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BTSからもらった光

ヤンマースタジアム公演を終えて

 防弾少年団は、「10代、20代に向けられる社会的偏見や抑圧(という名の弾丸)を防ぎ、自分たちの音楽と価値を守り抜く」というコンセプトに、「BEYOND THE SCENE」(成長する青春の肖像)という概念を加え、「BTS」として今や世界中のあらゆる人々に音楽を通して大きな影響を与える存在となった。
 私がBTSを知ったきっかけは娘からカッコいいから見てと勧められた「Not today」の映像が最初だった。それこそ彼女の年頃に、洋楽を聴きあさっていた私は、韓国語の歌を聴いたことがなかった。一糸乱れぬシンクロしたダンスと挑戦的でありながら自らを鼓舞するような強固な意志が画面から伝わり、前進あるのみと訴えているように思えた。
「これは、すごい人達が出てきたかも」と、それ以降、作品を片っ端から聴いていくと、出るわ出るわ良作の宝庫で二度びっくり。正直、今までラップは敬遠しがちだったが、押しつけがましくなく、カッコよく乾いていて耳障りがとてもいい。「これは、行かなきゃ」と昨年京セラドームへ。そして7月6日のヤンマースタジアムが私の2回目の参戦となった。
 「Dionysus(ディオニュソス)」から「Not today」の件で、驚いたのが、想像以上にパワフルなダンス。いつも見ている2Dの世界から3Dへとなると臨場感溢れ、前回参戦時より近くなった分、とても迫力がある。「あっ、この人達は男性グループだったんだ」と今更バカげた所感を持ちながら、ふとプラクティスの映像を思い出した。彼らのダンスの練習風景の動画が幾つもあるが、練習室の床が一気に「ドン」と音を立て、静寂した空間の中でいかに彼らのタイミングがぴったりと符合しているかが歴然と分かるのだ。とにかく、セトリや舞台の構成も観客を飽きさせることなくダイナミックに進んでいく。
 ARMYの声援に包まれたJ-HOPEのステージ、皆を熱狂させたグクの空中遊泳、ジミンの繊細でセクシーなステージ、RMからプレゼントされた素敵なメッセージ、絵画の一部のうな洗練されたテテのステージ、安定感のあるシュガのラップ、その歌唱力で拍手が巻き起こったジンのステージ、7人7様の個性が凝縮されたステージは、素晴らしいエンターティメントとして一人一人の胸に刻まれたことと思う。

 BTSが世界中で愛される理由には、たくさんの理由があると思うが、私は、BTSのコンセプトや本人たちの音楽や夢へ対峙する姿勢が大きな理由のひとつであると思っているし、それが理由のひとつであるとするならば、「世の中捨てたもんじゃないな」とさえ思える。
 楽曲や素晴らしいパフォーマンス自体はもとより、個人個人の魅力も要素だと思うが、ストイックに夢に向かっていく姿、ありのままの自分たちを受け止めて成長しようと努力する姿は、本来、人が求めていく、求めていきたい、一つの生き方だと思う。誰しも懸命に生きていて、彼らだけが特別なわけではない。しかし、諦めがちな変化のない毎日をどうにかしようと、昨日の自分より今日の自分は成長しようとそういう思いを持つことが肯定されているようで、これから未来を作っていく人達の中に「希望」の「光」を投げかけていることは確かだと思う。
 いつか、シュガが「僕たち、大衆音楽をやる人たちがやることは、一生懸命やることです」というような意味あいのことを言ったことがあったと思う。前後の脈絡に記憶がないので、ここからは、私の個人的な思いだが、大衆音楽は、その時代時代に消費され、消えては生まれを繰り返していく。人々のお気に入りは塗り替えられ、使い捨てられることもあるだろう。しかし、今忘れられたとしても、いつか思い出したら聴いてもらえるかもかもしれない、聴いた記憶は続いていくかもしれない。音楽は、聴いた瞬間に消えてしまう「音」としての宿命を持っている。しかしそうであるからこそ、記憶の深いところに根差し、私たちの心を揺り動かし、明日への一歩への力にも成り得るものだと私は思っている。
 
 ところで、「アイドル」とは、何だろう?憧れ、崇拝するもの、偶像といわれるアイドル。
楽曲「idol」において

You can call me artist
You can call me idol

という歌詞がある。アーティストと呼んでも、アイドルと呼んでもそんなことは、俺には関係ない。俺は変わらないし、妥協しないし、お前は俺が自分自身を愛すことを止める事はできないと続く。称号には意味がなく、他人が付けたラベルに意味はないということだろう。
「Answer: Love Myself」において、ありのままの自分を受け入れるという答えに到達した彼らの彼ら自身の呼び名は何だろう?
おそらく、
「We are BTS」

BTSはBTS以上でも以下でもなくBTS-に尽きるのではないか。

 楽曲「Lights」において
「幸せの価値なんて自分で決めてしまえばいいんじゃない」
という歌詞がある。人は行き詰るほどに、幸せから遠ざかっていくように感じるが、幸せかどうかは本来、人によって違って当たり前だ。不安や痛みから抜け出せないという感覚に馴らされていることに気が付いて、お互いの光を見つけて、音を頼りに。音でつながることに光を当てた楽曲は、日本語であることから歌詞の意味合いが深く心に刻まれる。スタジアムでは、スマホのライトがやさしく揺れた。その光を見つめるBTSという光は5万人の人々の心を照らし続けるだろう。

 さて、最後に「アイドル」に付加価値を見出すとすれば、もう一歩進んで、「自分らしく前進しようと歩み続けるシンボル」としたい―それが、BTSの活動を通して私が感じたひとつの音楽の記憶だ。

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