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2017年6月19日

鈴木尚樹 (49歳)
78
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

いまジョンレノンと忌野清志郎が天国でしていること

何故彼らは早くあの世に召されたのか

 世界中の人々が日本人と同じ生活をすると、地球は1.6個必要になるそうだ。現在70数億人の世界の人口は、2050年には90億人に達するという。そんな中、世界の食料の約3分の1である年13億トン(74兆円分)は、ゴミとして捨てられていて、日本でも年約500~800万トンと世界全体の食料援助量の2倍の食べられる食品を廃棄している。
一方で現在約8億5000万人(9人に1人)が飢餓に苦しんでいて、1日1.25ドル(150円)未満で生活することを余儀なくされている。7500万人の子供たちが学校に通えず、7億7600万人の成人が読み書きをできない。片や世界人口のわずか1パーセントを占める富裕層が所有する富の合計は、世界の残りの99%の人々が所有する富の合計よりも多くなっている。
気候変動も大きな国際問題となっている。地球の平均気温は、100年前に比べて0.5℃しかあがっていないのに、今後100年で最大6.4℃の気温上昇が予測されている。異常気象が世界各地で起こり、水害・台風・干ばつなど様々な災害が毎年起こっている。世界の水問題は森林の絶滅と砂漠化、そしてこれまた農業や食糧不足の問題に直結してくる。加えて生物絶滅の問題。恐竜の時代には約1000年に1種類くらいしか絶滅種がなかったのに、現在では1日あたり137種類の動植物や昆虫が絶滅しているそうだ。
 気候変動への対応となると温室効果ガス排出削減が必要不可欠だが、日本の対応はとても国際的にみてポジティブとは思えない。政府は、憲法改正や経済成長の方がよほど重要課題と考えているように見える。日本の温室効果ガス削減目標は、2030年に2013年比26%と世界各国と比較してかなり低いレベル。しかも、その内容には積極的な自然エネルギー政策はなく、火力発電のシェアを下げるエネルギーミックスの前提は、原子力発電所の再稼働を原則としている(!)。
  そして戦争・テロの脅威はなくなるどころか増加していくばかりだ。北朝鮮の度重なるロケット発射実験による挑発は、アメリカ・中国・ロシア、そして韓国、日本を揺さぶり続けている。2017年5月22日にはアリアナ・グランデのマンチェスター・アリーナ公演直後に自爆テロ事件が発生し、多くの音楽ファンが死傷した。

 世界の抱える課題はまだまだあるというのに、その救世主となるべきジョン・レノンと忌野清志郎はもうこの世にはいない。というか本来の寿命年齢すら全うせずに、あの世に行ってしまった。これだけ必要不可欠な人材が平均寿命より早く召されたのには何か理由があるのではないか。それは彼らには何かあの世で特別な新しい任務があって、そのために早めに召されたのではないだろうか。僕には絶対にそうとしか思えない。

 ジョンと清志郎が「世の中のためにいい事」を歌にした時代は、今よりもはるかにそれを歌うことが格好悪かった時代だと思う。世の中への不平不満や、社会への反逆・反抗のための音楽こそが「ロックン・ロール」の定義であったはずだ。それでもこの2人の偉大なアイコンは、堂々とロックの市場の中で、「愛と平和」のメッセージを残していった。この2人をしても当時は「偽善者」とか、「他のラブソングやメッセージソングと比較して深みがない」という多くの批判を受けたはずだ。しかし、今となっては、ジョンの代表曲「イマジン」は、世界中で永遠に継承し続けられるであろう平和のアンセムだし、清志郎のRCサクセション時代の大問題アルバム「カバーズ」に収録されていた楽曲たちは、東日本大震災直後に発生した福島第一原発事故により、改めてそのメッセージの正当性が証明された。彼らが時代より早すぎた、やっと時代が彼らに追いついた、と結果論として語ることは簡単だ。ただ彼らが残していったメッセージをフォアキャストの材料として考えてみることもこれからは大事なのではないだろうか。

 ビートルズ解散後のジョン・レノンのソロ活動時代の代表作は、何といってもアルバム「ジョンの魂」(1970年)だろう。『おかあさん 僕はあなたのものだったけど あなたは僕のものじゃなかった / 行かないで』(マザー)、『僕はビートルズも信じない 僕は僕だけを信じる それが現実だ 夢は終わったのさ』(ゴッド)、『ママの死 とても説明できない 耐えられない程痛い』(マイ・マミーズ・デッド)、など「人間ジョン・レノン」を赤裸々にさらけ出した私小説的作品で、ローリング・ストーン誌が選ぶ偉大なアルバム500でも22位にランクされた名盤である。しかし、ジョンはそのわずか11か月後にあの代表曲「イマジン」を収録したアルバム「イマジン」(1971年)を発表している。つまり「おかあさんが死んで悲しいよ、つらいよ」とめそめそしていた男が、11か月後には「国境がない世界を想像できるかい。僕が夢を見てるって?でも僕は一人じゃないんだ。」と歌ったのである。このアルバム「イマジン」には、ポール・マッカートニーをディスった「ハウ・ドゥ・ユー・スリープ」も収録されているし、その後もオールド・スタンダードのカバーアルバム「ロックン・ロール」をリリースしたり、息子ショーンを溺愛する歌を歌ったり、と確かに一貫性はない。このあたりがジョンの「愛と平和」は、単なる気まぐれか流行だったんじゃないか説がある理由だ。『ジョン・レノン 馬鹿な平和主義者!』というフレーズを愛のある楽曲の中で歌った日本のバンドもいた。たぶんそれは正解なのだろう。なぜなら僕らはみんなジョンの事をよく「知っている」のだから。直接会ったこともないとんでもないスーパースターだけれども、彼の性格や人間性を誰もがよく知っているからだ。それこそがアーティスト=ジョン・レノンの表現だったから。それを知り尽くしてこそ『ハッピー・クリスマス 戦争は終わった』と歌っていた人が、今の世の中に生きていたとして普通に平凡な生活を送っているとは考えにくい。「パワー・トゥ・ザ・ピープル」みたいな歌をみんなと歌いながら、積極的によりよい世界のために活動していたのではないだろうか。「女性は世界の奴隷か」を唄っていた人だからダイバーシティに関する活動などもしていたかもしれない。

『宝くじは買わない だって僕は お金で買えないものをもらったんだ』「宝くじは買わない」でデビューした忌野清志郎は、最初からの資本主義否定派だ。売れず極貧だったであっただろうこの時代から、お金には執着しないと歌う彼のスタンスには、まっすぐで強い意志を感じる。のちのソロアルバム「メンフィス」の中でも『金で買えるものなんか この世で一番安っぽいものさ / 何でもかんでも 金の額ではかってる馬鹿な奴ら 買えるものは せいぜい俺の歌ぐらいさ それがせきのやまさ』(彼女の笑顔)とそのポリシーは一貫している。お金にこだわらない彼が、同様のストレートな意志で「愛と平和」の信念を持っていたことは、過激で怒ったメッセージソングが多い彼としてでも、それほど不自然ではない。『LONG TIME AGO 44年前 原子爆弾が 落ちてきて何10万人もの人が 死んでいったのさ / LONG TIME AGO 44年たった今 原子爆弾と 同じようなものが おんなじこの国につぎつぎと出来ている』この「LONG TIME AGO」でもみられるように、彼の反原発の姿勢も戦争反対=平和へと通じている。清志郎は、過激な行動や楽曲、様々な事件で一般的には「反逆のロックンローラー」というイメージがあるのだろうが、この人は本当にピュアにイノセンスに自分の正しいと思った道をまっすぐに歩いてきた人なのだと思う。『だって俺は自由 自由 自由 汚ねえこの世界で いちばんキレイなもの それは自由 自由 自由』(自由)もし今の世の中の状況下で生きていたとしても、きっと一直線に進み続けたであろう。

 僕は、ジョン・レノンと忌野清志郎からたくさんのことを教えてもらった。それは学校や教科書や先生や、テレビや新聞や報道が決して教えてくれなかった本当に大切な事ばかりだった。彼らの音楽を知らずに大人になっていたら、自分が今どんな人間になっていたのか想像すらできない。彼らはもうこの世にいないけれども、彼らの楽曲はここに永遠に残り続ける。彼らを失ったこの世の中で、残された僕らがやらなければいけないことや、考えなきゃいけないことをいま一度整理してみる必要があるのではないだろうか。彼らが切り開いて作ってきた道の続きを、僕らが少しずつでも前に進んでいかなければならない。

2015年9月、国連は、2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)を発表した。続いて2015年12月、195か国がCOP21にて「パリ協定」を採択。地球の気温上昇を産業革命以前と比較して、2℃未満に抑える事を目標に取り組み、さらに1.5℃未満というより厳しい努力目標を設定した。2017年6月1日アメリカのトランプ大統領はパリ協定からの離脱を宣言したが、ニューヨーク州、ワシントン州、カリフォルニア州らは独自でパリ協定を支持し、地球温暖化対策に取り組むと発表している。

我々に、そして未来の子供たちに、いったいどんな未来が待ち構えているのだろうか。僕は根拠もなく、楽観的に未来を想像している。だってきっとそのためにジョンと清志郎が早くあの世に召されていったのだから。いま世界中にある様々な問題を彼らのメッセージでフィルターにかければ、答えはきっと見つけられるはずだ。

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