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言葉より近く こころの遠くまで届く歌

ビーチ・ボーイズの「フレンズ」が呼んだ夜明けの音楽

ビーチ・ボーイズの音楽と言えば、
サーフィンの音楽? 
それともあの素晴らしい名作、ポップミュージックの金字塔「ペット・サウンズ」?
ハーモニーポップ?
そしてブライアン・ウィルソンが40年近く費やして遂に叶えた夢の「スマイル」?

もっとも話題になるのはやはり1966年の「ペット・サウンズ」だと思う。
ペット・サウンズはポップミュージックの金字塔、二重の塔、三重の塔、いやいや、もっともっと、五重の塔かもしれない。誰にも到達出来ない高み。憧れても、越えてやると意気込んでみても、見上げるばかりでまだまだ届かない。

ビーチ・ボーイズの音楽の歴史を見ていっても、実は「ペット・サウンズ」と同じような音像で出来た音楽は断片的なものでしかない。
ブライアン・ウィルソンのドラマを描いた映画「ラブ&マーシー」においても、音楽の中核として取り上げられているのはペット・サウンズの辺りだった。

その後の音楽はいつもそんなには話題にならない。
未完成の「スマイル」から以後、1970年代にかけてのブライアン・ウィルソンの不在感が語られているけれど、実際にはビーチ・ボーイズのメンバーとして音楽には関わり続けていると思う。

その代わり、ビーチ・ボーイズを前進させていったカール・ウィルソンやデニス・ウィルソン、マイク・ラブ、ブルース・ジョンストンの活躍はめざましい。

ビーチ・ボーイズを語るには、
自分にはとても役不足で心許ない。もうしわけない気持ち、ビーチ・ボーイズの事ははっきり言って、知らない。駄目な僕…ごめんなさい…

ぼくが聴いたのは「ペット・サウンズ」と「フレンズ」と「サンフラワー」、「サーフズ・アップ」くらいだ。
しかもそんなに理解できてもいない。

けれど、そのなかでも、繰り返し聴いていて、好きなのは1968年のアルバム「FRIENDS」だった。

ペット・サウンズはまぎれもない決定盤だ。
一番多く聴いたのはペット・サウンズ。
いま大好きなのもペット・サウンズ。
いままでに人に勧めてきたのもペット・サウンズ。
これからも勧めたいペット・サウンズ。

しかし忘れられないのが「フレンズ」だ。
なんだか忘れられない友達みたいだけれど…

1990年代、音楽雑誌で、ビーチ・ボーイズとブライアン・ウィルソンについての特集記事やその影響下にあるポップミュージックの話題を多く見かけたのをよく覚えている。
ぼくが興味を持ったのもその頃だった。

ペット・サウンズの良さも解らない自分、ビートルズ大好きの自分は、ただサージェント・ペパーズに匹敵する傑作と言われているペット・サウンズをひととおり聴いて、気に入ったGod Only Knowsだけをひたすら繰り返し聴いただけだった。

ビーチ・ボーイズとブライアン・ウィルソンに興味を持ってペット・サウンズの次を探っていって、寄り道して道草をしてふらっと立ち寄ったような感じで出逢ったのが「フレンズ」だった。
なんだか偶然再会した友達みたいだけれど…

「フレンズ」のCDを買ってCDプレイヤーにセットしてみると、プレイヤーの表示画面に出たアルバム総時間が26分くらいなのにはちょっと、どうゆうことやと思った。
音楽を聞いてみて分かった。
1曲1曲の時間がすごく短いんだ。
2分くらいしかない。3分以上の曲が2つしかない。

聴き始めた1曲目、Meant For You、
すぐに好きだと思った。
ブライアンが歌っているらしいと分かった。
なんだ、ぜんぜん、ブライアン、不調じゃないやん。
けれど、この歌はすぐに終わって消えてしまう。
すごくもったいない気分。
なんとなく短編集のこのアルバム、やっぱりどこか未完成の感じはした。
全体を包む空間はゆるやかで、おだやかで、気持ちはふんわり。
「FRIENDS」を紹介する記事を見かければ、「ピースフル」と表現されていたりする。その通りかもしれない。すこしだけサイケな感じはある。

でも、「ペット・サウンズ」を引き合いに出せば、かならず分が悪い。
1曲目は気に入ったものの、がっかりしたと言うのは言い過ぎでも、物足りないのもたしかだった。
「フレンズ」にはがっかりした、と言うと、なんだか友達に、君にはがっかりさせられたよ、と言ってるみたいだけれど…

それでもこの雰囲気と空間はずっと覚えていて気になって忘れなかった。

というより、まだ「ペット・サウンズ」の偉大さに気づいていない駄目な僕は、その素晴らしいはずの「ペット・サウンズ」よりも駄目な「フレンズ」と思ったのかもしれない。だめんず…ってこうゆうこと?
 

ペット・サウンズのどこが凄いのかよくわかっていなかったしばらく。
ある時、この音楽をイヤホンで聴いていて、びっくりした。
凄い!こんなに迫力があるんや。
それまで聴いていたのはそんなに音の良くないCDとラジカセみたいなスピーカーだったからかもしれない。
その時ぼくは、ペット・サウンズはシンフォニーだと思った。交響曲のようにオーケストラのように鮮やかでダイナミック。光があれば影ができる、その両面を見事に映し出した音像に感嘆するしかなかった。
「ペット・サウンズ」すごいやん!!
 

「ペット・サウンズ」はビートルズの「サージェント・ペパーズ」に匹敵する、と言われているけれど、
まったく別の次元だと思う。ペット・サウンズの方がすごいという意味じゃない。
音が描く影と光の差し方がちがう。

サージェント・ペパーズの音楽はどこかサーカスみたいで、どこか道化師の淋しさみたいなところがある。
ペット・サウンズはもっと真摯で真面目に突き刺さって来る。

ビートルズの「ラバー・ソウル」を聞いたブライアン・ウィルソンが対抗して作った「ペット・サウンズ」、
その「ペット・サウンズ」を意識したビートルズの「サージェント・ペパーズ」、
けれども、これらを並べて聴いてみても、一向に同じものは見えてこない気がする。

ポール・マッカートニーが影響を受けたペット・サウンズ、だと言われているけれど、ビートルズにはビーチ・ボーイズっぽいところはそんなにないと思ってしまう。
ちょっと思いつくならビートルズのBack In The U.S.S.R.のコーラスがビーチ・ボーイズみたい。

ポール・マッカートニーがビーチ・ボーイズ、ブライアン・ウィルソンに影響を受けたんだなあ、と感じたのはビートルズ解散後のアルバム「ラム」を聴いた時だ。

ブライアン・ウィルソンがビートルズの「サージェント・ペパーズ」のような音楽を創れないように、ビートルズだってポールだって「ペット・サウンズ」を創る事は出来ないだろう。
そもそも比べてもしょうがない。

けれども、ぼくは、ビーチ・ボーイズの「フレンズ」ならどこかで通じ合う音楽を見いだせそうな気がする。使う言葉は「ピースフル」

「フレンズ」の響きはまるで夜明けの空気だ。
早朝の澄んだ空気、誰もいない道をひとり、ゆっくり歩いたりして風景を眺めたり、誰もいないのをいいことにちょっとだけスキップをしてみたりする、そんな感じかもしれない。スキップってどんなんやった?と何回か練習してみて、うろ覚えでスキップ、なんちゃって。
とにかく空を見たら朝陽が綺麗だった。

ぼくは、同時代ビーチ・ボーイズの感じに、影響されたのはキンクスのような気がする。ちょうど同じ頃、それよりも1年早い1967年のKinksの名曲、Waterlou Sunsetの美しさは本当に清々しい。

ウォータールーサンセット、曲のなかで流れるコーラスとハーモニーはビーチ・ボーイズみたいだとずっと思っていた。
もしかすると、ブライアン・ウィルソンだってウォータールーサンセットに感化されたかもしれない。

そういえば、キンクスの1969年の「アーサー、もしくは大英帝国の衰退ならびに滅亡」という日本語タイトルのアルバムにある、Australiaという曲の音楽はとってもビーチ・ボーイズ風味だ。

それに、最近気づいた事がある。
キンクスのSitting In My Hotelという、1972年の曲だけれど、これの歌い出しが、「フレンズ」の1曲目、Meant For Youとなんだか似ている。
それは余談。

もしもビートルズでビーチ・ボーイズを重ねられるとしたら、1968年「フレンズ」と同い年の「ホワイト・アルバム」だろうか。
なんだか同い年で別のクラスの友達みたい…
 

ビートルズの「ホワイト・アルバム」の感触はビートルズの中でも独特だ。
合言葉は「ピースフル」
ヘルター・スケルター!!!
ぜんぜんピースフルじゃないやん。
それは別として、「フレンズ」と同じ空が少しだけ見える。

「ホワイト・アルバム」の音楽の振り幅は凄い。
本当に優しい歌、I Will や Black Birdを歌うポールが、一方ではハチャメチャなHelter Skelterを叫ぶ。
優しいJuliaを歌うジョンが、一方では死にたいというYer Bluesを叩きつける。

ビートルズのアンソロジーシリーズのアルバムの「3」に入っていたデモバージョンのJunkという歌が好きだった。

この曲はビートルズ解散後のポールのソロアルバム「McCartney」で完成されているけれど、実際はホワイト・アルバムの時期に出来ていたらしい。

ぼくは、「McCartney」のアルバムの事は知らない。
聴いた事がない駄目な僕が何かを語る資格はないが、
そのアルバムの1曲目、Lovely Lindaという歌がすごく好きだ。
ポールが愛するリンダへ、そのまんままっすぐにいとおしくやさしく歌うのが好きだ。
Lovely Lindaの歌は45秒だろうか。

ビーチ・ボーイズの「フレンズ」の1曲目
Meant For Youなんて38秒だよ。

でもぼくはこの時間を永遠だと想っている。
みじかくても、
ブライアンが慈しむように歌うMeant For You

言葉より近く、こころの遠くまで届くうた。
何度だってくりかえして聴きたい。

音楽の記憶が心に滅裂にフラッシュする駄目な僕は、この歌がロバート・ワイアットに通じ合うと信じてやまない。
 

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