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欠けた月の黒いところ 感情を表す心は自分次第

BUMP OF CHICKEN 新アルバム ジャングルジムを聴いて

 新しいアルバム“aurora arc”の発売を楽しみにしていた。ほとんどが既発曲だったので新しい曲の存在に興味津々だった。今までのアルバムからして一曲は必ずある、いわゆる歌詞は自己嫌悪な感じから始まり、しかし曲調はポップでリズム感ある曲だと勝手に妄想し、ワクワクしながら待っていた。こういう類がアルバムにあると、それは他の曲にも良いスパイスとなり、アルバム全体が引き締まって聴こえるように感じるのだ。なによりこういう曲が面白くてBUMPらしいと感じていた。
 早速アルバムを購入し一曲目から聴く。SNSや雑誌などから新アルバムの情報をあえてシャットアウトし、新鮮な気持ちでジャングルジムへ。初聴きの感想は、ギターだけのバラードかあ。なんか地味目だな・・・と思ってしまった。しかし藤原さんの作る曲たちはジワジワとくるのが多いので気にもせず、購入してひと月程・・・やはり心に刺さる曲だった。夕暮れ時の公園の風景や帰路の通勤電車の様子が浮かび、童謡のようにも聴こえ郷愁を誘う。歌詞カードを見ると “欠けた月の黒いところ”に意味があるように想像できた。(欠けた月の黒いところ、なんて気にしたこともなかったので、改めて藤原さんの視点に脱帽した)

 「帰ろう 帰ろう 遠くで歌っている」
 「その日 僕を見ていたのは 欠けた月の黒いところ」

 欠けた月が僕を見ていたと歌う。月の形は日によって様々で、欠けた月は大きかったり小さかったり。少年の僕にとって、月はどのくらいの存在だったのだろう。そして欠けた月の黒いところはジャングルジムの中にいる僕をじっと見ていて、彼が覚えたなにかしらの違和感に気付いている。そのありさまは、彼にとってどんな思いを抱かせたのだろうか?自我を強く意識したころのもやもやとした気分だろうか。

 「ガタンゴトン ガタンゴトン 繋ぎ目を越えてゆく」
 「隣の他人が最後に泣いたのは いつ どんな理由」

 ガタンゴトンと音を立てる繋ぎ目。その繋ぎ目は毎日の経験として連動し、処世術を身につけ一人前の大人となっていく。周りの人の表情も、皆自分と同じようだと思っていたけれど、ふと疑問に感じることもあって。

 「例えば最新の涙が いきなり隣で流れたとしても 窓の外飛んでいく 電柱や看板と同じ」

 「最新の涙」という言葉が好きだ。涙を最新なんて表現するだろうか?そこで推測する。例えば電車の隣にいる他人は最新のロボットで、IT化真っ盛りの日本で当たり前になり、もちろん少しは感情も備わって、どんな理由かは知らないが涙も流せて。

 「それでもどうしてだろう つられて泣いてしまいそうな 名前もわからないのに 話も聞いちゃいないのに」
 「誰が見ても取るに足らない だからこそ誰にも言えない そんな涙ならきっとわかる あぁ そう これは ただの例えばの話」

 「どんな時でも笑えるし やるべき事もこなすけど 未だに心の本当は ジャングルジムの中にいる」

 快・不快から始まる人間の感情は、成長するにつれてその種類も増えて豊かになる。しかし大人になり忙しい毎日を送るうちに、それは忘れ去られていくようだ。感情の代わりに、理屈や理論を習得してうまく使いこなす。時間や距離の効率化はこれからの世の中に必要だ。それはわかっているけれど、思わず流れた涙に「僕」が反応してしまうのは、少年の頃にジャングルジムの中で感じた違和感からきているのだろうか。誰かのことを思う心を持つ、時間や距離にとらわれない優しい感覚。

 「欠けた月の黒いところ 欠けた月の黒いところ」

 最後は藤原さんの鼻歌の余韻で締めくくられる。この余韻に、私は自分自身の感情の表し方を思った。欠けた月の黒いところが、感情のどれだけの部分を占めるのか、それは多いのか、少ないのか。真っ暗なのか、全く欠けてもいないのか。
 人間の感情はころころ変わり、成長すれば安定する時もあるけれど、それが続く保証はなく、大人になっても変わらない部分はどうしたって変わらない。
 今までの自分の生き方から、なにか物足りない、このままの毎日でよいのか?と感じても、もう歳だからしょうがないと諦めることも多い。でも、時々おこる心の違和感やわだかまりを処理できない自分に気づいてもいる。そのような時、純粋で正直な子どもたちや、思いきり喜怒哀楽を表現する人たちを見ると、その違和感やわだかまりがうずいてしまう。
 だけど、この曲を聴けて良かった。誰かの前で泣いたり笑ったり、時には感じたことをそのまま伝えてもいいんだよ、とのメッセージを受け取った気がした。
 月は欠ける。満月にも三日月にも、半円にもなる。欠けた月の黒いところが、どのくらいの大きさかを感じるのは自分次第だ。月はいつも同じ周期で、私たちの身体と心を見ている。

(*「 」内はアルバム“aurora arc”ジャングルジムより抜粋)

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