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2017年6月21日

はっちゅ (22歳)
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地方でライブを見る、と言うこと

6/16 Keishi Tanaka presents『ROOMS TOUR 2017』青森編

おそらくこのライブがあった日、音楽好きを名乗る人たちはMステを見ていたか、THE ORAL CIGARETTESの武道館を見に行ってたであろう。僕もできるならそうしたかった。でも、それ以上に行きたい、大事にしたい用事があった。それがこの日見に行ったライブだった。
 
 

僕が今住んでいる青森は、「全国ツアー」でも回ってくることが少ない地域だ。大抵のツアーでは札幌と仙台、頑張って来ても盛岡くらいまでしか回らないことが多い。

青森に引っ越すまで住んでいた北海道のある町は、そもそもライブハウスがなかった。来てくれるとすれば、47都道府県ツアーくらいかなり大規模なツアーを打てるほど体力のあるミュージシャンが、近隣の比較的大きい街に来てくれた時くらい。そういう環境でずっと暮らして来たから、基本的にライブは遠出をして頑張って見に行くものだ。

ついでに言えば、こういう地方において結成〇〇年アニバーサリーライブみたいなものが開催されることはよほどその土地に思い入れがない限り行われないし、自分の好きなバンドが都合よく居住地でそういう企画をしてくれることなんて殆どなかった。同郷だから誇りを持って応援出来る、ということもあるだろうけど。

そういうわけで、僕が住んでる地域で見る、頑張らなくても見に行けるライブはその殆どが「地方までわざわざ来てやったぞ」と組まれたライブである。思い入れというよりも単にツアーの一会場でしかないわけだ。でも数年に一回そういうライブにしか来れない人にとって特別なライブであることは変わらない。もちろん、首都圏の大きな箱やフェスとは比較にならないくらいの近さで見ることが出来る、という圧倒的な利点がある。そしてそれ以上に、滅多にライブを見れない人の期待に応えようとしてか、地方のライブならではの、他の会場では見れないようなミラクルが起きる気がする。

僕が見た限りでも、あるバンドは滅多に応えてくれないダブルアンコールをやってくれた。あるバンドは機材トラブルで演奏できなくなった曲の代わりに初期の代表曲を久々に演奏してくれた。ホール用とライブハウス用の2種類セットリストを用意してたグループは、そのどっちでもないセットリストを披露した。そんなことが、毎回ではないけど目撃できた。あとは普通に街中をメンバーがうろついてたり普通にラーメン食べてたりとか。

この日見たKeishi Tanakaのライブツアーは、自分の部屋の中で弾き語りをする、というようなコンセプトで回っているツアーの公演だ。会場は20人前後の収容人数だったと思う。入ってすぐ、そのミラクルに出くわした。目の前に居たのはKeishi Tanaka本人だった。嘘だろと思った。要するに最小限の形態でツアーを回る以上物販も本人が行なっていると、そういうわけだったのだが、まさかライブ見に行って扉開けたら本人がいるとか、そんな経験はしたことがなかった。

ツアーが進行中のため具体的な曲目については控えるが、この日歌われたのはriddim saunter解散後発表された三枚のアルバムとカバー曲だ。そのカバーの選曲を含め、意外性と同時にその曲が歌われる必然性、そしてその曲そのものの良さと田中のシンガーとしての魅力が爆発するような、そんなライブだった。「うおー!!!!!その曲を歌うのか!!!!!」という感情の高ぶりは、決して一度や二度ではなく、ライブ中たびたび起こっていたと思う。これこそミラクルだった。

一方で、弾き語りライブだからというわけではなく田中の歌には「光と影」「陰と陽」「静と動」がはっきりと見える。アコースティックギター一本と椅子が用意されたステージの上で、のびやかにかつ落ち着いた雰囲気で歌いながら、曲が進むにつれて我慢できなくなって立ち上がり歌い出すような、そんな光景が彼の弾き語りにおける独自スタイルだ。「普通のバンドセットと同じくらい汗だくになる」とは、本人のMCでの一言である。

また、観客との距離の近さもこのツアーの特徴だと思う。数回、リクエストを募る部分があった。つまりは、あらかじめ決められたセットリストはなく、いくつか準備された曲の中からその場で選曲して歌われている。3rdアルバム『What’s A Trunk?』は特に弾き語りのことを考えず作曲されたということもあり、音源とは違う雰囲気で演奏された楽曲の新たな一面に触れることができた。

たぶん、その気になればアコギだけでモッシュすら起こせるのではないか。彼のライブを生で見るのは初めてだけど、この日のライブを見ただけでそう思ってしまった。思えばriddim saunterの時から常にそうだった。音楽性そのものはメロコアやパンクロックに比べても手数や歪みは少ないけれど、彼の音楽を聴いていると本当にじっとしていられなくなるような楽しさや幸福感を感じる。いろんなジャンルの音楽を独自に飲み込みながら出来上がったサウンドだからかもしれないけど、聞いていると動き出したくなる。歌ってる本人がそうなのだから、観客もそうなってしまうんだろう。
 

ライブの後、本人が売り子をしていた物販で缶バッチを買った。そこにはこんな言葉が書かれていた。“Don’t behave yourself in my Room!” 僕の部屋では行儀良くしないで、小規模の会場で座って見るライブは初めてだったけど、だからこそ味わえた感動があった。だからこそ、このライブの感想は「来てくれてありがとうございました」だ。それが一番感動を過不足なく伝えられると思う。

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