イダンセ街に立ったわたし
仙台のバンド、アンテナとわたしの話。
2017年10月23日
53
2015年2月、その日の仙台の夜はいつも以上に冷え込んでいた。
わたしは、家から出たくない気持ちを抑えて、白い息を吐きながら、いつものスタジオへ、サークルのバンド練習に向かった。
扉を開けると、暖かい空気。
いつものように、「お疲れさまです」と、店員さんに声をかけて中に入った。
珍しく、休憩スペースのソファには誰も座っていなかった。
今日は煙草が煙たくなくていいな、なんて皮肉交じりの気持ちで、ソファに座ってぼーっとメンバーを待っていた。
そんな気持ちをかき消していく、柔らかくて、でもどこか寂しい、不思議な音楽。
そして、どんどん吸い込まれていくような声に、惹かれた。一瞬で夢中だった。
ここからわたしが、アンテナに夢中になって、染まっていくのは早かった。
アンテナのCDを買う喜びは格別だったし、
ライブの前の日は楽しみで眠れなかった。
そして月日は流れ、2017年10月18日。
アンテナが、「モーンガータ」で、メジャーデビュー。自分のことのように嬉しかった。
いつもよりわくわくしながら、透明なテープを剥がす。
コンポにCDを入れて聴こえてきた1曲目、
"イダンセ街"を聴いて、あることに気づいた。
聴いている時に頭に浮かべたのは、
横断歩道を歩いている時、電車に乗る時、家に帰った時、電気を消す時、布団に入った時、部屋の時計の音が気になって眠れない夜
何一つ変わらない日常の風景。
日常の音にしっかり耳を傾けたことで、
わたしの変わらない毎日に、いつもアンテナの音楽が側にあったことに気づいた。
毎日のように側にいてくれて、見守ってくれていた。
いつの間にか当たり前になっていて、気づけなかったけれど、自分に必要不可欠な存在になっていたのだ。
近くにある大切なものには気づかない、というよく聞く言葉がこのことなのか、と、
そのとき解った気がした。
たくさんたくさん、アンテナに救われて、今のわたしがあることに、歌詞のない1曲目が気づかせてくれるとは、想像もしていなかった。
アンテナは、ぐいぐい背中を押して、走らせてくれるバンドではない。
いつも隣に並んで歩いてくれる。
わたしが走ろうとしたときは、少し後ろから声をかけて応援してくれる。
そんな優しさがアンテナの魅力だと、わたしは思う。
不安で寂しくて、眠れない夜には、
頭を撫でて、そっと抱きしめてくれたり、
泣いても泣いても、ずっと最後まで寄り添ってくれる。疲れ切っても、一緒にぼやけた朝日を待ってくれる。
そんな優しさをもった音楽は、わたしはアンテナしかないと思う。
これから、どんどんたくさんの人を優しさで包み込んで、頭のてっぺんから、つま先まで、全部、アンテナに染めてください。
また不安な夜がきたら、ピザでも取るから、わたしの夜にも寄り添ってください。
大好きです、アンテナ。
わたしは、家から出たくない気持ちを抑えて、白い息を吐きながら、いつものスタジオへ、サークルのバンド練習に向かった。
扉を開けると、暖かい空気。
いつものように、「お疲れさまです」と、店員さんに声をかけて中に入った。
珍しく、休憩スペースのソファには誰も座っていなかった。
今日は煙草が煙たくなくていいな、なんて皮肉交じりの気持ちで、ソファに座ってぼーっとメンバーを待っていた。
そんな気持ちをかき消していく、柔らかくて、でもどこか寂しい、不思議な音楽。
そして、どんどん吸い込まれていくような声に、惹かれた。一瞬で夢中だった。
ここからわたしが、アンテナに夢中になって、染まっていくのは早かった。
アンテナのCDを買う喜びは格別だったし、
ライブの前の日は楽しみで眠れなかった。
そして月日は流れ、2017年10月18日。
アンテナが、「モーンガータ」で、メジャーデビュー。自分のことのように嬉しかった。
いつもよりわくわくしながら、透明なテープを剥がす。
コンポにCDを入れて聴こえてきた1曲目、
"イダンセ街"を聴いて、あることに気づいた。
聴いている時に頭に浮かべたのは、
横断歩道を歩いている時、電車に乗る時、家に帰った時、電気を消す時、布団に入った時、部屋の時計の音が気になって眠れない夜
何一つ変わらない日常の風景。
日常の音にしっかり耳を傾けたことで、
わたしの変わらない毎日に、いつもアンテナの音楽が側にあったことに気づいた。
毎日のように側にいてくれて、見守ってくれていた。
いつの間にか当たり前になっていて、気づけなかったけれど、自分に必要不可欠な存在になっていたのだ。
近くにある大切なものには気づかない、というよく聞く言葉がこのことなのか、と、
そのとき解った気がした。
たくさんたくさん、アンテナに救われて、今のわたしがあることに、歌詞のない1曲目が気づかせてくれるとは、想像もしていなかった。
アンテナは、ぐいぐい背中を押して、走らせてくれるバンドではない。
いつも隣に並んで歩いてくれる。
わたしが走ろうとしたときは、少し後ろから声をかけて応援してくれる。
そんな優しさがアンテナの魅力だと、わたしは思う。
不安で寂しくて、眠れない夜には、
頭を撫でて、そっと抱きしめてくれたり、
泣いても泣いても、ずっと最後まで寄り添ってくれる。疲れ切っても、一緒にぼやけた朝日を待ってくれる。
そんな優しさをもった音楽は、わたしはアンテナしかないと思う。
これから、どんどんたくさんの人を優しさで包み込んで、頭のてっぺんから、つま先まで、全部、アンテナに染めてください。
また不安な夜がきたら、ピザでも取るから、わたしの夜にも寄り添ってください。
大好きです、アンテナ。
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