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夜な夜な

Bentham GOLD RUSH TOUR 2019 ファイナル公演を見て

映画を見ているようだった。
最後の最後、たった1本のギターを掻き鳴らしながら、たった独りステージに残された彼を見て、私はそんな感覚に陥っていた。

2019年、7月15日。
今にも雨が降り出しそうな曇り空の下、
4月から始まったBenthamの『GOLD RUSH TOUR 2019』の、ツアーファイナルが行われた。

今回のツアーはBenthamにとって、史上最大規模の全国ツアーであった。全25公演、東名阪以外は対バン。個人的に金沢、富山、静岡、宇都宮と参加したが、対バン編の時点でもう(良い意味で) “これ以上” は見えないのでは?と思えるほどだったうえ、素人の目にも前回のツアーとは明らかにレベルが違うように映っていた。

そんな事を走馬灯のように思い出しながら開演を待っていた。SEが静かにフェードアウトしていくと同時に、会場の照明も薄暗くなる。ザワザワとしていた会場全体に緊張感が走る。最初の一音目を、今か今かと待つ私達は息を呑むようにステージを見つめた。

魅せられた。1曲目「cymbidium」。
今作のアルバム「MYNE」のtrack-1 。
待ち望んだギターの一音目が、あまりにも美しかった。
対バン編はアルバム曲から「ASOBI」や「トワイライト」などBenthamらしさ全開の始まりだったので、今日は全く違う景色を見せてやる、と宣言されているようにも思えたし、何より、静かなミディアムナンバーから始まるライブは今まで数少なかったような気がしてとても印象に残っている。

しんみりとした余韻に浸る暇もなく、最高にアッパーな「クレイジーガール」に繋げていく。これがBenthamだ!と言わんばかりに、「楽しむ準備できてる!?」とボーカルギター小関が先陣を切り盛り上げてゆく。静かだったオーディエンスは魔法をかけられたかのように各々手を挙げ踊り、飛び跳ねはじめる。私はその光景を見て鳥肌が立った。温度差、ってこんなにもくっきりと感じられるものなのだ。
そこから「TONIGHT」へと繋いでいく、これだけでもう最高の夜になると確信できるのである。

四曲目「FATEMOTION」の、“僕じゃダメかな ダメだよな” と言うパンチの効いた弱々しい台詞を、「僕じゃダメかな? …良いよな!」と、歌詞をアドリブで変更し叫ぶ姿が凛々しく、頼もしかった。

「トワイライト」。華ばなしいサウンドと、背中をそっと押してくれる優しい言葉。うっとり聴き惚れているところ、「プレイボール!」と叫ばれると同時に、力強いベースの音。「BASSBALL」。
「最近ね、男性のファンが増えたんですよ!」
そう嬉しそうに話しながら、「一発当てたらどうだい?」とコールアンドレスポンス。確かに辺りを見回すと、フロアには老若男女問わず沢山の人で溢れ返っていたし、皆が皆負けじとそれに大きな声で応えている。このワンフレーズの中に居るのがとても心地良かったし、途中の「ヘイヘイヘイ!」もバッチリ揃っていて最高に気持ちが良かった。
最後、「この僕に愛を!」と強調していたが、その時にはもうフロア全体が愛で溢れかえり、洪水状態になっていた。

そんな中演奏された「初恋ディストーション」はイントロからオーディエンスのどよめきと歓喜の声が目立つ。
私自身も前回の東京パノプティコンぶりに聞いた、この曲は言わば「レア曲」だ。
青く甘酸っぱい青春の音がする。ライブハウスに居るはずなのに、放課後、教室の窓を開けた時に見える景色が見えたような気がした。

大きなタイアップ「ウルトラマン ニュージェネレーションクロニクル」の主題歌となった「Hope the youth」、
“此処じゃない僕はクラクションラヴ”
ワンフレーズのコーラスがユニゾンする、スポットライトを浴びてギターを掻き鳴らしながらこの歌を歌う。メジャーファーストアルバムから「クラクション・ラヴ」。
小関がアコースティックギターに持ち変え演奏される爽やかなイントロは「five」。このツアーのみならず、CDデビューから5年、メジャーデビューから2年。ここまでの景色が心の中に映し出されるように、大切に且つ丁寧に歌い、鳴らされた。

しっとりとした空気に包まれる中、和やかなムードで今回のツアーの思い出をメンバーが話す。
「北海道から帰ってくる途中のフェリーで酔っ払った辻(ベース)にペットボトルを投げつけられ額から血が流れた」と満面の笑みで話すドラム鈴木。「俺だけフェリーではなく、飛行機移動だった。」と話す小関は、メンバーから「北海道(すすきの)で一晩スケジュール空いていたそうだけど、なにしていたの?」と聞かれ、誤魔化しの言葉に詰まり、もたもたしているのかと思いきや、突然稲妻が走ったように「次の曲! ASOBI!」と叫ぶ。

突然すぎてフロアはイントロ中誰しもが動揺を隠せていなかったが、直ぐに状況を掴み変拍子のリズムに乗っていた。
(きっと遊びとASOBIをかけたオゼさんなりの巧妙なアソビだった。)
そこから聞き覚えのあるスネアの音、「White」のイントロが鳴り響く。1番の最後からラスサビに飛んだ瞬間、あれ?と思ったのも束の間、またまた聞き覚えのあるイントロ、「サテライト」へ。サビを歌い終えると今度はASOBIのイントロへ戻る。短時間で遊び過ぎな、とても贅沢なメドレーだった。次から次へと移り変わる情景に弄ばれる。

流れに乗るように、キャッチーなテンポが流れ始める。「SUTTA MONDA」。「フッフー!」と言うコーラスを促すMCを鈴木が叫ぶように説明したあと、分かってますよとばかりに声をあげるオーディエンス。ギターを下ろし、ハンドマイクで客席を煽る小関の表情はニヤついていた。
メンバー4人とも凄く良い表情をしながら楽しそうに演奏していたのが未だに印象に残っている。
 

「よくロックバンドを車に例えるのだけど、バンドは各地でお客さんにガソリンを給油してもらいながら走っている。

助けてもらう事ばかりだけど、あなた達のことを本当に大切に、愛おしく思っています。」
 

負け犬、吠えろ!そう言って鳴らされた「Cry Cry Cry」。
“泣かないでくれないか”と言う歌詞が耳に入ってくる頃にはもう、ステージが霞んでよく見えなかった。
彼らの咆哮と今の言葉。「ウォーウォー!」と言うコーラスを「一緒に」吠えることができた私達は、誰よりも強かった。例え、それがライブハウスを逃げ場にしている負け犬だとしても。“死んでくれないか”と吠える小関は狂気に満ち溢れて、まるで弱った犬が必死に威嚇しているかのようだった。

この曲が鳴らされる頃には、窓の外はまだにわか雨だったのだろうか。「激しい雨」。4人のキラキラと光る汗が雨のようで美しかった。客が曲に合わせながら突き上げる拳を見て、間違いなくここが今世界で一番アツい場所だ!とか、臭い事を思ってしまう。

“どうやって君の事 振り向かせたらイイの?”
ありがとう、と叫びながら演奏されたのは「パブリック」。
きっとずっと、Benthamはこの曲と共に在り続けるのだろう。後の発表も含め、改めてそう思わされる。
 

突然 シン、と静まり返る。暗闇から聞こえるのは、ピンと芯のある強いギターの音。そこから広がるドラマチックな音色。
これがGOLD RUSH TOUR本編の最後の曲となった。
今回引き下げたアルバム、MYNEのtrack-10から
「夜な夜な」。

映画を見ているようだった。最後の最後、たった1本のギターを掻き鳴らしながら、たった独りステージに残された彼を見て、私はそんな感覚に陥っていた。
エンドロールが流れている中に、真の「ロックバンド」を見た気がした。

私はこの曲の、“月灯りは遠い” と言う歌詞がとても好きだ。
と言うより、ひとつの音に、一つの想いが乗っているこの曲がとても好きだ。
悔しさ愉しさ嬉しさ虚しさ。
強さも、隠し持っていた弱さも、優しさも、不器用さも。
空っぽの部屋に、全てがある気がして。
この曲のサウンドになにもかもが袋詰めされている気がする。

この曲の最中、須田、辻、鈴木と順番に、何も言わず、静かに去ってゆく演出だった。
私は今回、そこにグッと押し寄せる「何か」が確かにあった気がした。

ふと、夜中に感じる孤独や喪失感。そんな情景が目の前で精密に再現されているような気がして、何故彼らがこの光景を知っているのだろう?ととても不思議な気持ちになった。
もしかしたら、「自分だけ」が見ていると思い込んだ世界は、他の人にとっても「自分だけ」の世界であって、
「孤独」と言う言葉はそれを表しているのかもしれない。

孤独は人間の象徴。大きなステージにポツンと、独りとり残されたフロントマンは、しばらくの間ギターをただただ掻き鳴らしていた。緊張感は最後の最後まで解けることを知らないような顔をしている。
静かに去っていったあともまだ残る余韻。
それがふわっと消えた瞬間、フロアは鳴り止まない拍手に包まれた。

私は、俯いた顔を暫く上げることができなかった。
 

アンコール。
メンバー4人がニコニコしながらステージ上へ。
今回のツアーのグッズを持ち前のキレの良さで紹介する。

と、ここで重大発表が2つ!
(重大発表のフリップがあまりにも小さく見えづらくて、なんか良かった。)

・2019年11月22日(いい夫婦の日)に東京キネマ倶楽部で「東京パノプティコン 〜Re:Public〜」と題したワンマンが決定。
・それに伴い、冬にBentham初のベストアルバム「Re:Public 2014 – 2019 」のリリースが決定。

と、CDデビュー5周年に相応しいとてもボリューミー且つ、嬉しいお知らせ。なんと言っても「リ パブリック」と言う言葉遊びは、ファンにとって堪らないものだ。こちらも楽しみに続報を待ちたい。

話が一段落したところでメンバーは演奏モードに。
ギターの音が鳴る。

アンコール1曲目は「HEY!!」。
「メンバーの名前わかりますか!」とギター須田が「オゼ、スダ、ツジにターカシでBentham!」と言う懐かしのコールアンドレスポンスをオーディエンスへ投げかける。
どんどん加速していく盛り上がりにニヤニヤを隠せないメンバーに、「HEY!!HEY!!HEY!!」と言うコーラスもバッチリ息を揃えたフロア。ここでこの曲を入れてくるセットリストの構成が個人的にとてもアツかったし、最高に楽しい!と言う感覚は久々だった。

一拍置いて鳴り響くシンセの音。
渾身の1曲、「Bentham GOLD RUSH TOUR 2019」最後の締めくくり、「MIRROR BALL」。
ハンドマイクでステージを縦横自在に彷徨い踊り狂う小関と、ちょっぴりアダルトなサウンドに合わせてノるメンバーの表情。マイクのシールドにさえ色気を感じる構成の巧みさ。とてもテクニカルで美しく、全員30代に突入したという事もあり大人の色気・フェロモンが爆発したステージに。
ライブハウスに設置されたミラーボールが回り出すと、みるみるうちにオーディエンスがダンスフロアに変わっていった。

「ありがとう、Benthamでした!
これからも宜しくね。」
「また会いましょう!」
歌い上げると同時に優しくそう言いながら去っていった。
この時の4人の幸せそうな顔が忘れられない。
 

過去最大25本と言うツアーを駆け抜けたチームは、確実に強くなっていたし、またひとつ大きくなって、魅力たっぷりの素敵なロックバンドになっていた。

バロメータがギリオーバーするほどのボリュームだったのに、あっという間に終わってしまって、なんだか、祭りのあとの寂しさがある。

外に出ると、これはもう仕込みなのか?と思うくらいのタイミングで雨が降り出した。
いつもなら嫌な気分になるはずなのに、この時何故か嫌な気分で傘をさした記憶はない。
確かに覚えているのは、去年のツアーファイナルの日も同じだったということ。
そして、思い出に残っている雨の日は、いつも傍にBenthamがいるということ。
 

本当にBenthamらしくて良いツアーファイナルだった。
そしてなにより、改めてもっと沢山の人を振り向かせて、沢山の人のハートを撃ち抜いて欲しいと思えた。

急ブレーキは厳禁!
これからもずっと安全運転で、
止まることは知らないままで。

文字の通り、宝物みたいな日。
Bentham GOLD RUSH TOUR 2019、これにて完結。

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