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自分の持つ力を信じれば

パンダライオン、羽生結弦選手の応援歌が一人の応援歌になる時

「『批判と向き合う覚悟』があるのか」
言葉に出してみても押しつぶされそうな気分になる。
社会に放り込まれてからたくさんの「強さ」を手に入れてきたが、その覚悟ができたことは一度も、ない。

シャッフルで流れてきたパンダライオンの「夢に描くキセキ」。
懐かしい、あれから何年だろう。ソチ五輪に向かう羽生結弦選手の応援ソングだから…5年?もうそんなに経ったのか。

今年の夏は梅雨が明けてもずっと心がじめじめしていた。
私の勤めている会社は、そこそこ大きな会社なので、ハラスメント対策や違法行為防止のために内部通報窓口がある。
そこに私が通報されたのはちょうど梅雨の時季だった。
「あなたが『副業』をしているという通報があって、事実確認をしたい」
『副業』というのは、私が社外で行っている無償のボランティア活動のことだった。通報の内容は事実無根の酷いもので、こう言ってはなんだが、通報者の悪意と思い込みにまみれたものだった。
お金はもらっていないし、悪いことは一切していない。間違っていないと思っていても、度重なる呼び出し、事実確認に心がどんどん疲弊していった。
「問題なし」と判断されたのはお盆も明けた8月、もう夏も終わろうとしている頃だった。
頭の中を負の感情がうずまく2か月。
ほっとしたのもつかの間、最後に上司の放った言葉は私を地獄に突き落とした。
「何もしていなくても『気に食わない』と思われることなんていっぱいあるから」

匿名の相談窓口は、労働者を守る大切な場所だ。
しかし厄介なことに、時折、都合よく気に食わない相手を陥れることができる場でもある。
「会社のため」という正義があれば、どんなに個人的な恨みであっても、自分を正当化できるため、問題を探し回って、ない時は作ってでも通報される。。
正しいことをしたという自負と、意見を聞き入れてもらったという自己肯定、同時に相手へのストレスも発散されるかもしれない。
しかし正義とはこんなにも攻撃的で、優しくないものなのだろうか。

-さぁ行こう 僕らの想いは海を越え
-遥か彼方の君の背中
-強く 支え続けているから
-負けないように 倒れないように
-君の夢が叶いますように
-信じてる いま 自分を越えて
-羽ばたけ空へ

私のどんよりした心とは裏腹に、イヤホンから響く「夢に描くキセキ」は青空に放たれていく。

羽生結弦選手は、震災があったからこそ乗り越えられた、とも語るが、同時に言葉の節々に「負い目」のような物が感じられる時がある。
被災地だけでなく、日本に勇気と笑顔を与え続けてきた選手が、「忘れないで」と今なお叫び続けていること、それだけで希望を持つことができる。

みんなに迷惑がかかるボランティアなんてやめよう、そう思っていた時に「夢に描くキセキ」が流れてそれまで抑えていた感情が溢れた。

「悔しい」

被災地ではあるけれど、被害の少なかった仙台市。
私もすぐに元通りの生活ができた一人だ。
しかし何もできなかった、救えなかったという負い目が強いのも事実。
勝手にではあるが、羽生結弦選手の負い目がわかるような気がして、そんな発言が出るたびに心が締め付けられる。
罪の意識のような物がいつも頭の中にはあって、何かできることはないか、と行動した結果が私にとっては、ボランティアだった。
仙台に暮らしていて、今自分ができることをやりたかっただけだ。
それがだれかのストレスのはけ口、私に対する攻撃の対象になってしまったことが、とても悔しい。

-君の居たこの街も 立ち上がるさ
-全力な君とほら 同じように
-自分の持つ力を信じれば
-もっと もっと 頑張れる気がするよ

何年も前に聴いた歌詞なのに、初めて耳にしたような衝撃だった。
周りの音を、声を聞きたくないがために流していた音楽。そしてちょっと恥じた。
音楽を、ただただ自分の傷を癒すためだけでなく、現実から目を背ける道具にしようとしていた…。
私の持つ悩みなんてちっぽけで、「全力」なんて非力で。
少しのストレスで投げ出してしまいたい気分になってしまうのだけど、もっとできるのなら、少しだけこの街でもうちょっと頑張ろう、そう思えた。
まだ胸はひどく痛むけれど。

人間は夢と現実のはざまで暮らしている。
東日本大震災で、嫌というほどつきつけられた現実、そして、日々襲ってくる優しさのない現実。
平和で幸せに暮らすのが夢なのに、現実は生活に浸食してくる。
人に向けられた「嫌い」という感情は時として「好き」よりも激しく襲い掛かる。

それでも、夢を、人を諦めたくはないな、「嫌い」に負けたくないくらい、好きなものがあるし、大事な人がいる。
今もなお頑張っている人がいるという事実に背筋を伸ばして、行動できる。
「『批判と向き合う覚悟』があるのか」
自分なりの正義ではなく、誰かを守る正義を手に入れたなら、人は強くなれる、そんな気がする。

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