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変わらないで

SAKANAMONへの矢文

 
「やっぱり、好きだなあ」
というのが第一印象だった。

8月7日に発売されたSAKANAMONのミニアルバム『GUZMANIA』は新曲6曲にライブ音源4曲が収録されていて、ミニと形容するのは勿体無い満足度だ。ジャケットのデザインは某教育番組内のMVでも馴染みのあるアーティスト・山村浩二氏が手掛けている。柔らかな色使いと独特なタッチが素敵でCDショップでもすぐに見つけることができた。
毎度のことながら、新譜を手に入れるとはやく封を開けたくて仕方がなくなる。帰路の途中、何度も右手に提げたオレンジのビニール袋を確認してしまう。家に着いてすぐにプレイヤーにCDをセットするとボーカル・藤森元生の声が部屋に響いた。この瞬間がたまらなく幸せなのである。初めて聴くのにすんなりと耳に馴染むSAKANAMONの歌、やっぱり好きだなあ、の一言に尽きる。
『GUZMANIA』を聴きながら充分に満たされていた私は、それでも「ずっと変わらないでいてほしいな」などと欲深いことを考えてしまっていた。

SAKANAMONのメンバーは新しいことを企画して私たちをわくわくさせてくれる。
貝の形をしたCDケース、メンバーによる社会科見学、音楽居酒屋という新スタイルのライブや新しい楽器、今回のアルバムでは一部HIPHOP調の楽曲も披露された。作品においても、遊び心満載の曲から詩集を彷彿とさせる曲まで、ひとつひとつの音楽が型にはまらないで個性を爆発させている。今回のアルバムで言えば「矢文」などは、一見すると一般的な片思いソングに感じられるかもしれないが、スポットの当たらない人物をピックアップした意外性や“矢文”という突飛な手段のチョイスなど個性の塊と言えよう。曲の終わり方に関しては「まるで小説だね」という感想を友人と交わしたほど秀逸だ。
音楽にしても、企画にしても、生み出すものすべてがオリジナリティに溢れている。挑戦を続けるSAKANAMONというバンドに対して烏滸がましくも変わらないでほしいと願うのは、私たちの抱える「欠点」を「愛すべき弱点」にしてくれる点に関して、である。

私は様々な場面を、感情を、SAKANAMONに支えられてきた。
中学での友人との仲違い、高校入試、部活での怪我、大学受験、人にされた嫌なこと、言ってしまった酷いこと——
どんよりとした気分でも彼らの音楽で落ち着き、立ち直ることもできた。前向きな言葉だけを投げかけて背中を押すわけでもなく、明るい未来だけを見せようとするわけでもない彼らの音楽たちだが、だからこそ前を向くための助けとなってくれているのだと思う。それぞれの現状をそれぞれが受け入れて愛せるような音楽の存在が、少なくとも私には必要だ。
SAKANAMONが変化し進化していく姿に心を躍らせながら、そんな変わらない部分に安心して寄りかかっている“今”みたいな生活がこの先にも在り続けるといいなあ、とそんなことをいつも考えている。

まずは年末のライブを楽しみに、私も成長していこう。

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