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2017年6月21日

isakana (49歳)
57
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JK、来日やめるってよ

ジャミロクワイが、また旅に出られますように

 「JKは何でママにevianくれたのかなぁ?」と娘。「そんなん、ママが可愛かったからに決まっているだろーがぁっ!」と私。

 ジャミロクワイの7年振りの新作『オートマトン』のタイトル曲は、彼らがここ十数年出してきたシングルの中で、私にとって最も癖になる楽曲だった。お得意のディスコチューンでも、キャリアの前期にちょいちょい聴かれた急き立てるような高速ナンバーでも、要所要所できめてくるしんみりバラードでもない。今から35年ほど前、日本のビデオゲーム「パックマン」(日本のオリジナル表記はPUCK-MANだったが、海外においてはスペルがよろしくないということで「PAC-MAN」に変更されたと記憶している。)の音楽を借用したバックナー&ガルシアの「PAC-MAN FEVER」がビルボード誌の全米チャートでベスト10入りして驚愕したが、彼らのアルバムに入っていたようなミサイル音が頭に鳴り響いた。「オートマトン」のサウンドには斬新な未来の音!と言うより、遡った過去からの未来像を模したような印象を受けた。妻と一緒にチラシや雑誌の切り抜き等をまとめたクリアファイルの1つには、ジャミロクワイとエリック・ベネイ(ネオ・ソウル・シンガー)とダフト・パンクが収められていたのは偶然ではなかったのかもしれない。歌詞を読むと、彼らの最大のヒット曲(&ビデオ!)と言っても過言ではない「ヴァーチャル・インサニティ」のような現代社会への警告にも、あるいは現代社会の行く末に混乱しているJK自身のようにも思える。ビデオも見応えがあり、と言っても、登場するパラボラアンテナや、JKの過去の被り物(CDブックレットの最後の方のページでも向かい合っているやつ)、飛来する未確認発光物体といったものを全て解読できているわけではなく、それをネタに子供達と一喋りするのも楽しくはある。

 私の大好きなプリンス(もうすぐ、遂に、『パープル・レイン』のデラックス・エディションが発売される!)が、2015年のグラミー賞で年間最優秀アルバム賞のプレゼンターとして登場した際、「アルバム、って覚えてる?」「アルバムは今だって、重要なものなんだ。アルバムは、本や、黒人の命と同様、今でも重要なものなんだよ。」とスピーチをして、ちょっとしたトピックとなった。うん、アルバムは重要だ。

 特大ヒットしたジャミロクワイの3rdアルバム『トラベリング・ウィズアウト・ムービング~ジャミロクワイと旅に出よう~』に入っている大好きな1曲、「オールライト」には、うっとりするようなイントロが付いている。ベスト盤やシングルではEditされ、なくなってしまっている(ミュージックビデオにもない)のが非常に惜しいと思うのだが、例えば、ディアンジェロの『ブラック・メサイア』における「ザ・シャレード」のイントロのような素晴らしい導入だ。息子にイントロの部分だけを聴かせて「これ誰だと思う?」と尋ねたら「Flying Lotus?」→いや違う、「キリンジ?」「Rhymester?」→いや違う、「D’Angelo?(←これを言って欲しかった)、あっ、JKか!」と正解に至った。「Alright」には、当時レッド・ホット・チリ・ペッパーズのメンバーらが手掛けたヴァージョン“D&C Human Mix”と“D&C Electro Groove Mix”Ruined by Dave Navarro, Chad Smith, and Dave “Shifty” Schiffmanがあり、海外ではプロモ盤で出回っていた。妻に相談したところ「ジャミロとレッチリの組み合わせなら買って良し!」と許しを得て海外通販で購入し、そのデイヴ・ナヴァロのギターが荒れ狂うヴァージョンを「これはこれであり!」と聴きまくっていた。クレジットがRemixed byではなくRuined byというのがまた私のヴァージョニスト魂(?)をくすぐるが、やはり至高のテイクはオリジナル・アルバムに入っているフル・レングス・ヴァージョンだ。

 同じく大好きなメロー・チューン、彼らのデビュー・アルバムに収録の「ブロウ・ユア・マインド」は、Suchmos(彼らが、プリンスがお気に入りの女性3人ユニットKINGと、2016年12月に渋谷WWW Xで行われたSPACE SHOWER Twilight Shower Vol.2に登場していたのをライブ番組の放送で知った時はショックだった。行きたかった。)がカバーしたり、自らのイベントの冠名として使用したりしたことでも有名となっている名曲だ。この曲もまた、デビュー・アルバム収録のアルバム・ヴァージョンが長尺で素晴らしい。こちらの場合は、「オールライト」のようにイントロが付いているわけではなく、ミュージックビデオでは最初に手書きで「BLOW YOUR MIND PART 1」と書かれたレコード・レーベル面が大写しされているように、Part 2となる後半は彼らのバンド名の由来ともなっている「Jam」が繰り広げられている。Part 2の部分ではJKのボーカルは登場せず、心地よいグルーヴが展開していく。初来日でも、二回目の来日でも二曲目に披露され、大歓声を浴びていた曲だ。因みに、初来日決定とこの曲のシングル発売を記念して、大阪のタワーレコードでは“JAMIROQUAI DAY”が開催され、当時関西に住んでいた妻が参加した際のチラシと戦利品(4等のパンフレット)がファイルしてある。

 ジャミロクワイが初の日本ツアーを行った1993年秋。4日間に渡る渋谷ON AIRでの本公演+追加公演は、人気と比べて会場キャパシティが小さいことも手伝ってチケットは取れないでいた。しかし、プロモーターの先行優先予約で何とかチケットを入手できた私と妻(実際に結婚したのは翌月)は、再追加公演となる10月10日の川崎公演に喜び勇んで出陣した。手元に1枚だけ残っているチケットを見返すと、整理番号11番。CLUB CITTA’川崎の柵前右側、最前列に陣取った。この時のライブはテレビでも放送され、いきなり未発表曲から始まろうと、カバー曲であろうと、やたらと盛り上がっていた。
 デビュー曲として大きな話題となった「ホェン・ユー・ゴナ・ラーン?When You Gonna Learn?<いつになったら気づくんだい>」に続いてリリースされた2ndシングル「トゥー・ヤング・トゥ・ダイToo Young To Die<死ぬには早すぎる>」は、彼らが一発屋でないことを証明したナンバー(さらにダメ押しした3rdシングルは前述のBlow Your Mindだっ!)で、特徴的なライブアレンジが施されている。昔の映像を観なおしていたら、娘がこの曲の冒頭で「ダ・チーチーチー」と合いの手を入れていた。娘も息子も、勿論私も大好きなラジオ番組『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で、ブラックミュージック史における伝説的なドラマーであるバーナード・パーディーのドラム・フィルを大特集していたが、正にそのドラム・フィルを含むパートをライブ・アレンジでは冒頭に持って来て、しかも繰り返していたのだ(ドラマー氏だけでなく、キーボードも、ベースも、ギターも、ホーン隊も加わっている。また、初来日時と2回目の来日時にはドラマーは替わっているが、「ダ・チーチーチー」は引き継がれている)。因みに、この曲の「ダ・チーチーチー」も、ベスト盤やシングルではEditされ、なくなってしまっている(ミュージックビデオにもない)が、オリジナル・アルバムのヴァージョンでは2回「ダ・チーチーチー」の波が来るし、マキシシングルやデビュー20周年記念スペシャル・エディションに収録されている10分強のExtended Versionにおいては、3回「ダ・チーチーチー」の波が来る。
ライブ最後はChicのGood Timesに乗せてJKがフリースタイルをかましまくるアンコールとなり、シュガーヒル・ギャングの有名曲である「Rapper’s Delight」とJK自身も前振りをしていたが、JKがカメラに向けて「MARIJUANA PICKERS」キャップをガンアピールする仕草が笑える。
編集されて映像としては残っていないが、ライブ後半の曲と曲の間のあるタイミングで、JKがドラムセットの置いてある台の左端にあったevianのボトルを取りに行ったかと思ったら、そのままステージを斜めにトコトコと歩いて目の前まで来て、「ハイッ」とばかりに妻に差し出した。妻も、「えっ!?」という感じで、とにかくボトルを受け取ったのだが、突然の出来事にポカンとしてしまい、思わず私と顔を見合わせてしまった。普通にライブに盛り上がっていた妻だったが、取り立てて目立つほどきゃあきゃあ騒いだり、「ジェイーっ!」とか声掛けをしていたわけでもなかったから、結構唐突な印象だったのだ。勿論、直接の手渡しだったこともあり、妻も笑顔となり、500mlよりも結構大きなボトルだったので私もおこぼれに預かり、ライブ会場で全部飲みほした。それが、本文冒頭の娘の言葉に繋がっている。

 1995年の2回目の来日は、恵比寿ガーデンホールに参戦した。当時購入したロングスリーブのスエットシャツは、2ndアルバム『スペース・カウボーイの逆襲』からの1stシングル「スペース・カウボーイ」のジャケット写真(つまりあのJKマーク/メディシンマン/バッファローマン型に切り抜かれた紙に巻かれる前のマリファナ)が裏に大きくあしらわれ、今もちょいちょい着ているので、娘に「そのデザインって、どーなのよ」「いかがなものか」「不快に思う人も居るのでは(bv 宇多丸師匠)」と突っ込まれる代物だ。写真内上方にはシングル・ジャケット写真の時よりもでっかく「SPACE COWBOY」とクレジットされ、写真外下にはドーンと「STONED AGAIN」とクレジットされているのが味噌だ。CDでは日本盤オリジナル・アルバムのみにボーナス・トラックとして収録(デビュー20周年記念スペシャル・エディションにおいては、日本だけでなくどの国においても未収録)されている「Space Cowboy[STONED AGAIN]」を表したものだろう。日本盤ではアルバム最後の曲として収録されている「Space Cowboy」は、スペース・カウボーイの帰還をそのサウンドで表していて、5分くらいで曲がフェイド・アウトしていったのかと思えば、再度フェインド・インしてきて最終的に6分半に及ぶ曲となっている。そして、それがきちんと終わった後、更に「Space Cowboy[STONED AGAIN]」が登場してくる。構成としてアルバム・ヴァージョンと[ストーンド・アゲイン]とは同展開だが、分かり易いところでボーカルを録り直しているし、ベースも違う。でも、[STONED AGAIN]は決して幻のヴァージョンではなく、寧ろシングルとして大量にオンエアされ、ミュージックビデオで流れまくった音源は、[STONED AGAIN]を短く編集したものだった(本当はフル・ヴァージョンのビデオを作って、宇宙に放り出されたJKが、遠方に消えて行ってしまうかと思いきや何とか戻って来る、みたいな映像を見せてほしかったなぁ、とか当時夢想していた)ので耳馴染みは良い。結果的には「Space Cowboy」は、アルバム最後で延々13分に及んで展開され、その「去ったかと思えばまた帰って来る」というコンセプトをより明確に提示することとなる。海外アーティストのアルバム日本盤のみに追加されるボーナス・トラックが、アーティストのオリジナルの意向を台無しにするのではないか、というのが以前はちょくちょく取沙汰されたが、ことこのアルバムの日本盤に関しては、私は大好きだ。

 1997年の来日では赤坂BLITZでもみくちゃになったが、1999年のアルバム『シンクロナイズド』のリリース時には、関東では東京ドームだけの公演になってしまった!遠い、あまりに遠い、とショックを受けてチケットを取らずにいてしまった(←ダメ人間)のだが、何とrockin’ on誌のチケットプレゼントに当選し、映画『GODZILLA』のサウンドトラックに収録された「Deeper Underground」の重低音がドームに響き渡るのを体験できた。その節は、ありがとうございました。この時、東京ドームでトイレに行ったら、毎週楽しく観ていたバラエティ番組のレギュラーだったジャニーズの某氏が居て驚いたが、その鋭い眼光に声をかけることはできなかった。この『synkronized』のプロモーション・グッズには、「JAMIROQUAI発光フリスビー」なんてブツがあった。雑誌で当選したそれは、飛ばすと回転しながら側面に電光掲示板みたいな感じで「JAMIROQUAI」の文字が浮かび上がるのだ。数年後、娘・息子共に楽しめるように成長してから、夜に何回か近くの公園に出掛けて遊んでいたら、ある時に地面に叩き付けてしまい壊れて光らなくなり、哀しくなって廃棄してしまったけど、今思うと取っておけば良かったかな。いやいや、そんなメンタリティーが現在の我が家の散らかりっぷりを反映しているから、あれで良かったのだ。娘が「黄色いキーホルダーもあったよね」なんて言っていたが、あのフェラーリとのコラボ・キー・ホルダーはどこに行ってしまったかな。でも、もう十年以上使っている小物入れの側面には、デビュー・アルバム時期に入手したステッカーが未だ貼ってあるし、妻の神前には、妻が亡くなった年に発売されたアルバム『ロック・ダスト・ライト・スター』のタワーレコード特典だったお箸を置いている。

 Automaton Tourの皮切りとなる来日公演が近づいてきて、検索をしてJamiroquaiの公式Twitterを読んでいたら、動画がアップされており、手術室から出て来たばかりのJKがベッドに横たわり、脊髄注射(腰の痛み止めと思われるが、注射自体もかなり痛かった模様)をしてきたところだが、回復に向けて全力を尽くす、的なことをコメントしていた。「!!」とは思ったが、本人がそう言っているしQueenの曲にひっかけて「the show must go on…」と添えられているし、その2日後には「日本と韓国でのセットリストについて、何かスペシャルなリクエストはある?」的なツイートが(恐らくスタッフからだろうが)されており、まぁ、何とか大丈夫なのではないかと思っていた。だから、呼びかけに応えるべく、初来日時のチラシ+①「Alright」、②「Blow Your Mind」、そして久しく生で観ていない③「Virtual Insanity」のCDシングルと、「AUTOMATON」の10インチ・レコードの写真を重ねて撮り、PCに取り込んで「楽しみにしています!」的なことをアップロード(←うざい)しようとした時だった。。。きちんと本人のメッセージであることを示した「Jay here. A message for Japan…」から始まる来日公演中止の知らせと、真摯なお詫びの言葉がほんの一時間ほど前に更新されていることに気が付いた。既に日本に機材は発送した上での公演直前でのドクターストップとのことで、苦渋の決断であることが文面からも読み取れた。久々にライブハウスで観られると思ったジャミロクワイ(入場番号も60番台で、最前列は無理としても相当間近で拝めたはずだ)が来られなくなってしまったのは残念だったけど、事態が思いのほか深刻なことに改めて気付かされた。腰の痛みとか、痛み止めとかという言葉からは、いやが応にも最愛のプリンスを思い起こしてしまう。タイプは全くと言っていいほど異なるが、二人とも重力に逆らうようなダンスをしていたし。6月に入っても復活の知らせは届かず、1995年の来日ツアーにも同行していたドラマーのデリック・マッケンジーが「1カ月に渡って痛みに苦しめられている」「23年間彼と共に居るが、こんなにひどい状態は初めてだ」のようなことを語るツイッターの動画を受けて、JK自身もベッドに横たわりつつ麻酔が効いた状態で、でもユーモアを持ってコメントをしている様子がアップされていた。6月のロンドン公演が、12月に延期される旨も案内されていた。本当に、心から「お大事に」と思う。

 前述の「オールライト」「ブロウ・ユア・マインド」「ヴァーチャル・インサニティ」をはじめ、JKと共に数多くの名曲を書いて、「これぞジャミロ!」と思わせるようなプレイと、独特の愛嬌をステージにもたらしていたキーボーディスト、Toby Smithは今年の春に亡くなってしまった。2002年にジャミロクワイを脱退した彼を、彼よりも早く脱退していたベーシストのStuart Zender(妻も、初来日公演時に「あのベースの子はいいねぇ」なんて言っていた。)が追悼していたが、そこに使われていた写真が初来日公演時の舞台裏だったり、IN MEMORY OF TOBY SMITHと題されてアップされている動画の一部にも日本公演の模様が出て来たりしていた。初来日公演時のクラブチッタ川崎の舞台裏で、JK、トビー・スミス、スチュワート・ゼンダーの3人が、オリジナル・ラブの田島貴男のインタビューを受ける映像なども当時テレビで放送された。JK自身、トビーへの追悼メッセージで「君がいなかったら、ジャミロクワイ自体がなかっただろう」と触れていて、それは確かにそうだと思う。

 一方で現在、初来日をしていたオリジナル・バンド・メンバーはJK以外残っていないし、彼こそがジャミロクワイというのも、また真実だ。スピード違反で何度も捕まったり、パパラッチと揉めて顔面血まみれになった写真が雑誌に掲載されたり、熱狂的女性ファンのストーカー行為でパニック発作に襲われるようになってしまったというタブロイド記事に心配させられたりもした。しかし、こうして7年ぶりのオリジナル・アルバム『オートマトン』を発表し、出だしこそつまずいてしまったが、ワールドツアーを始めようとしていたのだ。

 来日公演の予習をすべく、iPhoneのApple Musicで『オートマトン』を聴きながら画面に表示される英語の歌詞を追っていたら(便利な世の中だ)、ラスト・ナンバーの「Carla」で、「おやっ?!」となった。カーラという女性に向けての曲なのだが、いつものいけてるねえちゃんソングではないのだ。ほどなくして、あぁ、これは愛娘に捧げた曲なのだな、と気づく。彼は幸せなんだな、と思った。最後にこの曲で〆るというのが憎いね!と思った。そして、良かったね、と思った。アルバムの日本盤CDには、この後にもう1曲「ナイス・アンド・スパイシー」という曲がボーナス・トラックとして収録されている。上では、『スペース・カウボーイの逆襲』の日本盤ボーナス・トラックを本音で激賞したし、どっちかというボーナス・トラックはあればあるほど良いと思いがちな私だが、「カーラ」の後の1曲は、構成としてはちょっと余計かな、とも感じた。「Nice And Spicy」が駄曲だから、というわけでは決してない。でも、「アルバムは今だって、重要なもの」だから。

 先日、チケットを払い戻してしてきたけど、来年以降で良いので、オートマトン・ツアーで来日してくれると嬉しい。でもJK、くれぐれも無理はしないでね。そして、カーラちゃんたちと仲良くね。

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