がソロを弾き、始まったのは煌びやかなイントロが爽やかで美しい『SISTER』。この曲には特別な思い入れがある。大学の編入試験前にちょうどこの曲がリリースされて勉強のお供に聴いていた。
《目指した雲はずっと高くて/夢見た島は遥か遠い場所だと知ってて/分かってて踏み出してきたんだから/負けないで/君が瞬きで隠した痛みをその想いを/ああ/僕は知っているから》

高校時代からの夢のために、自分のやりたい勉強のためにあえて編入学という選択肢を選んだ私にとって『SISTER』のこの歌詞は追い風になってくれた。私の中に眠る夢への情熱を認めてくれて、突き進む力になった。とても感謝をしている。
 

back numberの想いが凝縮されていると感じる、私の大好きな歌がある。今ツアーでは披露されなかったが、シングル『わたがし』のカップリングで、アルバム『blues』にも収録されている『平日のブルース』の一節を抜粋する。

《僕が歌うこの歌が/遠くの誰かの気持ちを/動かしてまたその人が
誰かの為になってさ/巡り巡って誰かが君を幸せにしたら
あの日僕が君にした約束も/ほら嘘じゃなかったでしょ/って事にしてもらえないかな?
そして今度は/目の前の人を幸せにしよう/それだけでどんな過去も/救えるんだ》

歌詞の中で清水は「back numberの歌が誰かを動かす力でありたい」と歌っている。昨日には戻ることはできないし、布団に潜り込んで目を瞑れば私たちには自ずと明日がやってくる。だけど、進みたいのに後ろを振り向いてしまう時がある。後悔していたり、忘れられない過去を引きずっていたり。
そんな時はback numberの曲たちがトンと背中を押してくれる。歌詞が女々しいと評されているけれど、この世界観に人間臭さが詰まっていて上手くいかない恋愛や人生が映っている。その中にふと自分を見つけて「うん、そう。そうなんだよな」と共感する。自分を肯定してもらった気がして救われていく。私もそうだ。ツアーに来ていたあのカップルも中高生たちもきっと同じように救われてきたんだろう。
 

back numberはバンド名の由来になった「型遅れ」の意味をもう成してはいない。聴いている人を誰も置いていくことなく前へ向かわせてくれる希望を歌うバンドだ。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい