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Mr.Childrenに「マーブルパン」を食べさせられていた

「ウカスカジー TOUR 2019 WE ARE NOT AFRAID!!」に参加して思ったこと

2019年8月29日(木)、広島県、上野学園ホール
「ウカスカジー TOUR 2019 WE ARE NOT AFRAID!!」に行った。
 
 

そこで、私は今までMr.Childrenに「マーブルパン」を食べさせられていたんだということに気づかされた。
 
 

Mr.Childrenのボーカル桜井和寿は
Mr.Childrenとしての活動にとどまらず多岐に渡り精力的に活動をしている。

Bank Band
ウカスカジー
櫻井和寿

しかし、私は2011年頃にMr.Childrenに本格的にのめり込み始めてから2019年5月12日までの約8年間、白いタンクトップの下着を着て白いステテコを穿きちゃぶ台の前で胡坐をかいて口をへの字にしている昭和の頑固オヤジのように断固として「私はMr.Childrenだけが好きだ。Mr.Childrenにしか興味はない。桜井さんの他の活動には一切興味がない。」と言い張っていた。Bank BandやウカスカジーのCDを借りてiTunesには入れるものの、良く言えばふわっと、悪く言えばものすごく適当に流し聴きするくらいで、フェスやライブなどまず行く気もなかった。本当に0.1mmも、0.1gも、0.1hPaもなかった。仮に、怖い人に「お前!!本当はap bank fesやウカスカジーのライブに行きたいと思ったことがあるだろう!!!本当のことを言え!!!楽になるぞ!!!」と5万回くらい肩を揺すられ意識が朦朧とし肉体と精神が限界を迎えたとしても「本当に!!!本当に1回も行きたいと思ったことがないんです!絶対に!一瞬たりとも思ったことはありません!!」と全身の水分を全て涙と鼻水に変えて穴という穴から噴出させてでも意思を貫き通すくらい、心の底からそんな気持ちを持ったことはなかった。

しかし、2019年5月12日に京セラドームで本人たちから直接目の前で突きつけられた「タイムリミット」。私の断固たる決意は揺らいだ。もしかしたら、直接桜井さんの声を聴ける回数はもう限られているのかもしれない。「この先もMr.Childrenが永遠に続くことはございません」「Mr.Childrenは必ずいつか終わります」。それは今までもずっと確かに目の前にあった事実なのだけど、きっと今まで透明マントか何かで覆い隠されていたのだ。今までは決して取り払おうとしなかったその透明マントのようなものを、本人たちに突然目の前でバッと取り払われた感覚だった。明日が来る保障などどこにもない。明日のことなどこの世界の誰にも分からない。だから今心のままに自分の思う道を行け。私が14歳の時に初めて知ったMr.Childrenの曲はそう言っていたじゃないか。何を迷っているんだ。行け。世界が平和で自分の命があり健康である限り行くしかないんだ。

と、あたかも自分だけの意志で決めたように書いているが、実際は悩みを打ち明けて色んな方にそっと背中を押していただいたおかげで私はMr.Childrenではない2つのライブに申し込むことができた。そして幸運にも参加する権利を掴んだ。

2019年5月12日は大阪、6月2日は沖縄でMr.Childrenの声を聴き、
2019年8月3日に宮城県石巻市で櫻井和寿の声を聴き、
2019年8月29日に広島でウカスカジーの声を聴いた。

私はウカスカジーのライブに行くのは初めてだった。ちなみに、ウカスカジーというのはギターを弾きながらもラップをするラッパーでありミュージシャンでもあるGAKU-MCと、そのサッカー友達であり仕事仲間でもあるMr.Childrenのボーカル桜井和寿の2人によるユニットである。「GAKU」と「SAKU」を合わせると「GAKUSAKU」になり、それを反対から読むと「UKASUKAG」になり「ウカスカジー」になるというカラクリである。とにかく、私は桜井さんがMr.Children以外の曲を歌うと一体どうなってしまうのか、ものすごく最高に楽しみでワクワクが止まらなかった。ワクワクと書くと楽しいように思えるが実際はこの先一体何が目の前で巻き起こるのか、想像もできない未来にものすごく緊張してただひたすらに気持ち悪かった。ライブには1人で行ったが、開演前に隣に座っている方と仲良くなった。10分ほどしか会話していない全くの初対面の方に対して「いや、本当に緊張します。やばい。どうしよう。胸が苦しい。無理かもしれない。すみません。本当に緊張して気持ち悪いです。胸が詰まってます。緊張する。どうしよう。無理かもしれない。近い。緊張する。無理です。気持ち悪いです。」と自分の心情を矢継ぎ早に吐露し続けた。隣の方はにこにこ微笑みながら「分かります。分かりますよぉ。」と言ってくれた。ものすごく優しい方だった。私はどうやらどこまでも幸運に恵まれているらしい。

そしてウカスカジーの1曲目が始まった瞬間、心の中のストライクゾーンのど真ん中に最速のストレートがズバァアアアァーーーーン!!!とものすごい音を立てて飛び込んできた。そして本気で思った。

「この人は、3週間前に石巻市総合体育館で花の匂いを歌っていた人とは絶対に絶対に絶対に別の人だ。」

私は混乱した。おかしい。絶対におかしい。どう考えても目の前で歌っているのは3週間前に石巻で見た人と同じ人なはずなのに、全くの別人だとしか思えなかった。私の全細胞が震えあがり「この世の表現の真髄」を見せられたとまで思ったあの「花の匂い」を石巻で歌っていた櫻井さんは一体どこに行ってしまったんだ。待て。一体誰なんだこれは。櫻という字が桜に変わっただけでこんなにも別人に変貌するのか。怖い。一体どうなっているんだ。目の前でニッコニコに笑いながらキレッキレのステップを踏みまくり音楽に全身を委ね華麗に踊り狂っているこのおじさんは一体誰なんだ。声は、声は完全に桜井さんの声なんだけど、見た目も桜井さんの顔なんだけど、一体このおじさんは誰なんだ。私は困惑して開いた口が塞がらないまま右腕を突き上げ続けた。

僚友であるGAKU-MCと2人で歌い動き踊りながら、音を奏でるバンドアミーゴと一体となり、そして観客全員を巻き込みながら、「音楽」そのものを糸のように紡いでいきそして大きくたなびく1枚の布として織り成していく一人の人間の姿がそこにはあった。

そうか、この人はいろんな場所で、いろんな人たちと、全く異なる糸を紡いで布を織り成しているんだ。

だから、石巻で見た櫻井和寿とウカスカジーの桜井和寿が全く別人としか思えないのは当たり前のことなんだ。それでいいんだ。一気に腑に落ちた。

ウカスカジーのライブは
熱くて、涼しかった。
楽しくて、切なかった。
笑えて、感動した。
真面目で、卑猥だった。

既に完成されているものをステージに持ってきて
ウカスカジーとバンドアミーゴの全員で
ものすごい熱量をもって叩いて砕き散らしながら、
その破片でまたしっかりと新しいものを作りあげていく。
まさに「破壊と創造を同時に行う瞬間」を目の当たりにした。

「一人の人間が布を織り成す」と前述したが、「一人のシェフが見知らぬ土地に修行に出て色んなシェフと食材で試行錯誤しながら全く新しいレシピで美味しい味のする1枚のシートを作り上げた」と表現を変えさせてほしい。

例えば
Bank Bandはカスタード。
ウカスカジーはチョコレート。
櫻井和寿はストロベリー。

桜井和寿以外のMr.Childrenのメンバー、田原健一・中川敬輔・鈴木英哉は、桜井和寿が別の場所で活動している時もきっと手を休めることなく、3人がそれぞれの場所で、それぞれのペースで、パンの生地をこねている。

その3人それぞれがこね上げたパン生地を合わせ、そこに桜井和寿が修行から持って帰ってきた色んな味のシートを折り込む。この味はどれくらい入れるのか、どの味とどの味をどう混ぜるのか、混ぜたら何味になるのか、それは果たして美味しいのか、自分たちにとっては美味しくてもお客さんはこれを美味しいと思うのだろうか。そんな試行錯誤を重ねて出来たマーブルパンの生地。

それを4人でじっくりと発酵させて生地を完成させる。

そしてライブ会場で、観客と一緒になりものすごい熱量で生地を一気に焼き上げる。

完成したマーブルパン。

終演後、観客は焼き立てのマーブルパンを頬張りながら
「今回はこんな味なんだ・・・」
「いやー・・・これは今までにない味。」
「チョコとストロベリーの部分が美味しい!」
「いや、カスタードとストロベリーの部分こそ最高だった。」
「3種類が一気に混ざったあの部分がすごく好き!」
「自分はチョコの部分だけの所が好きだったなぁ。」
「次回はメロン風味を入れてみてもいいと思うけどなぁ。」
と口々に感想を言い合う。

そしてマーブルパンを目一杯自分の体に取り込んだ観客は
「あー!今日のマーブルパンも最高に美味しかったー!」
とまた新しいエネルギーを貰い、自分たちそれぞれの世界でまたがんばることができる。

そんな場面を、Mr.Childrenのシェフ4人は
遠くからにこにこ笑って眺めていることだろう。

今まで自分はMr.Childrenしか聴いていなかったつもりだったけど、そのMr.Childrenには、桜井和寿がいろんな場所で作り上げた最高のシートが知らずに折り込まれていた。Mr.ChildrenとBank Bandとウカスカジーと櫻井和寿は、全く別物なんだけど、別物ではなかったんだ。知らず知らず、Mr.Childrenと一緒にBank Bandもウカスカジーも櫻井和寿も、自分の中に取り込んでいた。そんなことに気づかされた。

この日見たウカスカジーのライブも、きっといつかMr.Childrenの一部になる。

またマーブルパンを食べられる日が来るという保障は今の所ない。
次に食べるマーブルパンは一体どんな味なのか。
楽しみで楽しみで、その日を待つのも幸せで、やっぱりこれが私の生きる喜びだなと思った。

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