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アカシック解散によせて

恋に迷い女らしさに悩む全ての女の子とそんな女の子の気持ちがわからないとぼやく男たちに聴いてほしい音楽

令和元年の夏が静かに終わりへと近づいている。
夏が来ると必ず聴いていた曲を今年は、それまでとはまったく違う思いで聴いている。
初めて聴いた時からずっと、聴く度に胸を焦がし続けているある部分にさしかかる。

ラブストーリー
アイラービュー
まぼろしじゃない貴方と
(「スーパーサマーライン~消えたはずのセレブのあいつ~」)

ひぐらしの鳴き声のようなギターが鳴りだすともう涙が止まらない。こんな日が来るなんて思いもしなかった。

令和元年8月7日、アカシックの解散が発表された。
アカシックに出会ったことで生まれ、私の心の中だけで生きていたギャルが、行き場をなくして立ち尽くす。

アカシックを好きになったのは「ツイニーヨコハマ」のMVを見た時だった。
短い映画を観ているかのようだ、と思った。
〈あたし〉と〈あなた〉の物語。
渦巻く不安と始まりの予感。
そんなゾクゾクするような詞をなぞるキュートな歌声、うなるギターの音と胸の奥底まで響くベース、すべてが美しくて、うっとりと酔いしれた。
そのまま他の曲も聴き漁り、ファンになるのに時間はかからなかった。

青天の霹靂とはまさにこのことを言うのだろう。派手な格好とメイク、折れそうに細くて高いヒールの靴を履いた、ギャルと呼ばれる女の子。自分とは別の人種だと思っていた、そんな女の子の生き様を描いたような歌詞に、首がもげそうなほど頷いて共感している自分に、誰よりも自分が一番驚いた。

個人的な話になるが、私は女に生まれたことにずっと悩みながら生きてきた。ガサツで細やかな気配りのできない性格で、小さな頃からいわゆる〈女の子らしさ〉というものが受け入れられず、嫌悪感すら抱いていた。ピンク色もスカートもフリフリのついた服もぶりっこも嫌い。
ショートカットでズボンを履いて自分のことを僕と呼んでいた小学校時代。
髪を切り過ぎて同級生の男子からすれ違いざまに男みたいと吐き捨てられて平気なふりをした中学時代。
普通は男子がやるべき仕事も私は進んでやってやると息巻いていた高校時代。
好きな人を家庭的な女の子に奪われないようにと、できない料理を必死にやって自己嫌悪に陥った大学時代。
おっさんみたいと言われても気にしないふりをして、可愛いよりも格好良いと言われたことを誇りに思っていたOL時代。
結婚向いてなかった、男に生まれたかったと言って周りの人たちを困らせた新妻時代。
お腹の子どもが女の子だと知って、暗く重たい気持ちになった妊婦時代。
思えば私は捻くれていた。こうあるべきという女の子像を自分で勝手に作り上げて、それに近づけない自分に勝手に失望して、男だったら、と、かなわないことばかり考えて現実から逃げていた。
そんな私の中に隠れた、女の子らしさに対する憧れが、アカシックを聴くことで解放された。理姫ちゃんのようには到底なれないけれど、彼女の描く、ちょっとヒリヒリして外連味のある女の子の姿が、捻くれ者の私にリンクして、女の子って思ってたほど悪いものでもないのかも、そんな風に思えた。

「ベイビーミソカツ」という曲に私の思う女心のすべてが詰まっている。
世の男性諸君、特に、パートナーとうまくいかない、女心がわからないと思っている男性全員に聴いてほしい。とにかく歌詞を隅から隅まで読んでほしい。
出産の痛みを男性が体験すると死ぬと言われていることからもわかるように、女性は男性よりもずっと強く逞しくできている、そしてそのことを自身でよくよくわかっている。
けれども、だけれども、女の子はいつだって不安で〈誰かにもっと守られて寝たい〉のだ。
誰だっていい訳じゃない、〈あなた〉には、あなたにだけは、〈いつか気づいて〉ほしいのだ。
暴れ狂うギターの音に胸をかきむしる。

数年前、妊娠し、お腹の中の子供が女の子だとわかった時、私はまだ見ぬお腹の子に向かって、アカシックの曲を歌って聴かせた。「華金」という曲だ。
この子もいつか、女に生まれたことを悩む日が来るのだろう。私はこの子に“女の子っていいもんだよ”って、嘘のない素直な気持ちで言えるだろうか、と自問し、暗く重たい気持ちを持て余した時、フト気づいた。私には理姫ちゃんがいる。そのことでどれだけ救われたことだろう。
数ある楽曲の中からこの曲を選んだのには訳がある。この曲には、恋愛の狂おしいほどに哀しくて刹那的な部分が、見事に凝縮されているからだ。
場合によっては、恋愛のこういった側面を知らないまま一生を終える人もいるのかもしれない。けれども私は、この感情なくして恋愛について語ることはどうやってもできない。
朝が来れば全てが泡のようにはじけて消えてなくなってしまう。残るのは虚無感だけ。そんなこと言われなくたってわかっている。それでも夢を見たいのだ。
うまくいく恋愛だけが恋愛じゃない。叶わなかった恋の痛みを乗り越えてこそ、人は強く優しくなれることを、理姫ちゃんは私に教えてくれた。
私の思う、女の子の幸せは、良い恋愛をして自分に自信を持つことにある。最愛の娘が苦しむ姿は見たくない。幸せな恋愛をしてほしいと心から願う。それでも、真夜中にタクシーを飛ばして好きな人に会いに行く行為を鼻で笑うような女の子には、どうかならないで。そんな思いを、この曲に詰め込んだ。

あの日お腹の中にいた子は無事元気に生まれ、日々すくすくと成長している。
今、私には密かな夢がある。彼女がやがて恋を覚えた時に、アカシックの音楽と、私だけが知っている彼女の淡い初恋の話を、そっと教えてあげることだ。想像しただけで胸がギュッとなる。その日を迎えるのが楽しみで仕方がない。
あわよくばその時、アカシックのメンバーの方々が何らかの形で活動されている姿を、娘と二人で追いかけられたなら最高だ、と思う。そして、それが叶う叶わないに関わらず私は、メンバーの方々のこれからのご活躍とご多幸を、心から祈っている。
ありがとう、アカシック。そしてこれからも、ずっとずっとよろしく。

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