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今も忘れられないあの景色、あの日確かに私はそこにいたんだ

UVERworld との約束

「すごかったね」
「うん。すごかった」
これがライブ終演後、まだ高揚する気持ちを抑えつつ、会場を出た私たち夫婦がやっと口を開き、交わした最初の会話だった。
2018年12月30日「UVERworld ARENA TOUR 2018」福岡公演初日。会場はマリンメッセ福岡。年末差し迫り、今年もあと少しで終わろうとしているこの時期に、毎年行われるUVERworld のアリーナツアーはメンバーとファンとの間の大切な「約束」である。でも、このライブを見終わる前、つまり、数時間前までの私は、ライブが楽しみである以上に、まるで駄々を捏ねる子どものようなぐずぐずした感情と共に会場入りしていた。その理由の一つは、昨年のこのツアーは残念ながらチケットが手に入らず、泣く泣く参戦を諦めた経緯があるからだ。年末の「約束」を果たすべく、予定を空けていたのに、チケットが落選した時の落胆の気持ちはライブに足を運ぶ音楽ファンならご察しいただけるだろう。そして、1年間待ち続けてやっと手にした今年のチケットを見た時、私は思わずため息をついてしまった。「一番後ろかぁ。遠いなぁ。見えるかな」チケットの場所についての見解は人それぞれだと思う。「チケット取れただけで、その会場に居るだけで幸せ」と素直に喜ぶ人と、「出来るだけ前の方がいいいな。近くで見たいし」というタイプの人。念願叶って今年は運よくチケットが取れたのにも関わらず、「場所が遠い!」と落胆した私は自分がいかに欲深く、身勝手な感情の持ち主であるかを思い知らされたのである。そんなぐちゃぐちゃした気持ちを抱えながら、参戦したこの日ライブで、私は生涯忘れることが出来ない景色を見た。彼らのいつものライブ同様、この日も開始時間ピッタリに幕を開けた。その直後から、躊躇なく、遠慮なくどんどん飛ばしていく彼らの姿を見た時、さっきまでごちゃごちゃと考えていた厄介な感情はどこへやら。すぐにどこかへ消え去り、私は「今、この瞬間、ここに居る幸せ」をかみ締めていた。やっぱり、私は身勝手な人間なのだろう。そんな身勝手な私をもあっさり受け止め、惹き付ける彼らのライブパフォーマンスはプロそのものである。
ライブ終盤、その時はやってきた。会場中が熱気に溢れ、一体感を超える一体感。何が起きているのだろうか。皆、どうしたんだろう。アリーナでこれだけ大勢の人たちの気持ちを同時に惹き付け、まとめたこの瞬間の景色は壮絶、圧巻、いや、言葉に出来ない。
それでも、私はすぐに自分の中に芽生えた感情を敏感に感じとり、こう思った「私は今、生涯忘れることのない、いや、忘れたくない景色を見た」と。
「後ろ」だからこそ、見える景色があることをこの日、この瞬間、私は知った。もっと正確に言えば「思い知らされた」とも言える。
私がよく行くライブはそのほとんどがキャパの小さめなライブハウスだ。会場が狭い分、窮屈感は否めないが、それ以上にアーティストとの距離が物理的に近い喜びがある。しかし「UVERworld」彼らが作り出す、生み出す世界は、物理的距離、そんなものは関係ないし、とらわれることはない。精神的距離はこの年、参戦したどのライブよりも近く、それはまるで、彼らがすぐ隣で演奏し、TAKUYA∞が目の前で語りかけるように、彼らが生み出した言葉(歌詞)の数々を投げかけるように歌っている、そんな不思議な感覚だった。彼らには会場の大きさやキャパ数は関係ないのかもしれない。いや、それらを厭わない力が、魅力が彼らにはあるのだとこの日、確信した。もしも、ライブ前の自分に会えるならこう言うだろう。
「今日はいい場所だよ。良かったね!」と。
家までの帰り道、私たち夫婦は、互いにどちらともなくこう言った。
「来年も楽しみだね」
「うん。チケット当たります様に!」
2019年年末、私たちは「約束」のこの日、この場所に居るだろうか。分からない。
分からないけど、そこに居る自分の姿を思い浮かべ、そうあることを強く願う。
年末の忙しい時期にライブに行けるのは、娘の面倒を嫌な顔せず引受けてくれる両親と、それを理解してくれる娘のお陰である。そうだ、帰ったらすぐにこちらにも来年末の「約束」をしておかねば。そんなことを思いつつ、ライブの余韻をまだまだ引きずりつつ、足早に家路に向かった。

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