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Dear…Dragon Ash

Answer song

 
「このフェスが10年にわたって獲得してきた勝利と、これから獲得するであろう勝利に向けて歌います」
 

 2009年8月1日。
 冒頭のセリフは、ROCK IN JAPAN FESTIVALの10周年に、トリを飾ったステージでのKjの発言である。
 当時の最新アルバム『FREEDOM』のラストナンバー“運命共同体”によって幕を上げたステージは、“静かな日々の階段を”でフィナーレを迎えるまで、最後列までぎっしり埋まった会場を、 尊大な多幸感で激しく抱擁した。それは、時代の旗手であるDragon Ashの活動を追体験する儀式であると同時に、彼らの音楽を宝物にしていた自分自身の物語を祝福する式典でもあったからだと思う。
 5万人の観客に何度もマイクを向けるKjは、いつものライブハウスと同じく、狂気じみた僕らの雄叫びを真正面から受け止めてくれた。
 具体的に説明しよう。
 ロックンロールから誘発された感情は川のように、とめどなく流れ続ける。怒り、悲しみ、喜び、憎しみ……抱えているものは計り知れない。
 それらのエモーショナルを溜め込み、練り上げ、解放し、そして昇華に方向付けするDragon Ashのメロディーは、いつも胸の奥の懐かしい砂場に水分を与えてくれた。それだけでなく、一人ぼっちで遊んでいた砂場に、「十人十色の仲間を呼ぼうぜ!だって、そっちの方が楽しいじゃん?」などの遊びの誘い文句こそが、まさしくDragon Ashの掲げる『ミクスチャー』という哲学なのである。

 しかし、いつも人に話す際、困ってしまう。
 悲鳴混じりに提唱していたマニフェストが、潜在的なマイノリティを集結させ、革命を起こした、なんておとぎ話を誰が信じてくれるだろうか。
 でも、それが嘘偽りなく、Dragon Ashの歴史であり、傷だらけの僕らの物語なのである。
 あの日、ひたちなかに咲き誇った百合の花は、いまだに僕らの勲章となっている。
 

 そして、10年が経った。
 クソな学校に通っていた僕は、クソな会社に通う社会人になっていた。
 10年前、就職活動のエントリーシートに、自信満々にDragon Ashの歌詞を書き殴っていた。大企業から返事は一切無かった。首をかしげたまま、僕は偽りの自己PRを羅列した履歴書を提出し、地元の小さな会社に就職する運びになった。7月末に内定通知が届くと、得体の知れない絶望感に苛まれた。何かに導かれるようにROCK IN JAPAN FESTIVALのチケットを買ったのは一種の防衛反応だったのだろう。

 断言できるが、あの日、ひたちなかに行かなければ、僕はそのまま内定通知を破り捨てていた。
 それからというもの、僕は、僕の物語に光を与えるべく、必死で働いた。
 Kjの言葉を杖に歩き、Dragon Ashの音楽を盾に走ってきた10年間だった。少しは優しくなれたし、強くもなったし、反抗的にもなった。 ちょうどよいポジションに甘んじることなく、常に異端。それはつまり、“ロックンロール”という生き方を選択したということだと僕は密かに胸を張っている。
例えば、「出る杭になればいい 笑いたい奴は笑えばいい(“SKY IS THE LIMIT”)」をお堅い会社で体現した僕は、数年間の左遷も経験させて頂いても、不敵に笑っていた。
 内定者懇談会というゴミみたいな飲み会を拒否し、ひたちなかへの夜行バスに乗り込んだ僕の頭の中は、いつだって、Dragon Ashの賛美歌が爆音で鳴り響いていた。
 
 

 さて、今年も灼熱の季節がやってきた。
 それにも増して、いよいよ、面倒な世の中になってきた。こんな時、どう動けば良いのか、すべてはDragon Ashの曲が教えてくれる。彼らはいつだって、期待に応え、批判に堪え、そして不確定な未来に答えを与えてくれた。

 2019年8月12日。
 Dragon AshはROCK IN JAPAN FESTIVALの20周年の大トリのステージに立つ。
 音楽シーンを開拓してきたDragon Ashは、社会現象にもなった弊害として、様々な誤解を生んだバンドである。
 いまこそ、逆境の風に吹かれ、偏見の嵐に耐え、新時代の扉をこじ開けた百戦錬磨の彼らを、今度は彼らに救われた僕らが祝福しよう。
 そう、停滞した時代を塗り替えるのは、僕らの世代だ。

 この夏、Dragon Ashは伝説となるだろう。 そして、また10年後に勝利を語り合おう。
 
 
 

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