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2日間で全く違った“音の風景”

エレカシの日比谷野音 2019を“外聴き”して

 今年のエレファントカシマシの日比谷野外音楽堂でのライブは、2日間とも外で聴きました。それはもう、外から聴くのでも十分すぎるもので、本当に素晴らしいものでした。

 初日は曇り空。午前中から降りしきっていた雨は止み、梅雨のほんの僅かの中休みとなったこの日、開演前から外には野音をぐるりと囲むようにたくさんの人がその音を聴くためにやってきていました。野音には2015年から毎年のように行っているのですが、年々その“聴衆”は増えているような気がします。特に、30周年だった2017年以降は一気に増えた感じがあって、そのレスポンスなんかもだいぶ大きくなったように思えます。ライブは17時半の開演時間ぴったりに始まったようで、場内からは大きな歓声が聞こえてきました。
 
 宮本の歌声は、日比谷公園全体に大波のようにまんべんなく広がっていきます。そしてその波は周りのビルにぶつかり、心地のよいシャワーのように降りてきます。その瞬間というのは、今まではただのコンクリートの巨大な遺跡のような建物だった野音が、たちまち生気を帯びはじめたようにもみえるのでした。聴衆は壁の向こうから聴こえてくる音の塊に、祈りをささげるかのようにじっと耳を傾けています。なんと美しい光景なのでしょう。曲目が進んでいくうちにも、人はどんどん増え、遂には通路一杯になりました。この日演奏される楽曲は華やかなものばかり。それは、彼らが世間に認識されようと模索していた時期の作品であるともいえますが、それが今になって盤石の”スタンダート”となっているように思えたのです。記念すべき30回目にふさわしい、まさに“祝祭”のようなライブでした。

 ふと、野音から公園全体へ視線を移してみると、その音楽はあまりにも東京の、都会の風景に合っていました。ビルの合間に、うっそうと生い茂る木々や信号機の誘導音の音、そして道行く人の足音はまるで、音響効果のように曲に溶け込み、風景がより一層鮮やかになったような気がするのでした。社会を取り囲む人工音や自然音の総称である、“サウンドスケープ”という言葉がありますが、彼らの音楽はそうした都会のサウンドスケープとの親和性が高いのかもしれません。

 ライブ2日目は雨。普通、雨のイベントであれば“あいにく”という言葉を使うのが適切なのかもしれません。けれどもこの日は、雨が降ってよかったとさえ思ってしまうのでした。曲目は初日とほぼ同じで華やかな楽曲が続きます。けれども、その趣というのは全く違って聴こえてきました。というのも、日比谷公園を構成するあらゆる環境音が、雨の音によって目立たなくなったことで、楽曲がより鮮明に浮きだって聴こえてきたからです。そして感じたのは、宮本の歌声が強い雨の音に一切かき消されていないということ。他の楽器の音は幾分ぼんやりしているのに、宮本の声だけは雨をすり抜けるかのように、はっきりと聴こえてくるのでした。

 30回目の野音は2日間で全く違う“音の風景”がありました。どちらも優劣がつけがたく、同じ曲であってもここまで違って聴こえてくるのかと、ただただ驚かされるばかり。 エレファントカシマシと野音が互いに生き物のように共鳴し合い胎動をしているような、まさに奇跡のような時間でした。

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