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Rockのカタルシスを世界中に伝えた偉大なるKISSを観届けよう

知的な戦略性と優れた音楽性でエンターテイメントに徹したKISS

You Wanted The Best!? You Got The Best!
The Hottest Band In The World, KISS!!

中年RockファンにはあまりにおなじみのKISSののライブのオープニングアナウンス。​
大規模なステージセットから白塗りメイク、30センチの厚底ブーツ(アムラーで厚底ブーツが流行った時、KISSみたいだと思ったのは俺だけだろうか)、宇宙服のような衣装のメンバーが登場。まるで、宇宙からきたRockスターのようだ​。

そしてバカデカイ音でキャッチーで1度聴いたら誰もが口ずさむことができる「Detroit Rock City」のイントロのギターリフ。​
観客席にはKISSARMYといわれるメイクをしたファンが熱狂し、会場は興奮の坩堝とかし、異次元の世界にきたような錯覚にとらわれる。​
 

【どこなんだここは、俺は今どこにいるんだ。​】​
 

ギターソロってこんなに長く演奏するのか・・・ギターが火を噴いている。

ウーウーウーとサイレンの音が鳴り響く。Fire Houseというナンバーらしい・・・舌の長い気持ち悪いメンバーが松明を持ってくる・・・見栄をきる。
そして、突然、口から火炎放射。​

不気味なイントロで始まったナンバーで、やはり舌の長いメンバーが口から血をだしている。腹に響く強烈なビートにのって、不気味なナンバーが演奏される​

観たこともない、やたら、巨大なドラムセットがせり上がり、ドラマーがすさまじい勢いでドラムを長時間1人で叩く。ドラマーは後ろで演奏しているただの太鼓じゃないのか、凄まじい音だ。すごい・・・​

40数年前(調べると1977年の5月ということだから42年前)に放送された、某国営放送で不定期に放送されていたヤング・ミュージック・ショーのKISSのステージを観た僕の受けた衝撃である。​
ラジカセを手に入れ、中学の先輩にテレビのイヤホンラインとラジカセのマイク入力ラインを繋げると雑音なく録音できるということを教えてもらった僕が初めて、ライン録音をした番組だ。​
Rockに興味を持ちだした田舎の少年たちは、学校で、この放送のKISSのド迫力なライブについて唾を飛ばして話をし、その話題は尽きることはなかった。​
僕は、このカセットをその後何度聴いたかわからない。カセットは失くしたが、演奏曲目は、ほぼ、暗記している。​

この文章を書く前に、たった4人であるが、大学時代の友人にこの番組を観たことがあるかと聞いてみた。

1人観たと答えた友人がいた。
彼と僕は洋楽マニアである。

僕と同世代でこの番組を観た人のその後の人生(ただのサラリーマンなのでそんな大げさなものではないが)の趣味趣向を大きく変えるだけのパワーがKISSのライブにはあったのだ。​
同感する人は多いと思う​。
 

そのKISSがいよいよその歴史に幕を閉じる。
最後のツアー〖END OF THE ROAD WORLD TOUR〗
最後の来日がアナウンスされた。ついに長いKISSのライブの歴史に幕が下りる。

Queenに夢中でRockに目覚め、レコードを聴きまくっていた僕は、その放送で、Rockのライブを初めて観て、KISSの圧倒的な迫力、パワーに完全にノックアウトされた。
それまで経験した最高のカタルシスだった。
現在まで、何本もの生のRockのライブを観てきたが、あの日の感動は生涯忘れることがないだろう。いつかRockのライブを観てみたいと心に固く誓った。そして益々、僕は、Rockにのめり込んだ。

その後、様々なRockを聴き込み、King Crimson、Led Zeppelinを知り、PUNK、New Waveに影響を受けた。Rockを聴き込めば聴き込むほど、いつのまにかKISSの3分間の単純明快なハードロックサウンドは必要としなくなっていた。​
全盛を極めたKISSもDiscoサウンドを取り入れた「I Was Made for Lovin’ You」はヒットしたものの、1980年 POPなぶ厚いゴージャズなサウンドとを取り入れた『仮面の正体Unmasked』は全く面白くなく、完全にKISSへの興味は薄れてしまった。
メンバーの不仲も表面化し、セールスは停滞し、KISSは低迷した。​長らく、KISSは僕の趣味の範疇外であった。

低迷時期には、素顔になったり、ヘヴィメタルを追求した時期もあったが、2000年前後にオリジナルメンバーで再結成し、初期イメージのそのままにツアーを敢行した頃から、KISSはライブバンドとして全盛期の勢いをとりもどし、その後は、メンバーチェンジはあったが、全盛期のステージそのままに活動している​

長らくKISSと触れていなかったが、2013年の武道館コンサートをTVで観て、僕をRockに夢中にさせた、KISSのライブいつか観たいと思った40年前のあの日の興奮が鮮明に蘇った。

そして、前回の来日、2015年、東京ドームでKISSのライブを初めて観た。

同じである。

演奏ナンバーは勿論異なるが、オープニングアナウンスも同じ、オープニングナンバーは「Detroit Rock City」、ステージセットは更に大規模になり、メンバーも入れ替わったが、そのアトラクション的な演出も同じである。​
1977年の初来日とほぼかわらない。それを僕を含め観客は期待し、KISSは完璧に応えて魅せた。​

暗記するほど聴いたブレイクした初期のライブアルバム、1975年 『地獄の狂獣 キッス・ライヴ Alive!』1977年 『アライヴ2 Alive II』の時代と変わらない​。
そのステージは、シアトリカルであるが、David Bowieのような文学的、刹那的なシアトリカルさとは異なり、アメコミ的、ハリウッドの大作映画のようなわかりやすいヒーロー的な演出だ。

全盛期のアントニオ猪木が劣勢のなかで、【なんだこの野郎】と叫び、見栄を切り、ナックルパートを繰り出し、延髄切り、バックドロップ、そしてジャーマンスープレックスで完全逆転勝利するあの熱狂、カタルシスである
Rock ‘n’ Rollと数えきれないほどシャウトするPaul Stanley。熱狂している自分
 

ここはどこだ。俺は何歳なんだ。​
 

KISSは、40数年前から何ら変わっていないのに、不思議なことに、懐かしいという感覚が微塵もない。そして不思議なほど、ナツメロバンドにならないのだ。

KISSは、中学生の僕、そして、50歳を過ぎた僕の前に、等身大でなんの違和感もなく出現してしまうのである。40数年という時間の経過がKISSがステージに登場した瞬間に消え去ってしまう。​

普通に考えれば、40数年前と同じであるならばそれはマンネリであるし、停滞である。KISSもその停滞を感じていたからこそ、売れなくなった時期に、そのマンネリを打破しようと試行錯誤していた。しかし、それは成功しなかった。そして、オリジナルメンバーとの再会で原点に戻ったときにKISSは再びライブバンドとして世界的なメインストリームに復活した​。
長期間活動しているバンドであれば定番曲は増える。実際、Queen、The Rolling Stonesなどのロックレジェンドも定番曲中心にライブを展開している。長いバンドの活動期間の中で音楽的変化があり、選曲はキャリアの全体を網羅するものであり、様々な世代がその時代時代の思い入れのあるスタイルのナンバーを楽しむ​
しかし、KISSは前述の通り、ライブのナンバーはキャリアの初期に集中し、僕にとっては新曲と思える曲を数曲演奏するが、その数曲も40年前のイメージを踏襲したナンバーでスタイルに変化はない。サウンドも歌詞も基本は変わらない同じスタイルだ。​にもかかわらず、現在でも若い多くのファンを新たに獲得している

これはいったいなんなのだ。不思議なバンドである​

KISSは音楽的にも優れたバンドである。1976年 『地獄の軍団 Destroyer』は、コンセプトアルバム的な音作り(歌詞にコンセプトがあるわけではない)に成功している名盤だ。著名なプロデューサーBob Ezrinを起用し、SEをなど仕掛けの多い音、それまで、うすぺっらな音がぶ厚くなり、ストリングスを入れ、イメージを覆す「Beth」という名バラードもヒットした。
KISSは時代の音に敏感であり、その時代の音を取り入れているし、ソロアルバムを聴けば、バラード志向のPaul Stanley、POPな音楽性を持ったGene Simmonsという二人のメインソングライターの多様な音楽性がわかる。​

KISSがThe Beatlesの熱狂的なファンであり、The Beatlesを目指したことは有名なエピソードだ。文学的な歌詞を表現することも可能な知的なバンドであり、音楽的にもPOPなメロディ、斬新なサウンドを作ることができる力量、才能を持ち合わせたバンドである。

しかし、キャリアを通じて、その音、歌詞に知的な要素を垣間見ることがない。それは、敢えてそれを封印したのである。
KISSはThe Beatlesを筆頭に偉大な先人からの影響、歌詞の文学性、サウンドの斬新さをすべて消化、昇華したうえで、彼らにとっての最も重要だったRockの熱狂、衝動を突き詰め、めることを選択した。

KISSサウンドの最大の魅力は、ギター2本、ベース、ドラムというThe Beatlesスタイルの基本のRockバンド構成でステージはメンバーのみで演奏し、サウンドに変化はないが一度聴いたら忘れらないキャッチーなギターリフ、POPな優れたメロディである。
その楽曲にパワーがなければ、ビジュアルだけでは、多くのファンをこれほど長期間魅了できないのは言わずもがなである。

​デビューまで長期間かかったKISSは、売れるためにあらゆる試行錯誤をしたという。
多様な音楽性を持ちながらも、あくまで、ステージではキャッチーなギターリフ、POPなメロディによるバカでかい音の単純明快なハードロック、シリアスさとは無縁なクルマ、酒、女、ロックンロールというRockの原点ともいえる歌詞、ド派手なメイク、衣装、大がかりなステージセット、数々の演出。​
ギミックであるスタイルは敢えて選択したスタイルであり、パーティーエンターテイメントに徹したKISSは売れるための戦略性を明確に持っていた。​アメコミなど様々なメディア戦略を用い様々なメディアで戦略でファン層を広げていった。これは、ロックバンドのメディア戦略の先駆けだ。
売れるということを徹底的に追求し、他のバンドと徹底的に差別化し、更にRockというカテゴリーだけでなく、様々な他のエンターテイメントをも飲み込み、KISSというスタイルを確立したのである​。

その徹底ぶりがKISSの偉大さである。​
非日常性のRockのカタルシスを伝え続けるというKISSの哲学である。
KISSが40年前と変わらないのは、変化出来なかったのではなく、変化の必要がなかったのだ。普遍的なパワーがあり、ファンをRockに熱狂させ、そしてなによりKISSのファンに引き込むKISSにしかできない唯一無二の表現であり、KISSというジャンルを確立したと言い切ってよい

KISSは、そのスタイルがあまりにコミック的であり、わかりやすく、文学性も音楽的な斬新さないが故に、活字になりにくく、その評価が分かれてしまう
しかし、原理原則でいえばRockはエンターテイメントであるから、その評価はファンのものだ。

KISSは2014年にRockの殿堂入りを果たしているが、そのプレゼンターはTom Morelloである。このスピーチは感動的だった。
以下引用する。

Tom MorelloのKISSのロック殿堂入りのスピーチ
《KISSはいつも評論家からはバカにされ続けていましたが、KISSは評論家のためのバンドではなく、ファンのためのバンドでした。
シカゴの凍える朝、人生で初めてのコンサートのために、KISSのライヴ・チケットを買う長い長い行例に並んでいました。(中略)
その日、私が体験した2時間のライヴは、とってもエキサイティングで、興奮するもので、音が大きくて、とてもスリリング時間でした。
ロックの殿堂に入るか入らないか、よく議論になることがありますが、私が思うに、その判断基準はとっても簡単です。「インパクト」、「影響力」、そして「最高なこと」です。KISSは紛れもなく、この要素を持っているバンドです。(以下省略)》

僕は、Rockのコンサートに行くと、ステージを凝視し、音に耳を集中させ、歌うこともなく立ち上がることもほとんどしない。それは、僕なりのRockコンサートを観るときのこだわり、スタイル、生意気なことを言うと流儀である。そのステージに全神経を集中する。歌ってなんていられないのだ。

しかし、KISSだけは、「Detroit Rock City」のイントロで立ち上がり、「Rock And Roll All Nite」でシャウトするのだ
【アイウォナロックンロールオ-ルナイトアンドパーティエブリディ】

僕は中学生のあの日とかわらずKISSに熱狂する。​
KISSがRockのカタルシスを僕に教えてくれたのだ。​

40年前、3年前、そして今回と全く変わらないKISSがいる。

You Wanted The Best!? You Got The Best!
The Hottest Band In The World, KISS!!

タラタラタラ・・・・のイントロ。
そして、そこにはRockに今でも熱狂している1ファンの僕が大声で声を張り上げ、腕を振り上げているのだ

エンターテイメントに徹したKISSに僕は敬意を表する
ありがとうKISS。40数年前、貴方たちのライブで僕は未だにRockに魅了されているよ

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