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奇跡のループは未来へと

そらるさんの3r​dアルバム『ワンダー』を聴いたファースト​インプレッション

2018年7月22日に活動10周年を迎えたそらるさんは、その日から1年間を10周年アニバーサリーイヤーと銘打って、様々な活動を展開してきた。

自分としては、10周年記念の活動といえば、歴史を感じさせてくれるような、年表を見せてくれるようなものを想像していた。例えば、ベストアルバムのような、過去の足跡を振り返るような何かを。

しかし実際にアニバーサリーイヤーで目の当たりにしたのは、これまでの年表のどこにも記されてない、誰も見たことがない新しい世界だった。
そらるさん自らが、新境地に挑んだのだ。

2018年7月22日以降に何が起きたのかというと、
初のライブDVD発売に始まり、初のシングル発売。
ソロでは初となるアニメ、ドラマ、映画とのタイアップ。
テレビ、ラジオ、雑誌など様々なメディアへの初登場。
その一方で春には自己最大動員数となるソロツアーも実施しながら、過去のどの年にも類を見ないほど精力的に活動を展開した。

そして、そのアニバーサリーイヤーのフィナーレを飾るのは、
2019年7月17日、全曲自身で作詞を手掛けたものとしては初となる、3rdアルバム『ワンダー』発売。

この10周年記念のアルバムが表現するのは、これまた過去の情報を記述する編年史のようなものではない。
この1年を通して、そらるさんが10年の間に培ったものが芽を出して花を咲かせてきたが、『ワンダー』はその産物を摘み取って御披露目する展覧会のような作品になっている。 

そらるさんの時間軸は、過去から現在、未来につながる直線的なものというより、時計の針のようにぐるりと月日を巡りながら着々と時を刻んでいるように見える。
辿っているのは、線ではなく、むしろ円。
一過性の現象ではなく、日々の習慣が織り成す循環運動。

2008年にニコニコ動画で歌ってみた動画を投稿したことがその音楽活動の発端だったが、そのときの動機は「楽しそうな“輪”の中に自分も混ざりたい」という好奇心だった。

自転と公転をし、四季折々に移ろいながら、生態系が変化していくこの地球星のように、
そらるさんは、歌という好きなものを軸にして、自分の意思に従い、と同時に周囲の環境と調和しながら、これまで豊かな成果を実らせてきた。

そらるさんを見ていると、時代の変化とともにやることは変わっていくけど、その本質が変わらないという安心感を覚えるのは、本人と周りとの関係性におけるバランス感覚が安定しているからだと思う。

自分一人で歩むという境地ではなく、環境に身を委ねながら、仲間と一緒に楽しむというスタイル。

そんな巡り巡る活動に自然と魅了され、その輪に巻き込まれるように、長い年月をかけてファンが増えてきた。
そらるさんを中心とする輪は、そうして徐々に広がってきたのだ。
 

だから10年経ったところで、改めて過去から順番に段階を追って情報を辿る必要はなく、活動を続けてきた結果として今ここにどんな自分が存在しているのか、それを示せば十分なのだ。
それこそが10年の証となるのだと思う。

そんな活動の歩みを土台として生まれたアルバム『ワンダー』。
このCDを手に取ることは、そのままそらるさんの10年との邂逅に繋がる。
ずっと応援してきた人にも、今日初めてそらるさんのCDを手に取った人にも、ふとしたきっかけで久しぶりにそらるさんの音楽と再会できた人にも、それはきっと同じだ。これから出会うかもしれない誰かにも。

なぜなら、例えば地球に対する地球儀のように、この丸いCDには誰でも触れることができるようにそらるさんの10年の営みがギュッとこめられているからだ。
誰の前にも平等に開かれている。
 
 

ここから先はアルバムを聴いた、自分の第一印象を記していきたい。

今年4月にアルバム発売が告知された時点で、13曲のうち既存発表曲はタイアップの3曲だけ。アルバム発売の数週間前にさらに1曲公開されたが、ほぼ10曲が同時に世に発表されたことになる。
そんな“初めまして”に溢れたアルバムだが、実際に向き合ってみると、そのどれもそらるさんを起点として生まれているため、そこには確かな脈絡があった。
 

まずは、Tr.01「銀の祈誓」とTr.02「アイフェイクミー」。それぞれアニメと映画のタイアップで、作品の世界観によりそった楽曲になっている。これらのロックなタイアップ曲がアルバムの入り口の役目を担う。

続くTr.03「幻日」、Tr.04「アイソレイト」は、前のロックな流れを受け継ぎつつ、テーマがより普遍的な方向に開かれ、人生を応援するようなメッセージが異なるアプローチで表現されている。

Tr.05「海中の月を掬う」とTr.06「ユーリカ」は、また別の人生の大きなテーマである恋愛のパート。「海中の月を掬う」は、愛する人との別れの哀を、反対に「ユーリカ」は出会えた喜びを歌う。

Tr.07「ありふれた魔法」とTr.08「アンサー」は、引き続き「ユーリカ」の幸せな雰囲気をもちつつ、今度は個人の活動における思いを歌っている。「ありふれた魔法」はよりファンタジーのような曲風で、おそらく特にライブでの非現実的な光景を歌っているのだろう。「アンサー」はライブにおけるお客さんの存在や、一緒に活動する仲間などが意識された曲になっている。

Tr.09「教えて神様」とTr.10「それは永遠のような」では、活動以前の本人の学生の頃の思い出に立ち返っている。今の自分の礎ともなっている当時の感性を、ここで形に残しておきたい意図もあったのだろうか。

Tr.11「オレンジの約束」は、2015年発売の2ndアルバムに収録された「夕溜まりのしおり」の内容に呼応するような曲である。「夕溜まりのしおり」は、そのときのことをいつでも思い返せるような“しおり”としたいという2ndアルバムのコンセプトに乗っ取った楽曲で、まさに今振り返り、そしてその続きを綴っている。「夕溜まりのしおり」を足がかりにしながら、過去から現在、そして未来へと繋げるような曲になっている。
 

ここまで、この期間に活躍した曲たちを筆頭に、誰もに共通するようなテーマの曲が続き、こんな風に活動ができるようになった自分の今や過去を歌いながら、前向きに未来を見据えた――そう自分は受け取った。
 

Tr.12「10」。このタイミングで、短いシンプルな曲に、率直な10年の歩みに対する思いが乗せられる。変化に富んだ10年間よりもさらに目まぐるしく走り抜けたといえるアニバーサリーイヤーを象徴するような11曲が続いたが、ここでいったん一呼吸をおくような穏やかなピアノ曲になっている。

そして最後に表題曲、Tr.13「ワンダー」。前の12曲を全て受け止めて総括するような曲。そらるさんから発信された曲たちが再びここに帰結している。旅の着地点といってもいい。
時計の針が12の数字を刻んで一周するように、12ヶ月で一年間を巡るように、ぐるりと12曲を味わってここに戻ってくる感覚だった。
与えられた奇跡(wonder)と、さまよってきた軌跡(wander)をいだきながら、ワンダーな日々の続きがまたここから始まることを思わせてくれる希望に満ちた曲。
 

以上が自分にとっての『ワンダー』のファーストインプレッションだ。
 

10周年アニバーサリーイヤーは『ワンダー』で華々しい有終の美をかざったが、これからもそらるさんの活動は続いていくし、そのなかでまた様々なワンダーがあり、喜怒哀楽がまた巡る。

そらるさんはその奇跡に満ちた毎日を気ままに流浪しながら、自分が楽しいと思える道を選んでいくのだろう。

自分は、『ワンダー』の先に広がる未来を、そらるさんが結ぶ居心地の良い輪の中に身を寄せながら、これまでとこれからのあらゆる奇跡との巡り合わせを愛していきたい。

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