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Base Ball Bear『不思議な夜』は何が「不思議」なのか

小出祐介が描く初夏の夜を考える

どこかの誰かが、「死にたくなる曲は名曲だ」と言っていた。

Base Ball Bearの楽曲を聴いていると、時々死にたくなることがある。
歌詞からどうしようもないくらいに青春が溢れ出ている。
こんな青春、私は知らない。

どれだけ死にたくなっても、聴き続ける楽曲の一つが『不思議な夜』である。

〈終電逃し 明日休みだし ちょっと散歩してみないかい?
真夜中の探検楽しそう!なんて賛成する君にキュン〉

散歩の誘いから始まるこの曲には、私の夏の理想が詰まっている。
何度「真夜中の探検をしてみたい!」と思ったことか。
 

とはいえ、『不思議な夜』というタイトルが私には分からなかった。

タイムスリップするわけでも、伝説の生き物が出てくるわけでもない。
別に深い間柄ではない2人が、終電を逃してからから始発の時間まで真夜中の探検をする。
何が「不思議」なのか。

「自分が体験すれば分かるんじゃない?」
そう思った私に、1人の友人が付き合ってくれた。

大阪でとあるバンドのライブを見た余韻と共に、電車に飛び乗った。
私たちの探検の舞台は神戸のハーバーランド。
夜中に外を出歩くなんて初めてで、なんだか悪いことをしている気がした。
「大人になりたくないね」って大人ぶっていた私たちは、たぶん誰よりも子供だった。

ふわふわした気持ちで、静かな海や、電気が消えた観覧車を眺める。

ああ、確かに夜って不思議だ。
静かで暗い街の中に、私たちだけが存在する。
夜に包まれていく。

〈不思議な夜が僕らをつつんでくよ
ドラマみたいな 奇跡めいて何気なく突然で
ビルの隙間 静かに月が微笑む〉

「エモい」なんて言葉では片付けられない、何ともいえない様子はまさに「不思議」だった。

そうか。夜には、ありふれた風景や会話を「不思議」にする力があるんだ。
散歩自体がなんてことないものでも、夜がそれを「不思議」に変えたのだ。

きっと私は、この夜のことをずっと忘れない。
夏が来るたびに『不思議な夜』を聴いて、死にたくなって、そしてこの夜を思い出すんだ。

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