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就活生がBiSHを聴いたら

前進することへの不安と期待

「しょうらいのゆめは、うちゅうひこうしになることです」
 幼稚園の卒園文集の私のページには、地球を離れ宇宙を遊泳する私の絵とともにそんな言葉が綴られていた。それから十数年が経ち、私は就職活動という人生において大きな大きな岐路に立たされている。その岐路の中に、宇宙飛行士という選択肢はない。年齢を重ね、色々なことを学び経験していくうちに、自然とその選択肢を諦め捨てている自分がいた。今や無謀とも言える夢を諦め、就活サイトをぼんやりと眺める日々を送っている。将来の夢を聞かれても、しばらく口をつぐんでしまう。

『目指した未来になんだ?って悩んだり 達観したり
 こんな僕がありえない 必死に生きろ』〈I am me.〉

 様々なフェスや音楽番組に出演し、快進撃を続けるBiSHは多忙な毎日を必死に生きながら、多くの夢を実現させている。例えば文才に長けたモモコグミカンパニーがエッセイ本を出版したり、音楽愛の強いセントチヒロ・チッチが自ら主催を務めるフェスを行ったりと、BiSHとしての活動とともに個人の実力を発揮している。今回BiSHがリリースしたアルバム「CARROTS and STiCKS」に収録されている「I am me.」「まだ途中」の2曲には、私たちが就活を進めていく上でヒントになるような歌詞がふんだんに詰め込まれていた。

『誰かから付けられた価値 ちょっと目が眩んだ』〈まだ途中〉
『白い部屋はいつも 見られてるようで落ち着かない』〈I am me.〉

 就活生は皆、同じようなリクルートスーツに身を包み、黒髪をぴしっとまとめている。威儀のある正装、と言われてしまえばそれまでだが、私にはそれらが個人のもつ個性や能力をリセットしているように見えてならない。それまでの人生は関係なく、面接や試験だけで価値をつけ、有力な人物と無力な人物に振り分けられているような感覚がある。そのような状況で、自分の持つ全力を出せる自信が私にはまったくない。二択のうち、“無力”のほうに振り分けられる未来がやすやすと想像できる。誰かに見られていることに怯まずに、自分を信じ力を発揮できるような強い心を持ちたい。
 BiSHはアウェー感の強いフェスなどに出演することも多いが、そこでも洗練されたパフォーマンスで観客を巻き込み、「楽器を持たないパンクバンド」として観る人に衝撃を与えてステージを後にする。ステージ上の彼女らに、怯んでいる様子は全くない。経験や実績もさることながら、6人それぞれが持つ強い心がパフォーマンスを通して観る人に伝わっている。

『綺麗事ばっか言ったってしょうもない かっこ悪い
 あんま言わない言葉さ 僕は僕だ』〈I am me.〉

 就活において自己分析などで自分自身をを見つめなおしていると、だんだん自分が何なのか分からなくなってくる。長所も特技もパッとしないばかりで魅力のない人間のように思えてくる。自他ともにインタビュー等で言っているが、BiSHは歌唱力やダンスが特別に優れているグループではない。それでもBiSHがあの6人でなければ、観る人の心は突き動かされないだろう。6人それぞれの個性と6人それぞれのパフォーマンスにかける想いが結集して、唯一無二の存在、唯一無二の魅力となって多くの人を魅了している。僕は僕だと胸を張って言えるような自信それ自体が、大きな魅力となっているのである。綺麗事ばかりでなく、ありのままの自分をさらけ出すことの大切さをBiSHが教えてくれている。

『なんの確証もない未来みてる』〈まだ途中〉
『そんな僕がこのまま 果てしない前進を』〈I am me.〉

 デビューから4年が経ち、BiSHは様々なメディアで取り上げられ、色んな層の音楽好きから注目を集めて活動規模をどんどん拡大させている。そんな成長の様子をリアルタイムで体感出来るのは本当に嬉しいし、ずっと応援し続けたいと思っている。しかし私はほんの少しだけ、「自分を発揮できる場がたくさんあっていいなあ」という嫉妬と羨望をBiSHに対して抱いている。普遍的な大学生である私にはそのような場はほとんどなく、だからこうして音楽文を書いている。私は“なんの確証もない未来”が不安でならない。しかし、なんの確証もないということは良い方向に進む可能性も大いに期待できるということであり、果てしないということは、終わりが無くいくらでも未来を変えていけるということだ。私の人生はまだ途中であり、まだまだ前進していくチャンスはたくさん残されている。

『二度とない日々を駆け抜けろ』〈I am me.〉
『戸惑う君の背中押したい 大切なもの自分自身だって』〈まだ途中〉

 BiSHは先日、首都圏以外では初のアリーナ規模のライブを大阪城ホールで行うことを発表した。アイナ・ジ・エンドがあるライブでそれを発表する瞬間の動画が公開されていて、彼女が大阪城ホールと告げた瞬間、会場中のファンたちが弾けるような歓声を上げている様子は感動的なものだった。アイナは大阪出身であり、大阪城ホールでライブをするのが夢だったという。また一つ、BiSHは夢を実現させた。私もその大阪城ホールのライブに行き、BiSHからパワーを貰ってこようと思う。彼女らのパワフルでエモーショナルな楽曲はいつだって私たちの背中を押してくれる。社会人になるのは不安でいっぱいだが、長い人生の途中にあるいくつかの岐路の一つでしかなく、BiSHも私もこれから何が起こるかは誰にも分からない。自分自身を大切にし、二度とない日々を楽しんでいければそれでいい。

『僕らは0から1に進むんだ
 途中さ まだ途中さ』〈まだ途中〉

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