264 件掲載中 月間賞発表 毎月10日

2017年6月16日

黒田往宏 (30歳)

YO-KINGが歌う本当のロックンロール

かっこいい大人になるために大切なこと

 季節の変わり目に風邪をひいてしまった。
 おそらく窓を開けっぱなしのまま、薄着で眠ってしまったあの夜が原因だ。
 体調を崩すとなんとなく感覚が鈍くなる。薬を飲むとどうも頭がボーっとするし、毎日が楽しくない。

 熱が出たり、咳が止まらなかったり、頭痛がおさまらなかったり、弱っているときというのは、あまり良い考えが浮かばない。ベッドに寝転がりながら見上げる天井すらも、とても遠く見え、もうこのままどうなってもいいや、なんて考える。

 健康というのは本当に大切だなと感じる。健康な体は健康な考えを育てるし、健康な心を作る。

 体と心は連動するものなのだ。

 ボーっとする頭の中でそんなことを考えるとき、必ず思い出す名前がある。
 真心ブラザーズのボーカル、YO-KINGである。

 彼は健康であることをとても重要であると歌う。
 日々の生活をポジティブに陽気に明るく歌う。しかも普通に。かっこよく。
 
 「仕事がいやでも 金がなくても 大切な人がいなくなっても
  健康ならいいじゃん それだけを考えて日々をやり過ごせ」
  ―「死ぬまで遊ぶ」

 時代を変えるようなミュージシャンたちは世間に対して問題意識を持ち、常に怒っている。パンクロックだって、憂鬱な社会をぶっ飛ばすような痛快なものだっただろうし、ロックンロールは常にそんな風に時代を変えてきたはずだ。
 孤独を訴え、怒りを訴え、そして去っていく恋人を思い、人生のはかなさを歌う。
 
 それはそれでかっこいいと思う。
 
 しかし、YO-KINGの歌うロックンロールは、いわゆる「セックス・ドラッグ・ロックンロール」という世界とは少し異なる。
 
 「ぼくらが コントロール できることなんて
  本当は そんなにないのかも
  だからさ 気を楽にして暮らしを楽しみながら
  リラックスして やってくるモノ 全部 受けとろう」
  ―「たまたま」
 
 「わざわざ苦労しなくてもいいじゃん」という彼の生き方はとてもシンプルで気持ちがいい。それに心も身体も健康なら、これから巡ってくるチャンスやツキを手に入れることができる。彼はそう歌う。

 「そんなに得をしたいのなら きちんと暮らした方がいいよ
  君の心のよりどころの損得からみても効率的だ
  ビールはノドの渇きを癒さない むしろ水分を奪ってゆく
  ほどほどに酔って楽しんで 明日も元気に遊ぶんだ」
  ―「スペース~拝啓、ジェリー・ガルシア~」

 苦労しなければ何かを手に入れられないとか、体に負担をかけてでも無理をしなければ成長できないと考えてしまうことはごく自然な「常識」である。しかし、もしロックンロールというものが常識を吹き飛ばすようなものだとしたら、YO-KINGの音楽というのは、ものすごくロックンロールだ。

 そしてなによりすごいのは、彼は一瞬たりともブレていないということである。

 「明日会おうよ 今夜はぐっすり寝て
  明日会おうよ ベストな体調でさ」
  ―「明日会おうよベストな体調で」

 これは1991年、今から26年も前に発売されたアルバム「倉持の魂」に収録された曲の一節だ。このアルバムが倉持陽一名義で発売された当時、彼はまだ20代前半の若者。そんな若者が「寝る間も惜しんで今すぐにでも君に会いたい」ではなく、「ぐっすり寝て、明日ベストな体調で君に会いたい」と歌っているなんて、YO-KING恐るべしである。

 さて、ここでひとつ疑問がある。
 彼は本当に苦労や悲しみ、切なさを感じないのだろうか。

 「あの日のことは全て夢なのさ
  あの日のことはいつまでも忘れない」

 「年齢という数字は ぼくらを遠くに来させた
  時間という数字は ぼくらに重くのしかかる
  けれども涙の熱さで君をあたためよう 今」
  ―「数字」

 YO-KINGだって人間である。悲しみも苦しさも辛さも切なさもたくさん経験してきただろうし、たくさんの涙を流してきたんだろうと思う。

 それでもそんな部分は見せないで、さらっと「楽しく生きよう」と言い切ってしまう。「いつも笑っていよう」と歌いきってしまう。「素直になれば楽で楽しい」と言い切ってしまう。
 しんどい時も、体調が悪い時も「大したことないよ」と歌ってしまう。
 
 そんな生き方はとても健康的だし、とてもかっこいい。
 そして、それができるのが、YO-KINGという大人なのだ。

 さてさて、そんなことを考えていると、僕の体と心の調子も良くなってきたような気がする。

 季節の変わり目に体調を崩した?
 それがどうした。今は「健康」になるための、ただの準備期間なのだ。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
音楽について書きたい、読みたい