2219 件掲載中 月間賞発表 毎月10日
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

機械仕掛けの社会の中でどうやって生きていく?

SEKAI NO OWARI TOUR 2019 「The Colors」三重公演

2019年8月25日。三重県営サンアリーナ。
 

会場内に鳴り響いていた重低音が次第に大きくなっていく。観客が立ち上がる。いよいよ始まるという興奮、ついに終わってしまうという寂しさ、様々な感情が入り混じったざわめきが起こる。そこにはツアーファイナルならではの雰囲気が作り出される。
 

「NOT FOUND」という機械的な音声とともにSEKAI NO OWARIの4人がセンターステージに登場する。しかし、ただのセンターステージではない。そこは、映像を映し出すための檻のようなもので覆われていた。この檻のようなものは、私に、Fukaseがかつて入院していたという閉鎖病棟を彷彿とさせた。
 

最初に披露された曲はアレンジが施された「Death Disco」だった。Fukaseはここから出してくれと言わんばかりに檻に片足をかけながら、狂気じみた目で歌う。曲が進行していくにつれてその檻は上へと上がっていき、はっきりと4人の姿が現れる。
 

ライブも中盤に差し掛かった頃、聞き慣れないSaoriのピアノソロが始まる。何の曲だろう。それはすぐに分かった。「illusion」だ。

 「生きていくことがあまりにも便利になったから
  生きているという実感がなくなっている
  僕の知っている「現実」がどうか嘘でありますようにと
  神様の「形」の「人形」に祈るんだ
  
  機械仕掛けの「僕らの真実」はいつか
  貴方の心を壊してしまうだろう

  僕たちが見ている世界は加工、調整、再現、処理された世界
  だから貴方が見ているその世界だけがすべてではないと
  皆だってそう思わないかい?」(illusion / SEKAI NO OWARI)

Fukaseの歌声とSaoriのピアノの音色だけで奏でられた「illusion」は、いつにも増してその歌詞がすっと心の中に入り込んでくる。
 
 

このあたりで、ふと思ったことがある。それは、4人それぞれの色が際立っているということだった。ダンスパフォーマンスをするFukase。美しいピアノソロを奏でるSaori。自身が作詞作曲を手掛けた曲を歌うNakajin。ドラムをはじめとして様々な楽器を操るDJ LOVE。そんな4人が再び同じステージに立った時、SEKAI NO OWARIというひとつの色となっていく。
 
 

ライブは終盤を迎え、Fukaseがおよそ1年前に伊勢に来たことを語りはじめる。

『INSOMNIA TRAINが終わるか終わらないかくらいの時期に、僕の親しい友人が亡くなりました。僕はそれをどんな風にどんな顔をして受け止めればいいのか分かりませんでした。それで、神様によろしくお願いしますと言うために、伊勢神宮に一人旅に来ました。帰る日は決めていませんでした。曲が出来たら帰ろうと思っていました。結論から言うとその曲は出来なかったんですけれども。でも、伊勢から帰る新幹線の中で、The Colorsというライブは「生きる」というコンセプトでやろうと決めました。「生きる」ことについて歌っている、様々な色を持った曲を歌うことで、機械仕掛けの社会でどのように生きていけばいいのか、その答えを見つけようと思いました。』

The Colorsは伊勢の地で始まり、伊勢の地で終わろうとしている。

その伊勢の地で川を見ながら書いたという「エデン」。ギターを弾くNakajinと向かい合って歌うFukase。その歌声は言葉では表現できないほど優しく、会場全体を包み込んだ。
 

本編が終わると、アンコールでは、Fukaseが自身にとって大切な曲への想いを話しはじめた。

『このツアーではセットリストが結構変わったりしていて。次の曲はツアーの中盤から入れた曲なんですけれども。最終的にはこの曲に行き着くために、このツアーをやってきたと思います。作曲がNakajinで作詞が僕なんですけれども。レーベルの方やレコード会社の方には、「歌詞が歌詞だけに、テレビやラジオでは流せないから、もっと多くの人に届く歌詞に変えた方がいいんじゃないか」と提案されたこともありました。確かにそうかな。そうだよなと。でも、それをメンバーに相談すると、「その歌詞がいいと思って書いたんでしょう。Nakajinのメロディーにはその歌詞が合っているよ。」そう言ってくれたんです。それを聞いて僕はこのままの歌詞にしようと思いました。僕の大切な曲です。聴いてください。銀河街の悪夢。』

涙があふれた。私の視界はぼやけたままだった。でも、赤い照明に照らされて、座り込みながらベースを掻き鳴らすFukaseの姿だけははっきりと見えた。私はその姿を忘れることがないようにと胸に刻んだ。
 

「銀河街の悪夢」が終わり、暗闇が会場を覆う。長い沈黙の後、Fukaseの言葉が聞こえてきた。

『この曲を届けるために、このツアーをやってきました。聴いてください。すべてが壊れた夜に。』

歓声とともに曲が始まる。最後の曲だ。

 「一人でゆくキミ 止めはしないさ
  それも含めキミの人生だろう
  でも僕は知ってる 分からない事を
  それをキミに届けに来た

  僕らはみんな生きている
  そんな当たり前な事は知っていると
  でも知ってる事を
  分かってるならそんな顔にはならないんじゃない?

  La….. 」(すべてが壊れた夜に / SEKAI NO OWARI)

この曲では、4人それぞれがマイクの前に立ち、「La….. 」というサビの部分は観客も一緒に歌う。

ラストサビの直前にFukaseの力強い声が響き渡った。

『魂の叫びを聞かせてくれよ!!!』

会場はひとつになった。そこには魂が宿っていた。
 
 

「WHAT A BEAUTIFUL WORLD」

この言葉を残して、 SEKAI NO OWARIは一体感に包まれた会場を後にした。
 
 
 

情報があふれている現代社会では、インターネットで検索すればほとんどの答えが見つかる。でも、もし「NOT FOUND – 見つかりません」と応答されたら、私達は自分自身の身体を使ってその答えを探さなくてはならない。海を見渡したり、空を見上げたりしながら、「The Colors」自分だけの色を探していく。そうしていくうちに「WHAT A BEAUTIFUL WORLD – なんて美しい世界なんだろう」と気付くことができるのではないか。私はそう思った。
 
 

SEKAI NO OWARIが私達に届けてくれたものは、今何かに立ち向かっている人、立ち向かってきた人、そして、これから立ち向かうであろう人、そのすべての人に「生きるヒント」として寄り添ってくれるだろう。

  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい