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2017年6月21日

名無しのひつじ (32歳)

Nirvana

Kurt Cobainの魔法と呪い

カート・コバーンになりたかった。最後は自分の頭を銃で撃ち抜く結末だって知っていてもカートになりたかった。

カートが遺した言葉にこんな言葉がある”I hate myself and want to die.”(自分が大嫌いだし死にたい)
彼はそんな言葉を遺して逝ってしまった。

僕も一緒だった。自分が大嫌いだった。死んでしまいたいと思っていた。

僕がNirvanaをちゃんと聴いたのはカートが亡くなってしまったあと中学生になってから。彼が亡くなった時は僕はまだ小学生の低学年だったからニュースになってるのをおぼろげに記憶しているくらい。
つまり、Nirvanaの物語が完結してから僕はNirvanaの音楽に触れた。

僕にとってNirvanaは最初から”自分が大嫌いだし死にたい”という言葉から始まっていた。
アメリカのスラム育ちでもない、ストリートチルドレンでもない。天涯孤独の身でもない。両親にも恵まれた。友達もいた。学校も好きでは無かったけれど、友達に会えるからそこまで苦ではなかった。
それでも何でか他人と世界と自分とのズレを感じていた。今思えば思春期特有の誰もが感じる疎外感の一種なんだと思うけどその当時の僕はそのズレに絶望していた。
孤独感を感じていた。両親も友達もいたからこれっぽっちも一人じゃなかったくせに。

僕はRock’n’Rollに憧れた。ただひたすらにかき鳴らされるその音楽に夢中になった。
ロックは反体制とか反抗者の音楽だと思っていた。何かを否定する事から始まるものだと。Punk Rockが大好きになった。前時代を否定する事でロックを更に前に進めたように感じた。
でも前述の通り、僕には否定するものなんてちっともなかった。だから僕は自分を否定した。自分が大嫌いだと思った。僕にとってのロックは、パンクはそこから始まった。

自分にとってのNirvanaとロックとパンクがイコールで結びついた瞬間だった。

そうやって自分が大嫌いで死にたいと思っているのは僕だけじゃないと、カートの声を聴いてる時は一人ぼっちじゃない気がした。
夜中寝れなくてヘッドホンをして夜通し聴いていた。”Nevermind”と”In Utero”を繰り返し繰り返し、レコードだったなら擦り切れてしまっていたという程聴いていた。
最初からカート・コバーンがもうこの世界に居なかったから余計に気持ちが膨らんだし、憧れた。好きになればなるほどに焦がれた。
そんなカートが見限った世界がもっと嫌いになった。僕も死にたいと思った。そんな事できやしないくせに。

“I hate myself and want to die.”この言葉はカートが世界中にかけた魔法だ。ロックにパンクに夢中になれるようにクソガキ共にかけた魔法。それと同時に大人になろうとしないクソガキ共にかけた呪いだ。”ほらお前は一人じゃないぜ”そういう風に僕には聴こえたんだ。こんなに優しくて残酷な悪魔的な言葉は他にないと思う。

自分なんて大嫌いだ死にたいなんて言ってるやつには本当は何もできない。
だけれども、カートはその音楽と彼にしかないあの歌声で世界を変えてしまった。彼の苦悩なんて僕には本当は理解できない。
でも、ドキュメンタリーで見たカートは笑っていたし、つまらない事に文句も言っていた。世界を変えたけど、カートも僕も世界中のロックキッズも同じ人間だ。そんなことに初めて聴いてから何年も経ってから気付いた。カートが世界を変えたのは純粋に彼の音楽が素晴らしかったからだ。決して自殺したカリスマだからじゃない。

カート・コバーンは弱虫で情けない人間だ。自殺なんて絶対すべきじゃない。だけど彼はそんな選択をしてしまった。もう少しだけ生きていれば良かったのにさ。

もう僕はカート・コバーンになりたいなんて思わない。格好悪くたって生きてた方が何倍も良い。
そんな事に気づかせてくれたのも、あの頃の僕を救ってくれたのもカート、あなたの音楽と声だったよ。

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