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音楽の価値と価格の関係について

音楽の価値は低下しているのか

CDからサブスクリプションへと音楽を聴く手段が移り変わっている今、価格の低落による音楽の価値の低下についてはアーティストの死活問題として議論されている。様々な意見を見ていて、私も感じることがあったので書いてみようと思う。これを読んでいる貴方も一緒に考えてくれたら幸いだ。
 

“音楽の価値は低下した”。それが前提として語られているのが、そもそも一番の疑問なのだ。

まず個人的な考えを述べるなら、音楽の価値は低下したとは言えない。というのは、音楽の価値はリスナーが決めるべきだからだ。端的に言ってしまえば「自分の大切な物、好みの物は自分で決めろ」だ。人によって広義での音楽の価値、また特定の音楽に絞った音楽の価値は異なるのが自然である。そしてそれは当然、市場価格には反映されない。すなわち、価値と価格は別物である。

ところで音楽の価値が下がっていると言われる理由として、CDからサブスクへの変化に伴う価格の低下や価格に対する曲数の増加が挙げられている。それらは音楽の価値を低下させる理由になるのだろうか。
私の考えは否、である。

前提として、CDは有形であり、サブスクなどの配信は無形である。
つまり、CDを発売するにはCD本体、ケース、歌詞カード等モノとしてのコストがかかるが、配信はデータのみなので低コストで音楽を世に送り出すことができる。そもそも音楽を収録する媒体の仕組みが違うのだ。
加えて、サブスクの仕組みを考えてみてほしい。定額制で聴き放題のそれに投資することは、“音楽を購入する”というより“音楽を聴き放題にするためのアクセス権を購入する”ことに近い。音楽を聴くための入場料を支払っているのであって、音楽そのものに支払っているとは言えない。結果的に還元される仕組みがあるだけだ。
仕組みが異なるCDとサブスクをどちらも音楽の話だからと言って同じ括りで語るのは甚だ見当違いであると感じる。媒体の土台が違うのだから、一概に“高いから価値がある、安いから価値がない”と断言するのは不可能であるのだ。
また、サブスク1再生あたりいくらで、CDの1曲あたりはいくらで、という比較で価値が語られることも度々あるが、それはあくまでも単純計算上の値である。音楽を直接収録しているCDと、音楽を聴くための入場料であるサブスクへの投資は支払いの対象が違う。なのでそれはあくまでも目安にすぎない。付け加えるなら、その計算で導かれた数字は音楽の価値ではなくアーティストの収入の話だ。音楽の価値とアーティストへの還元率の多少は別問題である。還元率の話は商売として成立させるための考え方だ。

では、音楽の価値と価格は無関係なのか?そんなことはない。これは私たちの感覚の話だ。CDよりサブスクの方が安くて沢山聴けるという事実が音楽に対する意識を低下させているのだと感じる。安価なものより高価なものの方をより大事にするという傾向が影響しているということだ。どちらかというと高価なCDは、安価なサブスクより大事にされる。目に見えるものは大事にしやすいし、サブスクは聴き放題だがCDには容量があって数曲の限りがある。このようなことが理由となって媒体によっての意識の格差のようなものが生まれてしまうのではないだろうか。だから安価で身近なサブスクがその勢力を伸ばす今、音楽への関心や価値観は下降しやすくなる。身近すぎて関心を払わなくなってしまうためだ。価値そのものが変動している、というよりはリスナー側が価格に影響を受けているという印象である。

価値と価格は別物である、というのが私の持論である。ではこれらを混同するとどんなことが起きるだろうか。
とある記事に「楽曲の制作に対する評価が対価として支払われる仕組みを維持するべき」という意見があった。
果たして楽曲に対して支払われているものは“制作に対する評価”なのだろうか。
例えば、ストリートミュージシャンに対する投げ銭の話となれば、その投げ銭行為は“制作(或いは演奏)に対する評価”であると言えるだろう。しかし、決められた金額を、聴くために支払うということは順番としても“評価が対価として”とは異なる。それでは評価の前払いになってしまう。
一方で、アーティストが収入として対価を得る仕組みは重要である。ただその場合、評価に対する対価ではなく、音楽を受け取ったことの対価である。価値に対して支払う価格ではないということだ。細かいようだが、ここを勘違いしてしまうことはアーティストの地位の低下に繋がると感じている。音楽の対価ではなく、制作に対する評価を我々が支払うと言う構図は、アーティストよりもリスナーの方が高い位置にいることを暗示することになるからだ。

以上のことから、
音楽の価値は金額によって左右されるものではなく価格によって変化するのは価値観なのである、と私は考えている。CDに代わってサブスクが台頭しようと、音楽そのものの価値は変わらないということだ。しかし、気をつけないと価値と価値観を混同したまま音楽に触れることになり、そうすると最後に書いたようにアーティストを見下すような構図ができあがってしまう。こうなるといよいよ音楽の価値を下げかねない。音楽の価値を下げるのは便利なコンテンツではなく私たちリスナーの考え方だということだ。

貴方はどう思うだろうか。形のない音楽の価値が忘れられそうになるこの時代、その存在について一度考えてみてほしい。

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