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夢見るころを過ぎても生きていく

きのこ帝国の活動休止によせて

タイム・ラプスが発表された去年、私は就職活動に挫折して夢をあきらめ、もういっそのこと人生なんか終わってしまえと絶望の淵にいた。そんな中、彼女たちの≪夢見る頃を過ぎても≫はまさに自分に向けての作品であるかのように思え、蝶になれなかった蛹である私の人生の一章が終わりを告げるのだという現実を実感した。その一方で、タイム・ラプスはなんとなくきのこ帝国としては最後の作品になるのかも知れないという予感がした。そんな予感が約一年後的中した。

私には中学生のころから研究職につきたいという夢があった。大学受験も何とか乗り越えて希望の学部に入学して、バイトや部活に精を出しながらも勉強に励んできた。第一志望の研究室に配属されてからはテーマについて自分で調べて考えて悩んで仮説を立てて試してみたいことをプレゼンテーションして、その提案が受け入れられて実行できることにこの上ない幸せを感じていた。さらに自分にはこれしかないと信じて、睡眠も食事もライブに行くこととか趣味だったベースを弾くことも恋愛とかも蔑ろにできてしまうほど夢中になっていた。理不尽な目にあったことも結果が出ないしんどい時期には春と修羅を爆音で聴きながら感情を爆発させて乗り越えてきた。研究成果を発表する経験も何度も積んで自信をつけて就職活動に励もうと意気込んでいた。それでも研究職では内定がもらえず、人生の半分以上を賭けてきた夢はたった数か月の就職活動であっけなく散った。すべては自己責任であるとはいえ悔しかったし自暴自棄になった。そんな中自分にとってはとても大切なバンド、きのこ帝国が新譜を出すということで精神的に救いを求めようとCD屋に駆け込んだ。最後の曲を聴いたとき、佐藤さんの優しい声で、歌詞の一つ一つが心に突き刺さって、泣きながら聴き入った。夢をあきらめざるを得なくなっても人生は続いていくし時間は流れていく、生きていかないといけない、変わっていかないといけない。その現実を優しく歌った曲、もちろん私には響いたけれども。これまで作風も時間の経過とともに変化してきた⁅きのこ帝国⁆という一つのバンドとしての道は終わり、4人それぞれの新しい道に進んでいく時期が迫っているのではないかと勝手に感じた。

約一年後、慣れない社会人生活にあたふたしたり、ふと大学時代に必死に追いかけてきた夢のことを思い出して切なくなったりしつつも新生活に慣れてきた。同期とも仲良くなってやっと屈託なく心から笑えるようになってきた。そんなせわしないある日、会社から出て、スマホでSNSをチェックすると、きのこ帝国が活動休止をするとの一報を目にした。もちろんショックだったし、私が彼ら4人のライブを観たのは結局2016年のCDJで見た一回きりでもっとライブに行きたかったという後悔と寂しさを感じた。それでもああそうなのかと納得したし、シゲさんをはじめ休止すると決断した4人のこれからの道に幸あることを心から祈っているし、学生時代を支えてくれた⁅きのこ帝国⁆の作品はこれからも大切にしていきたいと思った。

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