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黄昏インザスパイと私

その涙に理由は?~UNISON SQUARE GARDEN15周年に寄せて~

湧き上がる2万5000人の観客、普段は絶対にやらない野外の大きな会場。
だが、そこにはいつもと変わらないUNISON SQUARE GARDENの姿があった。

2019.7.27
UNISON SQUARE GARDEN結成15周年を記念したスペシャルライブ
「プログラム15th」 大阪・舞洲スポーツアイランド 太陽の広場 特設会場

特別な演出を一切せず、いつも通り、どこか誇らしげな顔で26曲を演奏した彼らの姿に私は、この記念すべきライブに立ち会えたこと、UNISON SQUARE GARDENを好きになれたことを誇らしく思った。

私がこのロックバンドに出会ったのは、中学3年生の夏のことだった。進路に思い悩んでいたある日、塾の友人に貸してもらったCDに入っていて何気なく見てみたDVDの、名前も知らないロックバンドのライブ映像に衝撃を受けた。青い照明に照らされた3人が女声の静かな音楽と共に入ってきて、定位置につく。私がそれまで想像していたロックバンドのライブとは全く違う光景がそこにはあった。そんな中、始まった曲が私の人生を変えた。ボーカリストだけを映しだす照明、彼が弾き語るように、こう歌い始めた
「今日が辛いから明日も辛いままだなんて思うな」
受験勉強に追われて苦しい時期にこの歌詞は私の心に大きく突き刺さった。
その後も、
「止まれない なんて 焦ってる君に歌うよ」
「ここでもう終わるのか ここからまた始めるか」
など静かに力強く歌われた一つ一つのフレーズに、私は引き込まれていった。当時は題名も知らないこの曲が強烈な印象と共に私の心に残った。
そんな曲もあっという間に終わり、「ようこそ!」のMCと共に鳴らされた、今までとはうって変わった激しいロックサウンド。研ぎ澄まされた高音にノリのいいメロディー。私の感情は激しく揺さぶられ、終始圧巻され、あっという間に2時間がすぎた。あまりの衝撃にしばらく動けなくなった。こんなにカッコいいバンドがいるんだ。音楽ってこんなに楽しいんだ。今まで感じたことのない心地よい衝撃に私は浸った。

それから友人にバンド名を聴き、その一曲目が「黄昏インザスパイ」という曲であることも知った。そして、私は人生で初めてその曲が収録されているアルバム「Catcher In The Spy」を購入した。CDショップに行き一つ一つの曲にわくわくしながら聴いたあの感情は一生忘れないだろう。UNISON SQUARE GARDENを好きになるのにそう時間はかからなかった。受験勉強の合間を縫ってCDを集めた、音楽を聴くことが毎日の最高の楽しみになっていった。そんな折に、彼らがツアーで黄昏インザスパイを演奏しているというのを、その友人から聞いた。だが、そのツアーは全日程がちょうど受験期間中で、ライブに行くのはあきらめざるを得なかった。それでも私はその曲が大好きだったし、毎日繰り返し聴いていた。

ライブに行かずとも彼らの音楽と絶妙な言葉選びはイヤホンを通して私の耳に確かに届いた。

君は君のままでいて 僕は僕の王冠を! (I wanna believe、夜を行く)
感情は何通りもあるけど ただ 自分のためでいい(シャンデリア・ワルツ)
間違ってたって間違っちゃいないよ(23:25)
キレイにメッキ塗りたくって 汚いところ見せないで お涙頂戴彷彿 って ふざけんなよ
(kid, I like quartet)
今世紀最大の ってあおってる割にはちっとも 俺には期待はずれだな
(ワールドワイド・スーパーガール)
どれほどのさ ヒントを貰っても 結局、自分次第 思い通りに行かない 沢山あるでしょう (UNOストーリー)

世間で売れている、いわば「正解」な歌詞ではない。嘘のない多彩な言葉一つ一つが確かに私の心を押した。苦しい思いをたくさんしたが、そんな彼らの音楽に励まされ続けた私の受験は無事成功することができた。

受験が終わってからは、ファンクラブにも入りたくさんのライブに行った。
ボーカルの斎藤宏介はライブの冒頭に必ず「自由に楽しんでいってください」と言う。彼らのライブにルールはない。手を挙げたい人は挙げればいい、座って楽しんでもいい。煽りも一切ない。そこにあるのは「私」と3人の世界だ。そんな誰もが楽しめる空間が大好きになった。彼らはファンとの関係を常に意識し、“ちょうどいい温度感”であろうとした(さわれない歌)。ホール、ライブハウスから幕張メッセ、横浜アリーナに至る大きな会場まで、彼らの音楽がたくさんの人に認められ、大きくなっていくのがどこか誇らしく、それでもスタンスは全く変えずに私を楽しませてくれる彼らの姿が見たく、忙しい合間を縫ってライブに通った。それでも、私が行ったライブで黄昏インザスパイが演奏されることは決して無かった。

そんな中迎えた、プログラム15th。気づけば、いつしか私も大学生になっていた。
ベーシストでほぼ全曲の作詞作曲者、セットリストも考えている田淵智也はブログでこのライブについて、「僕の好きなロックバンドの結成15周年イベントを派手にやろうと一番面白い仕掛けを考えた。普段ならこんなことはしない。たまの特別営業だ。大いに油断して大いに祝われる覚悟であれこれ準備してきた」と語っていた。どのようなライブになるのか予想もつかなかったが、いつものように、黄昏インザスパイが演奏されるのをどこか期待している私がいた。
期待と楽しみが混在するなんとも言えない感情でライブの開始を待つ中、いつものようにSEであるイズミカワソラさんの絵の具が流れてライブが始まった。
「1人きりじゃ行けないトコへ 行こう」という歌詞が入る普段は流さないフルバージョンを流す、周年ライブならではの演出と、彼らが歩んできた歴史に思いを馳せると思わずぐっとくる。注目していた一曲目は誰が予想できただろう、初披露のお人好しカメレオンだった。
「お人好しカメレオンじゃないだろ 君だけのために君はいるんだよ」
今まで一回も演奏してこなかった曲を、このライブの一曲目、さらにアカペラアレンジというのが何とも彼ららしい。それから繰り広げられたのはいつも通りの彼らのライブだった。「ようこそ!」の声と共に聴きなじみのあるイントロが流れ、会場は一気に歓声があふれる。普段ならライブ終盤に演奏されるシャンデリア・ワルツ、見えない魔法にかけられた会場は先ほどとはうって変わって熱気が高まる。その後も、シングル曲多めの構成で、たたみかける。「8月、昼中の流れ星と飛行機雲」では、突き抜けるような綺麗な歌声に台風で心配されていた空からのぞいた、青空を思わず見上げたのはきっと私だけではないだろう。ライブの定番曲からそれまで演奏されてこなかった珍しい曲まで、いつもよりどこか調子の良さそうな3人によって立て続けに演奏されていった。

ライブ中盤、10周年を祝う形で作られた、「プログラムcontinued」を15周年用に歌詞を変えて再リリースした「プログラムcontinued(15th style)」が演奏された。彼らにしては少し珍しい「今日くらいは祝ってくれないかな」という直接的な歌詞や、リメイクされても変わらずに「一瞬も飽きちゃいないからさ 人生を譲る気がないんだ」と歌うこの曲は、現在のUNISON SQUARE GARDENの姿を表しているようで、記念日にふさわしい曲だ。曲が終わると、長めの拍手とともに、客席から「おめでとう」という声が自然に沸いていた。UNISON SQUARE GARDENを好きになって良かった、心からそう思えた瞬間であった。

11周年の武道館ライブでは、「プログラムcontinued」がちょうど中間に配置されていたため、私は今回もこのタイミングでMCがくると予想していた。また、お人好しカメレオンが演奏された時点で、テイストが少し似ている黄昏インザスパイが演奏されることは少し諦めかけていた自分がいた。そんな夕暮れの黄昏時、西日がうっすら差し込む中で、4年前初めて聞いて、それからずっと聞き続けたあのイントロが鳴り出した。理由は分からないが、目からは自然に涙があふれてきた。受験を乗り越えたこと、辛いこともこの曲を聴いて乗り越えてきたこと、この4年間の様々な光景が一気にフラッシュバックしてきた。何度も聴いた優しい歌声は、その全てを肯定してくれているようで、涙が止まらなくなった。肩を震わせて前が見えなくなるほど泣いた。まさに「震え出しちゃって 動けなくなった 言葉にできない現実感情」という歌詞のようだった。正直泣きすぎて後半の記憶は全くない。あっという間に4年間待ちわびていた曲は終わっていった。私が唯一共感できなかった、「harmonized finale」の「理由のない涙もあるけど」という歌詞の意味がその日に、ようやく分かった気がした、それまで私は気持ちが動かされて泣くという経験がなかった。本や映画を見て泣いたこともなければ、部活の引退試合も悔しさより、絶望感が大きく泣けなかった。だからこそ、まず泣くという感情の意味も分からず、理由のない涙なんてないと思っていた。しかし、イントロが流れて自然に出てきたあの涙は、確かに「理由のない涙」であり、「オーケストラを観にいこう」の言葉を借りれば、あの感情の高鳴りに嘘はなかった。続けるように演奏されたのは「春が来てぼくら」、何気ない日常を優しい言葉選びで紡ぐこの曲は私が泣き止むのを許してくれなかった。まさかこんなに泣いてしまうとは自分でもびっくりだった。

そこからは本当に圧倒的だった。疲れてくるはずの終盤にも関わらず、一曲目とまるで変わらないボーカル、音圧が体にまで響くドラムソロ、会場の誰よりも音に乗り、音楽を楽しむベーシスト。「ロックバンドは、楽しい。」まさにそれを体現するような最強の演奏だった。

「お疲れ様でした!ラスト!」のMCで始まったのが彼らの1stシングル「センチメンタルピリオド」。曲の一部と言っても過言ではないあのセッションで空気を作るのは彼らだからなせる業だ。ライブで最後に投げかける言葉が、ありがとうでなく。お疲れ様でした、というのがとてもいい。それは、途中のMCでも触れたこのライブを作り上げたスタッフの方や15周年お世話になった様々な人に向けられた言葉なのかもしれない。あの状況でその言葉が出せるのはファンに媚びない彼らだけだろう。久しぶりに見る田淵のハンドスプリングと長めのアウトロ、いやでも終わりを感じさせる演出に私は感慨深い気持ちになった。UNISON SQUARE GARDENに出会えたこと、好きになれたことが本当に誇らしく感じた。

「アンコールはやりません」そんなMCを聴いても、もっと彼らの音楽を聴いていたいと思ったファンは多いはずだ。センチメンタルピリオドが終わり、はけていく彼らに盛大な拍手が起こった。彼らがいなくなってもその拍手が鳴りやむことはなかった。そんな矢先、大きな音が鳴った。一瞬何が起きたのか分からなかった。顔をあげるとそこには花火が上がっていた。それまでの15年を振り返るように、一発ずつ、それに気が付いて会場からは自然にカウントダウンが始まる。自分たちがステージから去ってから花火をあげる演出はいかにも彼ららしい。
「ロックバンドに祝福を」そんなサブタイトルがついた、プログラム15thは最高の形で幕を閉じた。新旧の名曲たちが散りばめられた、怒涛のライブは本当にあっという間に終わっていった。特別な演出は一切なし、演奏だけで最高のバンド体験を見せてくれた。後悔が残るとすれば、お祝いをしに行ったのに圧倒的なものを見せられてそれどころじゃなかったことぐらいであろうか。やっぱり、本当にすごいバンドなんだというのがライブを終えての率直な感想だった。あの日、UNISON SQUARE GARDENと出会った瞬間から、私の中で事件ならとっくに起きていたのだ。

花火が上がった後にモニターに映し出された言葉は
Thank You 15th Anniversary!See You Next Live!
であった。「See You Next Live」徹底的にライブにこだわる彼らを象徴するような言葉に私は彼らがライブをする限り、何度でも足を運びたいと強く思った。心象風景が一変して、彩りが溢れる現象をまた体感したい。

斎藤宏介は今回のMCで自分たちを好きでいてくれる人を大切にする方法として
「これからも自分のために音楽を続けていく」と言い放った。

来る20周年へ向けて、彼らは自分たちのために音を鳴らし続ける。私は誰も文句なんかつけらんない、誰が何と言おうと絶対にカッコいいと自信をもって言える、そんな彼らの完全無欠のロックンロールにこれからも寄り添い続けたいと思う。彼らは、この先もずっと相変わらず良い曲を作って、良いライブをして、揺るがないスタンスで私たちを驚かせてくれるだろう。どうせUNISON SQUARE GARDENのことだから。
15周年おめでとう

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