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MOTOO FUJIWARAが創るテイルズ オブ ジ アビス音楽

BUMP OF CHICKENではなく唯一ソロ名義でリリースされたCDアルバム

2019年6月28日。朝起きて携帯を見たら嬉しくもびっくりしたことがある。BUMP OF CHICKENの音源ストリーミング(いわゆるサブスク)配信がスタートしたというニュースである。

いつも使っている音楽ダウンロードアプリを開くとこちらにも通知が来ていて、おすすめの曲がピックアップされている。ほとんどの曲は、CDとして持っているか既にダウンロード済みのはずだ。ところが、ぽかんと抜けているものがあった。MOTOO FUJIWARA名義の「SONG FOR TALES OF THE ABYSS」というアルバムである。気が付いたら、購入していた。これらが収録されているもう一つのサウンドトラックは持っているのに……。
 

BUMP OF CHICKENの「カルマ」という楽曲は、知っている人も多いかもしれない。3分20秒ほどの、短くとも息継ぎのタイミングが難しい疾走感のある曲だ。カルマは「テイルズ オブ ジ アビス」というPlay Station 2のゲーム主題歌となった曲である。私にとっては、BUMP OF CHICKENというバンドを知ったきっかけの曲だ。当時小学生でテイルズシリーズにハマっていた私は、首を長くして待って発売日である2005年12月15日に、さっそく購入してやり込んだ覚えがある。
 

テイルズ オブ ジ アビスというゲームについては、ネタバレになると良くないので極力書かないようにする。ただ心に留めておいてほしいのは、サブタイトルが「生まれた意味を知るRPG」ということだ。この「生まれた意味を知る」というテーマは、主人公だけでなくわき役や敵キャラも含め、登場人物各々が悩み考え抜いていくものだ。

そして、カルマの1番のサビの最後にも『生まれた意味を知る』という歌詞があるように、カルマという曲とテイルズ オブ ジ アビスの世界は重なる部分が多いと思う。唄い出しの『ガラス玉ひとつ 落とされた』から最後の『僕らはひとつになる』まで、歌詞ひとつひとつの言葉やフレーズ全てが、何かしらゲームの世界観やストーリーと関係づけられているように思う。BUMP OF CHICKENのタイアップ曲といえば、元の作品(映画やアニメ)に付け加えたり補足したりというよりはそれぞれ独立した物語がそばにあってお互いの作品を引き立てている、という印象だった。しかしカルマに関しては、ゲームと曲とが相互に影響し合っているように感じてならないのだ。カルマという楽曲を深く味わうためにテイルズ オブ ジ アビスは存在し、テイルズ オブ ジ アビスの世界を深く味わうためにカルマが存在するように――。
 

そして本ゲームについてもう一つ心に留めておいてほしいのは、この作品が「歌や音」が中心になって展開される側面もあるということ、そしてゲームの主題歌だけでなくBGM、さらにテイルズ オブ ジ アビスの世界を特徴づける上で非常に重要な「譜歌(※後述)」まで藤原基央さんが作っているということだ。

「SONG FOR TALES OF THE ABYSS」がCD化された当時のインタビュー記事によると、藤原さんはこのゲーム音楽を作るにあたって、テイルズ オブ ジ アビスの歴史や主人公が生まれた背景などをディレクターや脚本家を通して聴き、テイルズ オブ ジ アビスの世界観を突き詰めたうえで、ゲーム自体の制作段階から話し合いを行ったそうだ。このような入念な準備を経て完成したゲームが、テイルズ オブ ジ アビスなのだ。
 

……と、私が上記のことを知ったのは最近で、ゲームの方をやり込んでいた当時は誰が音楽を作ったかとかBUMP OF CHICKENがどんなバンドで藤原基央さんがどんな人か、といったことはあまり意識していなかった。

それなのに、テイルズ オブ ジ アビスの音楽はなぜか頭に残っていた。これまで、ゲームのオープニング映像なんて一度観れば十分で2回目以降は基本的に飛ばしていたし、スタート画面なんてほんの数秒しか用のないところだ。ところが、テイルズ オブ ジ アビスの音楽は引き込まれるものがあって、しばらくそのままにして聴いている時間が長かったと思う。
ゲームをクリアした頃、テイルズシリーズで唯一、サウンドトラック(テイルズ オブ ジ アビス オリジナル・サウンドトラック/NAMCO TALES STUDIO)も買った。CD4枚組で大ボリュームなのだが、その中でも特に、カルマのストリングスバージョン(ヴァイオリンやピアノなど主にオーケストラで使われる楽器でアレンジしたもの)と、ティアというヒロイン役の声優ゆかなさんが歌う「譜歌」は何度も聴いた。

譜歌は、一応歌詞はあるみたいなのだがどこの国の言語かもわからない発音(レイ、チェイ、クワァなど)でうたわれている。言葉はわからないけど、思わず口ずさんでしまう。何度も再生して、聞こえてきた発音をカタカナでメモしていたほどだ。大きく7つの音階のようなメロディに分かれていて、ゲームのストーリーを進めていくうちに少しずつ習得して、ゲームの進行や戦闘シーンにおいてたびたび使われるとても重要な歌である。譜歌がなければこのゲームは成り立たないといっても過言ではない。
 

テイルズ オブ ジ アビスのサントラ。今度は「TALES OF THE ABYSS」という形で再び私の耳に飛び込むことになった。

あのBGMはあの敵キャラとの戦闘曲だな…
あのBGMはあの超重要シーンで流れていたな…
あのBGMはあの人が亡くなった時に流れてしんみりきたな…

ゲームの発売は2005年12月15日。もう13,14年前のことなのに、BGMを聴いただけでゲーム中の映像が鮮明に浮かび上がってくる。そのシーンの登場人物のセリフまで思い出されるものもあるほどだ。

BUMP OF CHICKENがリスナーを意識して曲の気持ちを考えて音楽を作るのだとしたら、MOTOO FUJIWARAはゲームのプレーヤーを意識して、ゲーム音楽としてのBGMを作らなければならない。そういった、このゲームの音楽に関しては自分が責任を持って作り上げていくという情熱、そして藤原さんの音楽家としてのプロ意識が垣間見られる。
自宅の一室で流れるはずのゲーム音楽なのに、まるでコンサート会場で演奏されるオーケストラを聴いているようだ。オーケストラならではの音の高低・強弱と伸びやかさ、感情を宿して波打つような響きなど、バンドサウンドでは表現できないような音が姿を見せている。そのようにして作られた音楽が、各シーンの映像、雰囲気やストーリーと絶妙にマッチしていて、テイルズ オブ ジ アビスの世界観を喚起させているのだ。
 

藤原基央さんといえばBUMP OF CHICKENのギターボーカルで主に作詞・作曲を手掛けており、その声や歌詞に魅了される人も多いと思う。私自身も、何度もそれらに救われてきた。ただ、彼の声や歌詞が私たちリスナーの心によりいっそう響くのは、それを引き立てる音楽(メロディと演奏)があってこそなのではないかと感じた。このアルバム「SONG FOR TALES OF THE ABYSS」に収録されている曲たちは、カルマを除くと藤原さんの声は一つも入っていないし、譜歌に出てくる歌詞があるように思えるものも、直接何かを伝える意味合いは薄いと思う。それなのにここまで惹きつけるものがあるのは、藤原さんの作曲家としての、そしてミュージシャンとしての才能ではないかと思う。

※『 』内の歌詞は、全てBUMP OF CHICKEN「カルマ」より引用

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