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POP VIRUSを全身に取り込め

星野源の映像作品には音楽が潜んでいる

【HOSHINO GEN DOME TOUR 2019 “POP VIRUS” AT TOKYO DOME】

2019年8月7日。
2019年2月から始まり、約33万人を動員したドームツアーの映像作品が発売された。
私は札幌ドームへ参加したが、あの日の光景は今も目に焼きついている。
「あの日をもう一度繰り返したい」と思う。
けど、それ以上に

「星野源の作品を手にしたい」

と強く思っていた。
 
 
 

私は俗に言う「どこに出しても恥ずかしいオタク」だ。
好きになると根が深くなりがちだ。というか多分引かれるくらいにのめり込む。そこが沼だとしたら、深さも確認せずに助走つけて飛び込み台を踏みつけ、前のめりでダイブして飛ぶような人間だ。
時に沼がそれほど深くないケースもあるが、その時は頭を強打しながらも前転して泥まみれになって満足する。

そんな私が、星野源の沼にたどり着いてしまった。
これが恐ろしいことに正真正銘の「底なし沼」だった。3年以上もかけて深く深く潜っているが、全く底が見えない。
それどころか沼の底はいつも見たことのない、面白そうな光に満ちあふれている。
 
 

今度の映像作品も特典がてんこ盛りだ。
映像特典、オーディオコメンタリー、ブックレット、店舗によってはアイテムまで付いてくる。
それは今までも「お値段以上、それ以上」だったし、前回の期待を必ず上回ってくる。
今回もアルバム「POP VIRUS」自体が名盤であり、そこには「こんなJ-POPを見たことがない」と思わせるような楽曲がたくさん詰まっている。
それをベースにしたライブ映像だもの、どれほどのものになっているのかと期待は高まる一方だった。

巨大な東京ドームに集まる人、そしてそのど真ん中、小さな舞台に浮かび上がる星野源。
ギターを抱え、息を吸う。
日本屈指の巨大な会場で、最小限の楽器構成で、とても静かにその幕は上がった。
 
 
 

音楽は、耳で聴くものだ。
 
 

画面から流れてくる臨場感のある音に、あの時札幌ドームで聴いた楽曲がよみがえる。
けれども、画面越しに見る光景はまた少し印象が違うのだ。
その理由は分かっていた。
源さんが自身の深夜ラジオ「星野源のオールナイトニッポン」でこう語っていたからだ。
『映像編集する時に、バンドメンバーの姿や手元を意識して入れた。そうすることで、より一層【ステージから見た東京ドーム】に近づくと思った』と。
それは一目瞭然で、会場の端から見ていた光景と、画面越しの光景はずいぶんと様子が違っていた。
正直、星野源という人が好きだ。大好きだ。
だが、それと同じくらいに、星野源のバンドメンバーが大好きなのだ。
バンマスを務めた長岡亮介さん、河村”カースケ”智康さん、石橋英子さん、櫻田泰啓さん、ハマ・オカモトさん、STUTSさん…実際のところホーン隊からELEVENPLAYの皆様まで、いや、あの場にいた一流アーティストの皆様から設営スタッフさんまで、全てが好きだ。
そんなバンドメンバーが奏でる演奏、息遣い、目線…信じられないくらいの情報量が画面から伝わってくる。
会場では決して見られないほどの細かい情報が、映像作品に組み込まれているのだ。
思わず画面を見ながら、嬉しすぎてため息が出る。

その上、ライブ映像ではあるものの、今作品には「字幕」モードがある。
以前Twitterで見かけたのだが、ライブ映像に字幕を付けて欲しいというツイートがあった。その方は、聴覚に不安のある方だった。
似たような時期に、前述した深夜ラジオでも「耳が聴こえないけどライブに参加した、感動した」という話を聞いた。
そんな話を聞いて程なくして、星野源の映像作品には「字幕」が付いた。

ブックレットには、今回ツアーに初参加となった若手2人とのツアー振り返り鼎談が掲載されていた。
そこに書かれているエピソードは、笑えるものから音楽的な話まで多岐にわたる。
映像を改めて見たくなるような話も多くて、思わず読みふけってしまった。
ボリューム満点の解説文は、これまでの話から現在に至るまでの星野源音楽史、そしてポップミュージックの新たな夜明けへの丁寧なライナーノーツ。
読んでいくと今回のアルバムへの思いが一層凝縮され、そして更にライブ映像を見たくなる。

「documentary & 2nd stage selection」と題された特典映像。
俗に言うメイキング映像と、2ndステージで演奏された合間のMC(というかMCが主なんじゃないかと思うほどに面白すぎる雑談)をバンドメンバーとともに振り返るという、なんとも不思議な映像集だ。
そんな映像の端々にも、ライブへの思いが見え隠れする。
メイキングで見える星野源の変化、あの合間に起こっている「てんやわんや」の舞台裏、2ndステージでの雑談に隠れたバンドメンバーの思い。

ライブ映像以外のものを見れば見るほど、音楽が一層近くなるのだ。
 
 
 

音楽は「耳で聴く」だけのものではなかった。
 
 

目で見える情報(会話や文章)に散りばめられた、一見「関係ない」と思うような場所にあるわずかな音楽の欠片。
そんな無駄だと思うような欠片のすべてが、POP VIRUSへと繋がっていく。
音楽の新たな面白さだよなあ、と思わず唸ってしまう。
楽曲それぞれにあるエピソードはもちろん、そこから更にたくさんのエピソードに「POP VIRUS」が見える。
今回のディスクは音楽の「聴き方」が変わる、そんな映像作品なのだ。
 
 

偉そうなことを書き連ねたが、要は「ああもう最高すぎる」と言うばかりだ。
映像を見ながら、楽曲を聴きながら、全身にPOP VIRUSを行き渡らせたくて深呼吸をしてしまう。
肺の奥までPOP VIRUSに侵されて踊りたい、そんな堪らない気分になってしまうのだ。
実のところ、まだ全てをチェックはできていない。
なんせオーディオコメンタリーを含めれば480分を越えるボリュームなのだ、どれだけ大盤振る舞いなのかと思う。
けど、今この状態でどこかにこの思いを叫びたくなって、思わず音楽文のサイトに思いの丈をぶつけている。
どうか、これを読んだ人はぜひ映像作品を手にして欲しい。
 
 

ライブに行った人も、行けなかった人も、きっと多くの人にとって大事な一枚になると思うから。
 
 
 
 
 
 

余談だが、これを書いて一息ついて、改めてパッケージを眺めていた。
吉田ユニさんが作り上げた最高のパッケージ、その表面には機械でできた心臓がある。
艶めかしい血管、無機質な心臓、グロテスクなのにどこか神々しい。
本当に吉田ユニさんも最高だ…と思いながら、ディスクを仕舞おうと中身を出す。
初回限定盤は特殊パッケージ仕様になっている。
ここにも血管が…と思い、ふとその配置に気がついた。

…それを手にしたことに、思わずゾッとした。

音楽が、声が、たくさん収録されたディスクを仕舞う場所。
もしそうだとしたら、とてつもなく生々しくて、その綺麗な様に震える。
 
 

あれは…あの臓器なら、もう手にした瞬間に私達はPOP VIRUSに感染するしかない。

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