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神々が集いし神社で魅せた、唯一無二の極上ポップス

きゃりーぱみゅぱみゅライブツアー『まぼろしのユートピア~出雲大社の夜~』ライブレポート

某日、僕は島根県・出雲大社の東神苑に設置された特設ステージにいた。その理由はひとつ。きゃりーぱみゅぱみゅの『音ノ国ライブツアー2019「まぼろしのユートピア~出雲大社の夜~」』に参加するためである。
 

今回のライブは、日本の伝統や歴史にゆかりのある土地で開催されるライブツアーの第一弾。午前中から降り続いていた雨は、タイミングを見計らったかのように止んでいる。会場周辺はライブが近付く緊張感と、神々が集うとされる出雲大社の厳かさも相まって、異様な雰囲気に包まれていた。
 

ステージは薄い紗幕スクリーンに覆われており、その全貌を伺い知ることは出来ない。しかしながら金の縁で囲まれたステージとその背後に浮かぶ桜を見るだけでも、いかに今回のライブが特異なものかが良く分かる。
 

定刻を過ぎた頃、左右の照明がゆっくりと消灯。瞬間、幼い子どもの語り口と共にスクリーンに映し出されたのは、今回のライブのコンセプトとなった『音ノ国』の過去と現在の様子である。
 

かつての『音ノ国』は音楽の神・音龍に守られた場所であったという。人々は歌い踊り、平和な毎日を過ごしていた。しかし突如現れた亡霊によって暮らしは一変。音龍は姿を消し、音楽はみるみる衰退し、人々は次第に笑顔を無くしていった。
 

そんな中音龍の涙から生を受けたきゃりーは、音楽を甦らせようとひとり亡霊に立ち向かっていく……。スクリーンが廃された後にそこに立っていたのは、勇ましい表情を湛えたきゃりーぱみゅぱみゅその人だった。
 

随分と久々に鳴らされた『完全形態』から『きらきらキラー』へ繋ぐ形でライブはスタート。開口一番「出雲大社へようこそー!」ときゃりー。その姿は純白のベールに包まれており、神聖な土地でのライブに相応しく、神々しい輝きを放っていた。
 

観客からは「かわいいー!」との声が次々上がり、動けば動くほど絵になる立ち振舞いはまさに日本のポップアイコンを体現するかのよう。更には耳馴染みの良い楽曲と多数のダンサーの存在でもって、唯一無二の世界観を形成していく。
 

続く『つけまつける』では早くも「オイ!オイ!」のコールが飛ぶ盛り上がりを見せ、中にはきゃりーに合わせてサビ部分を踊る観客も。普段の出雲大社は縁結びを祈願する参拝客が集う場所として知られているが、この日は一夜限りのポップ空間。老若男女問わず、きゃりーが醸し出すハッピーな空気に酔いしれていた。
 

「今日は懐かしい曲を中心にセットリストを組んでみました」とはきゃりーの弁だが、その言葉の通り、今回のライブは昨今ほとんど披露されない楽曲も多く盛り込まれた、ファン垂涎のライブとなった。中でも2012年発売のファーストアルバム『ぱみゅぱみゅレボリューション』からの楽曲は新鮮で、イントロが流れるたびに大きな歓声が沸き上がるのが印象的だった。
 

常に観客一体型のライブで進行していくのも大きな見所。『みんなのうた』による毎回リズムが変化する手拍子で盛り上がったかと思えば、『チェリーボンボン』や『PONPONPON』では間接的に振り付けをレクチャーしたりと、目と耳に加え体でも楽しめるライブ空間を演出していた。
 

今回のライブは『出雲大社御遷宮完遂記念』ということもあり、総じてメモリアルかつコンセプトなライブの様相を呈していた。ステージ上には神話に登場する兎や蝶々、オウムの他、色とりどりの植物で彩られており、ライブ中の光によってミステリアスな雰囲気にも、神秘的な雰囲気にも姿を変えていく。
 

『良すた』の後には再びスクリーンが出現。そこに映し出されたのは、活気を取り戻しつつある音ノ国だった。きゃりーの歌によって音ノ国は笑顔や音楽の楽しさを思い出し、徐々にではあるが復興への道を辿っている。しかし人々の心中では未だ亡霊の再訪に怯えており、心の底から音楽を楽しめない状態が続いていた。
 

映像がフェードアウトすると、ステージにはピンクの衣装に着替え筋斗雲に乗ったきゃりーの姿が。真剣な表情で、かつ冒頭をアカペラにアレンジして歌い始めたのは『にんじゃりばんばん』。きゃりー史上最も広く知れ渡ったこの楽曲を、まるで『音ノ国』の人々に訴えかけるように、力強く歌い上げた。
 

その後は最新アルバム『じゃぱみゅ』収録曲を主軸とし、レア曲も複数散りばめたライブを展開。
 

『きまま』や『コスメティックコースター』といった歌メロ重視の楽曲も軽々歌いこなしつつ、ダンスを繰り広げるきゃりー。更には「リハーサルのときはまだ蕾だったので心配でした」と語っていた各所の桜も今やしっかり色づき、ステージングに花を添えている。
 

全曲通して大盛り上がりのライブであったが、曲名を叫んでスタートした『ファッションモンスター』は、間違いなくこの日のハイライトのひとつだった。
 

〈だれかの ルールに しばられたくはないの〉

〈わがまま ドキドキ このままでいたい〉

〈ファッションモンスター〉

〈このせまいこころの檻もこわして自由になりたいの〉
 

きゃりーの歌声は亡霊に怯え続ける音ノ国の人々を勇気づけるように、高らかに鳴り響く。スクリーンにはコンクリート状で作られた大きな壁が、曲の進行と共に少しずつ崩壊していく様子が描かれた。その様はまるで音龍の復活を隠喩しているようでもあり、感動的な一幕として映った。
 

ここまでで約1時間半。永遠に続いてほしいと願う至福の時間ではあったが、ライブの終演は刻々と近付いていく。きゃりーの「最後は今日にピッタリのこの曲で終わりたいと思います」との一言から雪崩れ込んだ最後の曲は、今回のライブのタイトルにも冠された『音ノ国』だった。
 

〈宴や宴や国中が 和尚さんもタヌキも歌唄う〉

〈ぼくらのあたしの生まれた音ノ国〉
 

激しいEDMサウンドに乗せ、優雅に踊るきゃりー。縦横無尽に飛び交うレーザー光線の中、ダンサーを引き連れて歌う姿はまさに音ノ国の歌姫といった様相。
 

その後は一体感のあるアンコールに答え、今回のライブ限定Tシャツを着たラフな姿できゃりーが再登場。各曲を彩ったダンサーの紹介を終えた後に「近々リリース予定の新曲をやりたいと思います」と語り、この日ライブ初披露となる新曲『きみがいいねくれたら』へ移行。
 

ダンサーとふたりきりで踊る楽曲という点でも新鮮だが、一際目を引くのはその運動量。右へ左へと何度も移動し、圧倒的な動きでもって魅了していくこのスタイルは、今までになかったものだ。事前に「今までで一番激しいダンスをします」と語っていた通り、楽曲が終わった頃には全身汗だくになっていた。
 

正真正銘最後の曲として鳴らされたのは『原宿いやほい』。披露前には「さっきの『音ノ国』で言おうと思ったんですけど、写真撮影してもオッケーです」と語り、多数のスマホが向けられる中でのパフォーマンスとなった。
 

ステージ上には各楽曲を彩っていたダンサーが集結し、観客は一様に「ほい!ほい!」の大合唱。きゃりーは「ありがとう!」と何度も感謝を伝え、大盛り上がりで幕を閉じた。
 

ライブの終わりを告げる『fin.』の文字がスクリーンに表示されてもなお、ファンからの拍手は長い時間鳴り止まなかった。この光景こそがきゃりーの今回のライブが大成功に終わったという事実を、何よりも雄弁に物語っていたと思う。
 

照明で照らされた桜を見ながら帰路に着く。出雲大社から発車した臨時電車を降りると、そこはタイミングを見計らったかのように、バケツをひっくり返した勢いの大雨となっていた。にも関わらず、思い返せばライブ中は1滴たりとも雨が降っていなかった。出雲大社に祀られた神様がそうさせたのか、はたまたきゃりーの晴れ女っぷりが作用したのかは分からない。しかしこのときばかりは、それすらも運命だったのではと心から感じることができた。
 

今回のライブは『音ノ国ライブツアー』のほんの序章に過ぎない。先日には歌舞伎をモチーフにしたライブを展開したことからも分かる通り、次なるライブもまた違った趣向を凝らし、ファンを楽しませてくれるに違いない。
 

元号は令和に変わったが、きっときゃりーは今までと変わることなく、音楽を届けるために奔走するのだろう。何故ならこの日本も、きゃりーが生まれた『音ノ国』なのだから。

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