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それは「私」の歌

[ALEXANDROS]Sleepless in Japan Tour と私の話

2019年06月16日。あの日から約2ヶ月を経た今、この音楽文という場を借りて、下書きとして私のPCに眠っていた文章に加筆しながらあの日に感じたことを綴ってみたいと思う。
 

あの日は、前日の降りしきる雨とはうって変わって真夏のような暑さだった。雨バンドと言われてしまうことがままあるこのバンドだが、この日ばかりは違った。晴れ渡る青空、真夏ではないかと錯覚させるような白い雲、少々やりすぎくらいの太陽の威力である。昨年11月にリリースされたアルバムを引っ提げた、自身最大・最長となるSleepless in Japan Tour ファイナル当日のことだ。

グッズを求め並ぶ人、OFFICIAL BARと銘打ったドリンクを求める人。グッズを身につけた人、人、人。この日を心待ちにしていた人たちの熱気で、会場周辺はふわふわとした高揚感が充満していた。かくいう私もその中の一人である。

開演予定時刻の18時を少し過ぎた頃、客電が落とされる。オープニングを飾る映像が流れ始めると、弛緩していた会場の雰囲気は一変。皆立ち上がり、待ちに待ったこの日の始まりに心を踊らせた。

アルペジオのコーラスに続く「R U READY?」の文字。言わずもがな楽しむ準備は万端だ。最初の曲はアルバムの始まりを飾る曲でもある、LAST MINUTE。約半年に及ぶツアーの完走に向けたカウントダウンの針が急速に動き始めた気がした瞬間だった。アルバム曲やライブ定番曲を織り混ぜつつ、表情豊かな楽曲が次々と繰り出されて行く。曲に合わせた演出や照明も相まって、一瞬にしてステージに釘付けになった。

MCが少ないことが多い彼らだが、この日は印象に残ったMCがいくつもあった。

「このツアーは、実質2年前から始まっていて…」

彼らはアルバム製作のためにNY・ブルックリンに渡った。現地の空気や考え方に影響を受けたというような話は、どこかのインタビューで見たことがある。
 

…そうか、もう2年になるのか。
 

思えばこの2年、私自身にも色々なことがあった。CDJで発表されたニューアルバムの発売、その後に発表されたライブハウスツアー。VIP PARTYをはさみ、アリーナツアーの発表。そして今回のさいたまスーパーアリーナ2DAYSの発表。段階的に様々な情報が解禁され、そのたびに心を躍らせていたわけだが、その間に私は大学3年生から大学4年生になった。

就職活動

その言葉がぼんやりとしたイメージから大きな壁となって現れてくる、まさにその変遷の時期である。次から次へと解禁される情報がうれしい反面、その分将来の選択が迫ってくるという現実が怖かった。

私は公務員試験を受けることに決め、3年生の春から大学とは別に予備校に通い始めた。

ゼミ、インターン、アルバイト、就職用の試験対策。目まぐるしく過ぎていく日々のなかで、8月のVIP PARTYを迎えた。あの感動は今もありありとよみがえってくる。そこで発表されたアリーナツアー。地元から程近い横浜アリーナ2DAYSの文字があり、文字通りすぐにチケットを申し込んだ。

人間、楽しみな予定があると辛いことも頑張れると思うのだ、本当に。苦しい時期が続き、正直昨年10月~12月頃の楽しかった記憶はほぼない。ようやく一段落ついたと思ったら、休む間もなく就職用の試験勉強を本格化させ、まるで受験生のような生活。私は大学入試も経験しているのだが、今回は将来の仕事に直結する分、重圧を感じていた。

ひたすら机に向かっていた。朝から晩まで自室にこもって勉強をし、気がついたら陽が沈んでいる日々が続いた。

3月の横浜アリーナ公演。正直行くか悩んだ。しかしせっかくとったチケット、行かない選択肢はなかった。アリーナの規模を生かした、しかしその規模をものともしないアットホームな雰囲気をも両立させるような、圧倒的なライブだった。

そして大学4年生になった。

そこからは怒涛の日々だった。正直何度も心が折れかけた。けれどその度に[ALEXANDROS]の曲を聴いては自分を奮い立たせた。
 

「やってやろうじゃないの。」
 

[ALEXANDROS]の曲は、いつでも私を強気にさせてくれる。

彼らの曲の歌詞には、生易しい励ましや安易な共感はない。いつだって自らの将来のビジョンを明確に見据え、己の足で人生を切り開いていくのだという力強さがある。
「うちらはこう考えるけど、君はどうするの?」
共感を求めず、意見の提示という側面が常に感じられる曲の数々は、聴いていてとても心地がよい。共感に溢れた現代だから、中には少々冷たいと感じる人もいるかもしれない。しかし、だからこそ曲を受け取る側の人間はその余白から自由にメッセージを読みとり、それぞれ「私」「僕」の歌とすることができると思うのだ。

「曲が世に出たら、それはもう聞いてくれる人のものだと思っている」
「ライブのときは時間を共有しているけど、ライブが終われば皆それぞれの日々を生きていくことになる。大事なのはライブが終わった後の時間。」

記憶がおぼろげで完全なるニュアンスで申し訳ないが、彼らはいつかこのようなことを言っていた。一見冷たいけれど、これが真理だと思う。どう生きていくかを決めるのは自分自身だし、結局最後に頼れるのは自分だけだ。
 
 

アリーナツアーの中で最も印象に残ったのは『Your Song』である。MV仕立ての映像をバックに歌う演出だ。女の子と、擬人化されたCDの物語。途中、就職活動がうまくいかない女の子の描写がある。

・・・初めてライブで涙が流れた。

たった数十分の面接で今までの人生が判断され、評価され、厳しい現実が突きつけられる。「君はうちには必要ないよ」という現実。あなたはいったい私の何を知っているのか。他の人のように派手な経験や経歴はないけれど、地道にこつこつとがんばってきた私の生き方は間違っていたのか?
振り返れば被害者意識もはなはだしいと思うけれど、当時は本気でそう思って落ち込んだ。

<世界中の誰もが敵でも/僕は味方さ>“Your Song”

Your Songの一節である。さっき彼らの曲には生易しい励ましはないと書いたけれど、この曲は今までとは一線を画していると思う。あくまでも擬人化された楽曲がそう思っているだけで、別に特段励ます意図が含まれているわけではないのかもしれないけれど。それでも。それでも、やっぱり私はこの曲に救われたのだ、誰がなんと言おうと。自身のおかれた状況と映像がリンクして、気づけば涙が頬を伝っていた。同じように応援歌として捉える人がいる一方、恋愛的な意味で捉える人もいるだろう。それぞれの人の思いを重ねて、聞いた人の数だけ様々な解釈があるのかもしれない。楽曲が持つ力はすさまじい。涙でにじんだ視界の先に見えたステージはとても美しかった。
 

「何があっても、[ALEXANDROS]は進み続けます。」
 

このツアーでは、メンバーの怪我など多くの困難に見舞われた。けれど中止という選択をせず、サポートを迎えるなどしてその時々の最高のライブを見せてくれた彼らは本当にかっこいい。大げさな話かも知れないが、彼らの姿を見ていると私も頑張ってみようという気になる。長い人生だから多少の困難はあって当たり前、むしろ困難があるからこそ人生は面白い、と。

<熱い言葉はどうも性に合わないみたいでむず痒いよ>“月色ホライズン”

思えば私の人生の重要な場面において、常に[ALEXANDROS]の曲がそばにあった。熱い言葉はなくても、背中を蹴っ飛ばしてくれるような力強さがある[ALEXANDROS]の曲が私は大好きだ。一生ついていきます!というほど熱くはなれないけれど、少なくとも今は私にとって大切な楽曲の数々。これから先何かの壁にぶつかったとしても、「私の歌」となった彼らの歌がそばにあれば、私はいつでも無敵になれる気がする。

<いつか僕に飽きても/時々口ずさんでね/I’ll be by your side because I am your song>“Your Song”
 

来年の春から、私は第一希望の職場で社会人としての道を歩き始める。

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