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不完全な「スーパースター」

ROTTENGRAFFTYの20周年ライブ「Beginning of the Story」振替公演

2019年7月30日、長野県・松本Sound Hall a.CでROTTENGRAFFTYのライブが行われた。

それは本来なら行われる予定ではなかったライブ。5月16日に、同じく松本Sound Hall a.Cで行われたライブが一時中断したため、振替公演として開催されたのだ。

ROTTENGRAFFTYは今年20周年を迎える。そのため、3月から「20th Anniversary Beginning of the Story」と銘打った全国各地を回る対バンツアーが行われていた。

5月16日、そんなツアーも佳境に入り、松本ではCrossfaithを迎えてのライブ。過去に何度もフェスや対バンで熱いライブを重ねてきたCrossfaithとのライブということもあり、バンド側もフロア側も熱気に包まれていたのを覚えている。Crossfaithのライブが終わり、ROTTENGRAFFTYへとバトンが渡ったその中盤で、それは起こった。

『アンスキニー・バップ』という曲の最中に、ぶつりと照明が落ち、スピーカーから音も出なくなってしまったのだ。当然ながらフロアもステージもざわめき、スタッフの方々がトラブルに対処しようと試みる。ステージでの尽力もあり、照明は復活。ひとまずライブが再開し、ほっと一息をついたものの、不意打ちのように繰り出された『・・・・・マニュアル02.5』の最中、また照明が落ちてしまった。2回目の中断は、1回目に比べてどうしても不穏な雰囲気が漂う。フロアから見ていて、ステージが今までとは全く違う空気になっていることが分かるからだ。

そもそも再開するのだろうか、このまま終わるのではないか。勝手に不安を募らせていたが、ステージは再開。ステージの照明を点けると停電してしまうので、急遽簡易の照明を利用するという処置を受け、ライブはリスタートする。

ライブ再開後の曲は、普段なら照明の華やかさが曲の魅力をよりかきたてるものが多かったように感じる。例えば『零戦SOUNDSYSTEM』では、赤々と輝く妖しい照明が、どこか儀式めいた雰囲気を持つ曲の狂気をより引き出してくれる。『D.A.N.C.E.』では、カラフルに揺らめく照明が、お祭り騒ぎのような雰囲気を盛り立てるのだ。

急遽現れたメンバーを照らすただ真っ白な照明は、ライブ再開を手助けしてくれたありがたい存在だったが、やはりいつものステージ照明とは全く違うのだな、とひしひしと感じさせられた。

それでも「照明が機能しないなら身体一つで行くしかない」と言わんばかりな、ROTTENGRAFFTYのライブにはやはり圧倒された。照明という大事なパーツを欠いて、望まぬ形で不完全になってしまったライブを、純粋にパフォーマンスで埋めるのだという勢い。

さらに、1回目の中断で出てきたベースの侑威地さんによる「じっとしときや」という気遣いの言葉、2回目の再開後にギターのKAZUOMIさんが言った「照明が点けられないから、後ろの方は暗いと思う。倒れた人がいたら助けてあげて」といったフォローの言葉も、不安だったこちらの心に染み込むものがあった。

正直言って、これはこれでレアなライブだったのではないだろうかなどと、ファンの気楽な立場でそんな軽薄な思いを抱いていた。しかし、ボーカルのNOBUYAさんの「照明もライブの一つだと思っている」と言う言葉で、それは浅い考えだったと思い知らされる。照明という大事なパーツを欠いたまま、ライブが終わってしまったのだから。

そして振替公演が決定。2カ月ほどの期間を空け、その間にツアーも前半戦を終えた。

振替公演は、前回のチケット半券を持っていれば無料で入場できるというシステムに。対バンという形ではなくワンマンで行われることになった。

正直なことを言うと振替公演が平日だったこともあり「そこまでの人は集まらないのでは」などと勝手な予想をしていた。

けれど、当日の松本Sound Hall a.Cはそんな想像よりもずっと異様な熱気に包まれていた気がする。始まる前から感じるフロアの圧やずっと待っていたと聞こえてくるような熱狂。

19:00を過ぎた頃、会場BGMがふと止まったかと思うと、SEである『610行進曲』の勇ましいメロディーが流れ始めた。途端に先ほどを越えるように圧が増し、よりフロアのボルテージが高まっていくのを感じる。

610行進曲が鳴り止むかといった頃、ボーカルのN∀OKIさんが「前回以上の衝撃を与えに来たぞ!」と叫んだのを覚えている。瞬間に、前回中断してしまったライブのシーンが脳内に浮かび、身が震えるくらいの興奮を覚えた。

「待たせたなぁっ!」

ギターのKAZUOMIさんがフロアの空気を裂くように叫ぶと『切り札』のイントロが始まる。どちらかというとライブのラストやアンコールでセトリに入ることの多い『切り札』からのスタートに、否が応でも熱くなった。

『暴イズDE∀D』や『毒学PO.P革新犯』といった、クセものな雰囲気あふれる曲から『PLAYBACK』や『世界の終わり』など、フェスではおなじみの暴れさせる気満々の曲が続く。

そして息継ぐ間もないライブの中『生クリーム』に『鬼ごっこ』、『・・・・・マニュアル02.5』のショートバージョン3曲が、メドレーのように走り抜けていった。これがまた、こちらの体力を奪う気なのではと思うくらいの激しさ。だが前回、2回目の奇しくも中断してしまった『・・・・・マニュアル02.5』が最後までたどり着いたとき、不思議な爽快感を覚えた。

そしてメンバーやフロアを照らす赤い照明、本能的な不安を掻き立てられるようなサイレンが鳴り響いたとき、鳥肌が立つ。『零戦SOUNDSYSTEM』だ。

ファンだけでなく、メンバーもどこか異様な空気に包まれるこの曲では、いつも柔らかな雰囲気をまとうドラムのHIROSHIさんやクールなイメージのあるベースの侑威地さんもなにかの儀式に没頭していくような、狂気をまとうのだ。

サイレンが鳴り止まない中、KAZUOMIさんが「お前らと心中するつもりやからな」と宣言。赤い照明に染まったまま「音で!●す!お前らを音でぶち●す!」とマイクに噛み付くように叫ぶものだから、もうこちらも正気を保つことができない。

そんな激しい曲から『アンスキニー・バップ』は、一転、明るく優しい曲調だ。そして、あの日中断してしまった曲でもある。少し不安な気持ちがよぎった。きっとスタッフの方々やメンバーは万全の状態にしてくれてるのだろうけど、また中断しないとは誰も断言できないのだから。だが純粋な楽しさが、そんな不安を上回るように軽く吹き飛ばしてくれる。

あまりの高まりにもはや混乱の渦に陥るフロアに対し、NOBUYAさんが「こんな熱いライブなら、また停電するかもしれへん。でもそうなったら今度はお前らが俺らを照らしてくれよ」と笑った。

そして「俺らとお前らの歌。ライブハウスの歌!」という言葉から始まる『NO THINK』。

『NO THINK』の中でも特に好きなフレーズがある。

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いつも悩んでばかりいて
いつもつまんない顔ばかりして
大人に成りきれないなら
いつでもここに来て叫べばいい

(『NO THINK』より引用)
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ROTTENGRAFFTYが一貫して、何度も何度も伝えてくれる「年齢なんかただの記号」や「俺らはいつでも泥臭いライブハウスで待っている」という煽りがこのフレーズに詰まっているような気がする。リアルの生活で疲れきってしまうことがあっても、スレた気分になっても、ライブハウスはROTTENGRAFFTYがいる。そしてせめてライブハウスにいる間は、子どものままでもいいのだと思わせてくれる。

そして、NOBUYAさんが「一人しかいないアナタへ 代わりのいないアナタへ」というフレーズを先導して口ずさみ、フロアにマイクを譲ってみせる。
フロアにいる人々のコーラスが響き、その様子を見つめメンバーが穏やかな顔で笑う光景は、先程まで戦場のようになっていたライブハウスとは思えないくらい暖かなものだった。

そしてアンコールの2曲、最後の最後まで酸欠で倒れるのではないかという激しさを持ったまま、振替公演は終わった。

ライブの中盤に入った『アンスキニー・バップ』は、N∀OKIさんの「はじめから完全である必要なんてない。一つずつ重ねていけばいい」という言葉から始まったのを覚えている。

その言葉は、はっと立ち尽くしてしまうくらいに深くつき刺さるものがあった。ROTTENGRAFFTYというバンドについて語っていることでありながら、前回の中断についても、そしてフロアにいる自分自身にも言われているようにも感じた。

「完全である必要なんかない」という言葉から始まった『アンスキニー・バップ』は、5月16日のあの不完全だったかもしれない『アンスキニーバップ』から繋がっていたのだと思う。

照明がきらめくステージに立ち、ライブハウスでひときわ輝くROTTENGRAFFTYは、まぎれもなくスーパースターだった。二人のボーカルが
「あなたも誰かのスーパースター」
「そうだお前がスーパースター」と歌う姿を見つめながらそう確信したのを覚えている。
 
 
 

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