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「ねごと」はいつまでも夢の中

〜夢から覚めても鳴り止まないビート〜

令和元年7月20日(土)、ロックバンド、ねごとが解散した。
同級生、幼馴染という繋がりから千葉県で結成し、2007年から約12年の活動だった。
ねごとと言えば、2011年の「カロン」がCMとタイアップしたことで聴いたことがある人も多いのではないだろうか。自分の経験と共にこのバンドを振り返って、ラストライブのことを書きたいと思う。

かく言う私もねごととの出会いは「カロン」。当時、Vo.蒼山幸子の「何度夢をくぐったらきみに会えるの」という歌詞と声が耳を離れなかった。
デビュー初期はツアーは東名阪が多く、地方に来てくれることは少なかった。
2011年12月、チャットモンチーのQIツアーのラスト、Zepp Tokyoでようやくねごとに出会うことができた。その時の印象はロックバンドというよりも、少し落ち着いた、聴かせる系のバンドと言ったイメージ。当時のねごとは一般的には「ループ」、「カロン」がメジャーで、それ以外の知名度は正直微妙だったかもしれない。それでも、「インストゥルメンタル」、「ふわりのこと」、「サイダーの海」、「メルシールー」など聴く人を引き込む楽曲が多かった。

ここから、ねごとは電光石火のごとく、楽曲をリリースする。特にこの時期に生まれた「sharp #」は今後のねごとのキラーチューンをしばらく担っていくことになる。2013年から、その「sharp #」も含まれたアルバム「5」ツアーでは、全23都市をまわった。数々のライブをこなしただけあって、久しぶりに見た自分にはものすごく進化したバンドに見えた。
ややアップテンポの「nameless」、「greatwall」が出てきたことによって、今のねごとらしい「身体をゆらゆら揺らす系」の素が出来てきたように思える。
それに加えて、ロック感の強い「sharp #」、蒼山幸子の表現力、エモーショナルさを最大に活かした「たしかなうた」、「トレモロ」も作られ、完全に「ねごと」というジャンルを確立したと思った。

5ツアーの後、「シンクロマニカ」、ミニアルバム「“Z”OOM」が作られるが、個人的には暗黒期に突入したと思っている。アニメとのタイアップもあったがなぜか大きなヒットを生み出せなかった。
それでも前述した「シンクロマニカ」、「真夜中のアンセム」は以降のねごとのライブには欠かせない曲となった。「真夜中のアンセム」は4つ打ちから、Ba.藤咲佑から始まる曲で、なり始めた瞬間に観客を沸かせる。同じく「シンクロマニカ」は沸かせたステージに突如訪れる大胆な空白からのハンドクラップで待ち侘びた観客を煽りにくる。

その後、2015年、アルバム「VISION」が作り出される。前作を遥かに凌駕する出来で、ツアーも大成功を収める。このアルバム、シングル曲だけでなくほぼ全ての曲がかなり高い完成度で、どの曲も人気が高い。
特に「endless」はねごとの世界観がとても色濃くでた曲だと思う。打ち込みの効果もありつつ、Aメロ、BメロはGt.沙田瑞紀のリードが聴いている人を引っ張っていく。コーラスが色濃く出始めたのもこの頃だと思われる。

2017年には「ETERNALBEAT」を作成。これもねごとの中で素晴らしいアルバムの1つ。積極的にシーケンスを使い、これまでと違うねごとでありながら、根本の変わらないねごとを作り出した。
標題曲「ETERNAL BEAT」、「アシンメトリ」では、やはりねごと感満載。心地の良いビートで身体を揺らしてくれる。個人的に名曲である「シグナル」もこのアルバムで生まれた。主に作詞も担当している蒼山が「雨」が好きということもあり、雨がテーマになっているが、シリアス感のある曲でありながら、ねごとを超えた蒼山幸子の世界を作り出した。この頃から蒼山幸子はハンドマイクにしてみんなの前に出ることも増えてきた。

前作から1年足らずの怒涛の勢いで、2017年12月に「SOAK」を発表。感動の「DANCER IN THE HANABIRA」が生まれた。
ねごとの表現力の極みではないだろうかと思う。何も考える必要はない。ただ溢れてくる音と歌に身を委ねたらねごとが染み込んでくる。普段特にギターの音が好きな私がギターのないこの曲を気にいると思わなかった。逆にこのような編成もねごととしてやり尽くしたという終局に向かう一歩だったのかと思うと複雑な思いである。それほどに特定のメンバーの音が好き、とかではなく、「ねごと」というバンドが好きだったのだろう。

歴史の前置きが長くなってしまったが、ねごとのラストライブについて書きたい。
最後のツアー、仙台、新潟、Zepp DiverCity Tokyoの3本を観たがどれももちろん素晴らしかった。メンバーたちも悲壮感はなく、清々と一生懸命演奏する姿に不思議と涙は出なかった。途中、少し目が潤んでいるような場面も見受けられたが、観客を最後まで楽しませた。

1発目は「インストゥルメンタル」。蒼山幸子の息遣いすら聞こえ、可憐でも芯のある声が響き渡った。
「こんばんわ、ねごとです!」といつもどおりの挨拶をすると、そのまま「透き通る衝動」、「DESTINY」、「sharp #」を叩き込んでいく。藤咲佑が流れるようなベースラインを弾きながらステージ前に出てきてステップを踏みながら、観客を引っ張る。
簡単なMCを挟んでからの3曲目に「透明な魚」。観客全員を巻き込んだハンドクラップで会場の一体感はマックスになる。サビのコーラスも全員の声の響きが素敵だ。その勢いのまま「真夜中のアンセム」につないでみせた。
沸き立つ会場を一度沈めるかのように披露されたのは「ふわりのこと」だった。蒼山のピアノからスタートし、インストゥルメンタル同様、蒼山幸子の歌を聴くための曲と言っても過言ではないこの曲で会場全体がステージをただ見つめていた。
中盤、小夜子のドラムソロがスタートし、会場を沸かせると、そのまま「シリウス」に突入。今日の会場はこのツアーでは大きめのZepp Divercity Tokyo。照明もレーザーもいつも以上にねごとをアシストする。「シリウス」の終了と同時にまたハンドクラップ。「シンクロマニカ」だ。曲ができた当時に比べるとしっかり観客に根付いている。
ツアーファイナルはバンドの表現力全開。「サタデーナイト」、「水中都市」を続け様にエモーショナルに歌い上げる。
終盤に向けてねごとの勢いは加速していく。
「シグナル」ではメンバーのバックのモニターに雨を降らせ、蒼山が歌う歌詞が出てきては滲んでいくという粋な演出が観客を釘付けにする。
続く「nameless」で沙田は巧みにエフェクターを踏み変えながら演奏。2番で藤咲佑と一緒にドラムに寄ってきたと思えば、ギターの一瞬の空白で藤崎の頭をポンと叩き笑い合う。幼馴染の身長凸凹コンビがさりげなく会場を笑顔にする。5ツアーの時は最後の手拍子がなかなか観客と合わなくて苦笑いだったけど、今はだいぶ合うようになってきた。
「憧憬」、「ETERNALBEAT」、「endless」と続けて、ラストは蒼山が光るMIDIコントローラ手に「みなさん!最後まで盛り上がれますか!」という言葉とともに「アシンメトリ」で締めた。

途中のMCで蒼山は「ねごとが続けられなくなりそうなときもあったけど、最後のツアーでみんなの顔を見たら続けてきた意味があった。
ねごとを見つけてくれてありがとう。ねごとと出会ってくれてありがとう。」と語った。
こちらこそ素晴らしい音楽を発信してくれてありがとう。いろんな曲を通して、私たちに会いに来てくれてありがとうと言いたい。
ねごとというバンドは、よく紹介されるようにロックだけでなくポップ、エレクトロニカ、クラブやテクノの要素を取り入れ、常に変化し続けてきたが、根本にあるものは変わらなかった。どの曲をとってもねごととしてリスナーに届いていた。
約12年間で480本のライブ、本当にお疲れ様でした。
ねごとは解散するけど、ねごとの音楽はみんなの中で生き続ける。またいつか、夢をくぐって会いに行きたい。

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