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いつか歌になった歌からもらった風景

青谷明日香『帰っておいで』を聴いて

忘れかけてた 恋しい景色 小さな手を 握りしめて 行こう 帰ろう

その唄い出しの一文字から、私はどこにいても、一瞬で木々の揺らぎや、川のせせらぎ、風の感触や匂い、記憶の中にある風景に包み込まれる。
 

すーっと大地に染み込む恵みの雨のように、体全体に染み込んでいくような優しく特徴的な唄声と、ピアノとヴァイオリンのノスタルジックなメロディ。
唄と音楽という、目では見えないものから、心に映し出される風景に、ああ、私には故郷があるんだ、ということを思い起こさせられる。

言葉と声とメロディから生まれてくる情景にじんわりと心が熱くなってくるような体験をした。

青谷明日香さんの『帰っておいで』
 

この曲は、秋田県の映像作品、True North, Akitaの楽曲としても使われた。
そこに息づく人々の生活の一部がありのままに切り取られた映像と相まって、より、生まれた場所の空気に身を包まれるような体験をした。
反響は大きかったようで、それは生まれ育った土地がどこであるかに関わらなかった。
この曲を通じて、私には懐かしく、心に残る風景があることを認識させられ、またそれは、たくさんの人のそれぞれの心の中にあるものなのだ、ということを実感させられた。

誰しもが、生まれた場所、育った場所を持っていて、心と体が、それを記憶している。
短い言葉の連なりと、ピアノとヴァイオリン、というシンプルな構成が、その記憶の海の中からこれほど多くの風景を掬い出し、映し出すことに、音楽の、唄の素晴らしさを見た。

唄とは、そういうものなのか、音楽を生み出すことができる人間というのは、素晴らしい、と、思った。

心や体の中にあるものが、言葉とリズムと音を得て、歌になった。
 

この曲が収録されているアルバムのタイトルは

「いつか歌になる」
 

私はこの歌を耳で聞かなくても、心の中で聞くたびに、一瞬で故郷へ旅をすることができる。
 

いつか歌になった歌は時空を超え、人の心に息づく。

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