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「Missing」の意味がわかった夜

物語を持たない私がフジロックで初めてELLEGARDENを見た

2019年7月26日、苗場。生まれて初めてELLEGARDENのライブを見た。

前日21時前に仕事が終わって急いで帰宅し、カバンにいつものフェス参戦物品を詰めこむ。カッパやっぱりいるよなあ、なんて天気予報を見つつ考えながら、右手には東北ライブハウス大作戦のラババンをつけた。
日付が変わる少し前、最寄りの駅前に友人と集合してシャトルバスに乗り込む。本当なら一泊して翌日は新潟の地酒でもゆっくり堪能したかったのに、私も友人もものぐさな性分のせいで、夜行で向かって夜行で帰ってくる弾丸スケジュールとなってしまった。(ちなみに会場で高千代が飲めた。おいしかった!)
となりで早々と熟睡する体勢をとる夜勤明けの友人を横目に見ながら、ついにエルレに会いに行くんだなぁとぼんやりと考えていた。

「楽しみがないならフジロックでも行かへん?」と友人に誘われたのが今年の3月。その時の私は些細なきっかけをこじらせて休職していたさなかで、4月からの新天地での再スタートを前に少しナーバスになっていた。
フジロック、の文字にすぐさま思い浮かんだのは初日のヘッドライナーとして発表されていたELLEGARDENの名前だった。
私がエルレを聴き始めた頃にはもう休止してしまっていたから、あの4人のライブは未だ一度も見たことがないずっと大好きなバンド。活動再開したことはもちろん知っていたし死ぬほど嬉しかったけれど、2018年はとにかく自分のことに精一杯でライブに行こうとも思えなかった。
フジロックでエルレが見れるなら行きたいけど、遠いし、7月の自分がどうしてるかも分からないし……そう思って一旦返事は保留した。一晩考えたすえ、「行く」と返事をした。保留したわりに案外迷わなかった自分に驚いたけれど、本当のところを言うと、これが最初で最後のエルレになるかもしれないと思ったからだった。

そんな友人とバスに揺られること約9時間。到着した苗場スキー場は薄曇りで、時折吹く山間の風がひんやりと心地良い……のも束の間、思わず笑ってしまうほど長蛇のグッズ列に並んでいるあいだ、梅雨明け間近の太陽がギラギラに照りつけたり、気まぐれに降る小雨に大慌てでカッパを着たり、早速山の天候に翻弄された。これがフジロックか…と恐れおののく初参戦2人。エルレが始まる頃には雨は本格的に降り始めていて、思わず「寒っ」と体を縮ませてしまうほどだった。

18時50分が近づく。雨脚はどんどん強まって前髪が顔に張り付いていた。普段あまり前には行かないけれど、今日ばかりはステージの近くにいなかったことを後悔する気がして、勇気を出してどんどん膨れていく人の群れのあいだに滑りこんでみた。
みんなエルレのTシャツを着ている。エルレのタオルを持ってエルレのラババンをつけている。あ、RIOT ON THE GRILLのTシャツ、当時のツアー行かはったんか、ええなぁ。そんなことを思って、ふと自分はなんの思い出も持ってきていないことに気づいてドキッとしてしまった。
ずっと曲を聴いてはいたけれど、でもそれだけ。毎年9月7日のブログを心待ちにしていたとか、2008年のあの日から復活するまでエルレのグッズは身につけないようにしてたとか、エルレが青春だった人たちのエピソードをたくさん見た。そういう人たちが2018年5月10日、街に帰ってきた彼らに「お帰り」と笑って泣いているのが心底羨ましかった。
そういうのを気にするのも馬鹿みたいだとは思うけれど、きっと私は世代で言うとエルレど真ん中ではない。実際これまで周りにもエルレが好きという人は少なかったし、エルレについて誰かと語り合うなんて機会もほとんど無かった。
だから、自分が今ELLEGARDENのライブを見てどんな感情になるのかふと分からなくなってしまった。もしかしたらビックリするぐらい冷めてしまうかもしれない。こんなに前に来てしまって周りについていけるか分からない。完全にしょうもないことばっかりを考えてしまっていた。
でもFire Crackerの一音目がその場に鳴り響いた瞬間にそんなのは全部どうでもよくなった。

ずっとずっとずっとイヤホンの中でだけ流れていた音楽が今、目の前で、生きているひとたちの手で演奏されている。そういう当たり前が当たり前に起きているということがにわかに信じられなかった。
茫然としているような逆に冷静なような不思議な感覚でステージを見つめていたら、一拍の呼吸のような間のあと、Missingが始まった。
ウブさんのギターのフレーズが聴こえた瞬間、何かを考えるより先に鳥肌が立って涙が出ていた。
Missingが初めて聴いたエルレの曲だった。CDコンポで、ウォークマンで、iPhoneで、デバイスが変わっても絶対にいつでも聴けるようにして、本当に途方もないぐらいに繰り返し何度もあのメロディーと歌詞を口ずさんだ。
高校受験、専門学校、国家試験の勉強、仕事が上手くいかなかった帰り道、つらかったりしんどかったりする時には「We’re Missing」のフレーズがいつも当たり前みたいな顔して寄り添ってくれていたのを思い出して、涙が止まらなかった。ボロボロに泣きながら、本当に嬉しくて楽しくて仕方がないという気持ちだけで、彼らと一緒に大好きなMissingを歌った。

ウブさんが「精一杯演奏します」と嬉しそうに息を切らす姿も、高田さんが思いきりコーラスを叫んでいる姿も、高橋さんがキラキラした目でメンバーと客席を見つめる姿も、細美さんがあんなに優しく笑う姿も、私は知らなかった。ライブに行かなければ知ることが出来ないこの感覚を、この日この場所で初めて体感できて本当によかったと、あの70分のあいだずっと思っていた。
エルレを見るのが初めてでも、あの日披露された17曲すべてに思い出が詰まっていたこと、私は私が思っていた以上にエルレが大好きだったことに初めて気づいた。それってめちゃくちゃ幸せなことだなぁと思う。

細美さんはあの日「物語なんて関係ないのかもしれないけど」と何度も口にして、11年ぶりのフジロックのステージにかけた思いを語っていた。
私はこの11年間についてエルレと共有する物語を持っていない。でもそういうことじゃないんだなと今は分かる。あのステージを見て、初めてエルレのライブに触れて、またエルレのライブに行きたいと思った。自分がELLEGARDENのライブを見てどんな感情になるかなんて、そんなシンプルで普遍的な気持ちだけだった。

エルレを初めて聴いた中学生の私は「Missing」が行方不明者という意味を持つ単語だと知った。
23歳の私は「Missing」を「会いたいと思う」と訳したい。
「これから先はガキの頃には思いつかなかったような新しい夢を一緒に見よう」
細美さんの言葉と4人の表情はこれが最初で最後のエルレかも、みたいな私のしょうもない心配とか諦めを見事にぶっ壊してくれた。
私はここから奇跡を起こし続けていくこれからのELLEGARDENに会いに行きたい。ELLEGARDENとの物語をこれから作っていきたいと思う。

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