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15周年のデザートの時間

UNISON SQUARE GARDEN、思い出の場所でのライブを見て

いつも通り、SE「絵の具(イズミカワソラ)」が流れる。そして、鈴木、田淵、斎藤の順に登場し、斎藤が大きく手を挙げ挨拶をする。

いつも通りだ。

でも、いつもとは違う。
斎藤曰く「油断している」状態なのだ。

そう、ここは下北沢CLUB Queである。
UNISON SQUARE GARDENが結成された頃、憧れの場所とされていた場所であり、バンドとして初めてワンマンライブを行った場所だ。

ユニゾンは結成10周年の2014年12月にも、ここCLUB Queでワンマンライブを行っている。CLUB Que20周年のお祝いとして。
当時の映像を見ると、斎藤の「またQueでやりたい!」という言葉で締めている。

2019年12月27日
「Bee side Sea side Que side」と名付けられた夜、UNISON SQUARE GARDENがCLUB Queに帰ってきた。

斎藤の言葉の続きが5年越しに始まる。
 
始まりはカップリング曲である「リトルタイムストップ」だ。
彼らは、9月から「Bee side Sea side~B-side Collection Album~」というアルバムを引っ提げた全国ツアーを行っていた。カップリング曲だけのアルバムであり、カップリング曲だけのツアーである。ツアー中に新曲「Phantom Joke」がリリースされるも、セットリストにこの曲が入ることも無い。そんな、徹底してカップリングに拘ったツアーが終わって間もない時期に行われたこの公演も、カップリングツアーの延長であると考えて良さそうだ。

3人はツアーでこれまで立ってきたステージよりも狭い、距離の近いところで目を合わせ、頷きながら最初の音を奏でる。

続いて、オーディエンスのジャンプ、コーラスが止まらない「セク×カラ×シソンズール」である。斎藤の「ようこそ!」という言葉も、会場の熱量を一気に上げる。

ツアーと同じ流れだ。

そう油断していたら度肝を抜かれた。3曲目はツアーとは違い「over driver」だったのだ。セットリストが違うということは、ここからがCLUB Queという特別な場所のライブの本番だ。この「over driver」の間奏部分のベースソロ、続くドラムソロへと繋ぐギター、ドラムソロ、最後にギターソロという流れ。これこそが、ライブで魅せてくるユニゾンの良さが凝縮されている部分だと思うのだ。
そして、不穏な和音で始まり、銃声が響く「ピストルギャラクシー」と続く。同じ曲なのに、部分ごとに雰囲気が大きく変わる。Aメロ、Bメロ、サビ……雰囲気の違う旋律を綺麗に繋いだこの曲、ライブで聴くことで良さが大幅に増した。

序盤から思い出の場所で、UNISON SQUARE GARDENが今年やってきたことを存分に見せつけてくる。高い演奏力に隙がない。だがここで、斎藤は今日のライブを「油断している」「15周年様々なことをしてきた締めくくりで、デザートのようなライブ」と表現した。2019年は今までの15年間を走り抜けてきた彼らのご褒美のような1年、そのご褒美の中でもデザートとなると格別だ。

さて、彼らのデザートの続きを堪能しようじゃないか。

続いて「flat song」だ。今日のライブがデザートなら、この曲は一緒に飲む紅茶のような存在、1口飲んでホッとする、落ち着いた気持ちになるバラード曲だ。見に来ているファンをじっくり見る斎藤の姿も印象的だった。
そして、斎藤作詞作曲の「三日月の夜の真ん中」、アップテンポで自由に体を揺らすにはもってこいの「シグナルABC」と続く。
タイトル通り、2日遅れのクリスマスがやってきた「サンタクロースは渋滞中」のイントロでは、メンバー同士で笑い合う瞬間があった。さらに、「スノウリバース」が奏でられる。この曲は、インディーズの頃から演奏されているが、近年では、カップリング曲だからとあまりライブで披露されてこなかった。それでもファンからの人気は高い。今年頭に開催されたカップリング総選挙では1位に輝き、MVも制作された。しかし来年は、お祝いモードの15周年から一転、「普通のロックバンドに戻る」とかねてから公言しているユニゾンのことだ。カップリング曲であるこの曲もライブで披露される機会は一気に減るのではないか。それでもこの先の未来も、カップリングならではの温度感でこの曲は、ファンにもメンバーにも愛され続けていくのだろう。
そして、田淵節と呼びたくなる独特の言葉が並ぶ「ここで会ったがけもの道」を終えて、斎藤が語り始める。

「CLUB Queは僕らが初めてワンマンライブをした場所で、それ以外にも様々なイベントにも出させてもらい、UNISON SQUARE GARDENを語る上で、なくてはならない存在です。」と。そんな思い出の場所に斎藤は、前述のように油断して現れたので、MCの内容を考えずに来たと言う。少し考えて斎藤は続ける。

「CLUB Queは音に包まれる感じがする」と。

確かにあったその感覚。ステージは前なのに、前方からではなく、左右、なんなら後ろからもユニゾンの音が耳に届く感覚に陥った。CLUB Queの隅々までに3人が奏でる音が浸透していたからこそ起こる現象だろう。
この、音に包まれる感覚が好きという斎藤はこの日、普段付けているイヤモニを付けていないことを明かす。

思い出の場所でのライブは続く。
「ラディアルナイトチェイサー」では、難しいギターを颯爽と演奏しながら歌っている斎藤の姿が伺える。その眼は自信に満ち溢れている。だが、この曲には相当苦労したようだ。発売当初、「3日くらいほぼ徹夜してやっと弾けるようになった。寝る前に、3回連続でノーミスで弾けるようになったらこの練習を終わろうって始めるが、朝になる」とラジオ(2018.3.23 文化放送 楽器楽園~ガキパラ~)で話していたのだ。それを思い出した上で改めてライブで見ると、斎藤の目に宿るその自信には感動する。

ここで流れが一転する。
「Catch up, latency」のイントロが流れたからだ。突然のシングル曲。普段なら、セットリストにシングル曲が入ることはごく普通のことと捉えるが、近頃カップリングツアーをやっているユニゾンだからこそ、久しぶりに聴くシングル曲に驚きの声があちらこちらから漏れていた。
この曲には「四半世紀の宇宙船」という歌詞がある。CLUB Queが今年25周年を迎えたお祝いとこの歌詞を掛けたと思われる。
そして、「シュガーソングとビターステップ」で更に熱量が高まる。田淵がフロアに向けて指差しポーズをしたかと思えば、「生きてく理由をそこに映し出せ」の旋律に合わせて、立ち上がり、腕を大きく振りながら片手でドラムを叩く鈴木の姿があった。
ファンの拍手や歓声が響いたのは、「プログラムcontinued(15th style)」だ。「今日くらいは祝ってくれないかな」という、10周年のときに言わなかった言葉を15周年のタイミングで言うからこそ、言葉の重みがあり、ファンからのお祝いの気持ちが溢れ出る。そして3人が向き合い、目を合わせ、満面の笑みで曲を締める。

15周年最後のワンマンライブを、「プログラムcontinued(15th style)」で綺麗に締めたと誰もが思っただろう。
しかし彼らはまだ仕掛けてくる。

「Phantom Joke」だ。

10月にリリースされて以来、まだ一度もライブで披露されていない。前述の通り、カップリングツアーは、カップリング曲だけしかやらないという縛りがあったからだ。ライブで聴くのは来年だろうと考えていたのに、思いがけず聴くことになったこの曲に、フロアもこの日1番の盛り上がりをみせる。
休みがほぼないドラムをはじめ、四拍子、三拍子が入り混じり、演奏の難易度がとてつもなく高いと言われるこの曲、それを平然とやってのける姿からは15周年のロックバンドの貫禄、メンバー間の信頼関係が伺える。間奏では、斎藤と田淵が向き合い、笑い合いながら演奏する。
「ロックバンドは、楽しい。」
これは、ファーストアルバムに付属した帯に書かれた言葉だが、メンバーはこの言葉をライブで体現している。

そして、メンバー3人が顔を合わせ曲を締めてすぐに「バイバイッ!」と挨拶し去っていく。アンコールはない。

一瞬だった。

真っ先に出た感想はそれだ。
一瞬だったのに中身が詰まりに詰まりまくっていたからお腹いっぱいだ。なんと贅沢なデザートだったのだろう。
彼らのライブはいつだってそう。MCを極力減らす、そしてこの日はなかったが普段のライブでは、曲と曲をセッションで繋ぎ、音が止まる瞬間を最大限に減らしているからこそ起こる感覚だ。

こうして、15周年を迎えた2019年最後のワンマンライブをCLUB Queで終えた。
つまり、UNISON SQUARE GARDENの15年の歴史で、初めてのワンマンライブと最後のワンマンライブの会場がここ下北沢CLUB Queということになる。

5年ぶりに立ったこのステージ、今回は10周年の年に立ったときとは違った。
というのも、CLUB Queで定期的にライブをしていた頃を振り返る、あまり普段はやらない曲を思い出すようなセットリストだった5年前とは違い、当時よく演奏されていた曲は入っていないのだ。
15周年を盛大にやってきた彼らは、思い出の場所で今の自分たちの姿を見せるという意思があったと思う。
だからこそ、今年を象徴する「プログラムcontinued(15th style)」や、未来を謳う「Phantom Joke」が歌われることがしっくりくる。

CLUB Queでのライブを「やっぱり楽しい!」と言う斎藤、言葉にしなくてもステージに立つ姿から楽しさが伝わりまくっている田淵に鈴木……
きっと彼らはまた5年後に、このステージに戻ってくるかもしれない。

思い出の場所で、アニバーサリーの、これまでの15年の区切りを付けて、UNISON SQUARE GARDENはまた歩き出す。
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