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天国の先にあるもの

THE BACK HORN 「マニアックヘブン」 Vol.12

私がTHE BACK HORNの曲を初めて聴いたのは、15年くらい前だったと思う。
家族の誰かが買ったのか、借りたのか、『人間プログラム』『心臓オーケストラ』という2枚のアルバムがテーブルの上に置いてあった。

見た瞬間、胸がざわざわするような不気味なジャケットに惹かれ、聴いてみたくなった。
再生ボタンを押すと、CDコンポのスピーカーから、聴いたこともないような音楽が流れてきた。
不気味、暴力的、破壊的、不安……そんな印象だった。
でもどこか美しくて寂しくて、妙に惹かれてしまった。
いつの間にか部屋に西日が差し込み、アルバムは2周目に入っていた。
 

そんな出会いから15年経った2019年の夏、THE BACK HORNの自主企画イベント「マニアックヘブンVol.12」が、福岡・東京・岡山の3ヶ所で開催された。
今までどうしても都合がつかなくて、一度も行ったことのない、演出もセットリストもマニアックづくしのライブ。
15年我慢したご褒美なのか、なんと3ヶ所全て行けるという奇跡が起きた。
音楽の神様ありがとう、と思った。

初日の福岡DRUM LOGOS、会場に足を踏み入れた瞬間、ステージに掲げられたバック
ドロップが目に飛び込んできた。初めて生で見る「マニアックヘブン」のロゴに、少しだけ脚が震える。

異空間だ、と思った。地下の深い深いところまで続くマンホールに入ってしまったような気分だった。なんと、天国は地下にあったのか。
そこから開演まで、あまり記憶がない。ただひたすら、バックドロップを見つめていたような気がする。

何分経ったのだろう。客電が落ち、ハッと我に返る。大歓声の中、メンバーが登場し、これ以上ないくらいの動悸を感じていると、聴こえてきた1曲目は『野生の太陽』だった。
15年前の不気味なジャケットと、西日が差し込む部屋を思い出し、ありとあらゆる感情がごちゃ混ぜになり、自然と涙が溢れた。

その後も、ずっと聴きたかった曲、聴けるとは思っていなかった曲が次々と飛び出す「マニアックヘブン」。
ライブDVDでしか観たことのなかった『楽園』では、Ba.岡峰光舟の魅力が詰まったベースプレイに息を呑み、セットリストの中で一番印象に残る曲となった。
 

そんな中、Vo.山田将司から、10月に出る新アルバム『カルぺ・ディエム』の紹介がされる。
今までで一番、メンバー4人それぞれの作詞作曲が多いこと。今のTHE BACK HORNを象徴するアルバムになったこと。
「このアルバムを、もっともっと沢山の人に聴いて欲しい」
当たり前のことのように聞こえるかもしれないこの言葉に、私は衝撃を受けた。

新旧のマニアックな曲をそらで歌えるような、コアなファンが半数以上を占めるであろうイベントを、良い意味で閉鎖的に仕上げようと思えば出来るはずだ。
実際、いつものライブとはまた違う雰囲気と熱気があったし、3公演限りの非日常・異空間という側面は確かにあると思う。

でも、この「マニアックヘブン」という場で、結成20周年を迎えたバンドが“今”のTHE BACK HORNを沢山の人に聴いて欲しい、と訴える重みと熱さに、私はこれ以上ないくらい心を打たれたのだ。
ああ、この「マニアックヘブン」は地下の深い深いところになんてなくて、日常のすぐ隣にある天国なんだな、と思った。
この天国を抜けると、THE BACK HORNの新しい“今”に繋がるのだと。
 

THE BACK HORNの曲は、いつも日常の中にある。
そして、THE BACK HORNというバンドは、いつも日常の少し先で待っていてくれる気がする。

山田将司がいつもライブ終盤に言う「また生きて会おうぜ」。
その約束通り、生き様がキラキラだろうがボロボロだろうが、生きていれば必ず扉の先にいてくれるのだ。

相変わらず不気味で、暴力的で、破壊的で、不安で、寂しくて、でも笑ったり、抱きしめたり、心がダンスしたりもする、THE BACK HORNの“今”が大好きだ。
 

“今”を共有するために、彼らが待っている限り、また生きて何度でも会いに行く。

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