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サム・フェンダーが画面を超えて響かせたもの。

サマーソニックのサム・フェンダーのステージをオンライン生配信を通して見た。

近年急増しているオンライン映像サービス、YouTubeを利用したコンサートのオンライン生配信。今年はついにサマーソニックも昨年から導入しているフジロックに次いで、この生配信を始めた。

コンサートのオンライン生配信については賛否両論がある。賛成派が大多数になるとは思うのだが、批判している人の多くはライヴの楽しみ方を知っている人がほとんどではないだろうか。彼らの多くはライヴは生で観る事に醍醐味を感じていて、映像で配信したところで表面しか伝わらず音楽がよりビジュアル的なものになることを恐れているのだと思う。
筆者自身、ライヴ音楽を愛するものとしてこの意見には大方納得がいく。しかしながら、この様なコンサートのオンライン生配信の良き側面はスポットライトを当てられずに存在し続けている気がする。なぜなら賛成派はマジョリティーではあっても、これといった理由もなく視聴者になっているからだ。音楽は本来、視聴者としてではなく参加者として聴かれるべきなのだ。

今回、筆者はサマーソニックには参加できずに、実際にオンライン映像サービスのYouTubeを利用して生配信を見た。普段コンサートに参加する者として感じたことが少なからずあったので、こうして文にしようと決めた。

はじめにはっきりとさせておきたいのは、筆者自身の立ち位置だ。私はもともとコンサートのオンライン生配信にはネガティヴなイメージを持っていた。なぜなら私は普段お金を払ってコンサートの「参加者」になっているのに、視聴者はコンサート無料で見れてしまう事にどこか不公平さを感じていたからだ。

上記の通り、今回は視聴者としてコンサートを消費した。
そのサマソニ初となるYouTubeを利用した生配信の先頭を切ったのがサム・フェンダーだ。

昨年の英『ブリット・アワード』で批評家賞に選ばれたのをきっかけに、母国スコットランドを中心に最も注目を浴びている新人の1人である。と言うのも、これまでアデル、サム・スミス、フローレンス・アンド・ザ・マシーン、ジェイムズ・ベイなどの実力派の大物ミュージシャンたちががこのブリット・アワード批評家賞の受賞者に名を連ねてきたからである。
さらに、7月に英・ハイドパークで行われたボブ・ディランとニール・ヤングの最強タッグによる公演の際には、ローラ・マーリングやキャット・パワーなどの面子に並びオープニングアクトを務めているのだ。

ブルース・スプリングスティーンから影響を強く受けていると本人も言及する様に、曲中のサックスパートがよく目立つ。特にデビューアルバムのタイトルでもある「ハイパーソニック・ミサイル」の間奏でのサックスがもたらすアクセントには心の高鳴りを感じずにはいられない。

また、アルバム内でこのサックスを演奏しているのはThe 1975でサポートを務めるジョン・ウォー。今年は忙しく世界中を周り続けるThe 1975のツアーに同行しているということもあり、今までのところサム・フェンダーとのライヴでの共演はレアなものになってしまっていた。
しかしながら今回のサマーソニックのラインナップにより、The 1975と日にちが重なり、サム・フェンダーとジョン・ウォーの共演が果たされた。そんなレアな「完全体」のサム・フェンダーとバンドを我々は観れたのである。
デビューアルバム『ハイパーソニック・ミサイル』のリリースに先立ち、日本公演も予定されていたがアーティストの都合上キャンセルとなってしまったため、ファンの期待値も上がっていた事だろう。

客層は若者から大人まで幅広いように伺えた。筆者の過剰な期待を裏切るようにあっさりとした登場から、自己紹介のように自らの「インターネット世代」を皮肉的に歌う「Millennial」で始まる。2曲目は最新シングルの「Will We Talk?」だ。正直、二次元だからなのか彼らのギターのもたらす疾走感がいまいちかけている様にも感じた。
中盤にはサックスのジョン・ウォーを含めての新曲も続々と演奏された。音は米ライアン・アダムスを彷彿とさせるような取っ付きやすさと深みを含んでいた。

淡々とこなしてしまう姿には24歳という年齢以上のものが写っていたし、「ロックの帰還」というくだらないフレーズを無視した純粋さをも感じさせてくれた。彼のブルース・スプリングスティーンから受けた影響というのは、目には見えない彼のロックに対する姿勢だったし、それは二次元でも伝わってきた。
このように言ってしまうとどうもスピリチュアルに聞こえすぎてしまうかもしれないが、実際に筆者自身、ラップトップの上に涙を落とさずにはいられなかった。

画面を通して見たコンサートでもそういったコアな部分は通じると確認できた経験だった。時に我々がコンサート会場で涙する現象は、それが三次元だからとかライヴだからとは言えない気がする。ファンとミュージシャンの間に存在する、実に個人的な思いが重なるところに生まれるのだと思う。それらが重なるのは会場とは限らないのだ。

しかしながら、この生放送は時間制限が決まっており、我々(視聴者)は最後までステージを見届けることができない。また、ステージの待ち時間はないし終演後の人混みもない。ステージ前のセトリ争奪戦や、ギターピック争奪戦や、近くにいた音楽ファンとの交流もない。

そう考えてみるとコンサートのオンライン生配信は、ライヴの参加者だった人にも改めて様々な醍醐味を教えてくれるし、参加したことのない視聴者の人には大きな一歩を踏み出させる後押しになるに違いない。
今回のサマーソニックのオンライン生配信とサム・フェンダーのステージにはそんなことを考えさせられた。深く感謝したい。

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