4124 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

XIIXは斎藤宏介の普段着

White Whiteで魅せた彼の新たな音楽性

2019年10月20日、UNSON SQUARE GARDENのフロントマンである斎藤宏介が新しいバンドを結成した。

名前はXIIX(テントゥエンティ)。結成日から取った安直な命名ではあるが、表記はローマ数字…に見せかけたアルファベット。
バンド名からして、わかりやすいようで一筋縄ではいかない、斎藤宏介の性質を表しているようだった。

コンビを組むのは、様々なアーティストのサポートを務める、ベーシストの須藤優。
10数年来の友人であり、斎藤の自主企画「SK's Session」にも初回から参加している。

斎藤も「UNISON SQUERE GARDENのメンバー以外では最も頼りにしている」と豪語するぐらいの強い信頼を寄せている。

そんな2人が満を持して結成したXIIXは、2020年1月22日に1stアルバム「White White」をリリースした。
そこには、今までのイメージとは一線を画す斎藤宏介の新たな魅力が溢れていた。
 
斎藤の「UNISON SQUERE GARDENでは表現できない音楽を形にする」という思いのもと始まった活動ゆえに、彼がバンドの主軸を担うことは容易に想像できた。

そうして解き放たれた彼の音楽性は、周囲の期待を軽々と超える14曲となり、ひとつの作品としての完成を迎えた。

アルバムのタイトルでもあり、1曲目を飾る「White White」は、幕開けにふさわしい壮大なインストゥルメンタルが自然と耳に入ってくる。

リード曲的な存在である「Stay Melow」では、ヒップホップの要素を取り入れ、おそらく初であろうラップを曲中で披露している。

「LIFE IS MUSIC!!!!!」では、咳や時計のチクタク音など、日常の音を使ってメロディを作り上げていた。

そんな自由な曲がありつつも、「Light & Shadow」や「Saturdays」といった華やかな曲も随所に散りばめられている。

現代の流行やトレンドを貪欲に自分のものとしながら、それを自身の音楽に落とし込み、新たな表現を生み出す。
どのアーティストも行っている作業であるが、それがより洗練したものになって仕上がっている印象を受けた。

求めていたものの範疇ではあるが、それが100点満点中120点で返ってきたような。
嬉しい誤算に満ちたアルバムであった。
 
そんなアルバムを聴いていくうちに、一つの結論に辿り着いた。
「XIIXは斎藤宏介の普段着である」と。

"UNISON SQUERE GARDEN"の斎藤宏介といえば、シャツにネクタイというのがトレードマークである。
ロックバンド然とした、自由な柄の服もあるが、基本的にはカチッとした正装の様な印象を受ける。

それは音楽でも同様である。
田淵智也という作曲家が、斎藤の歌や演奏に最も適した曲を作り上げる。
まるで服装をコーディネートしていくように。

さらに、"UNISON SQUERE GARDEN"の斎藤宏介は、確かな哲学と確固たる信念を垣間見せることが多い。

15年間積みあげてきた揺るぎない自信も理由のひとつだと思うが、バンドの根幹を信頼するメンバーに委ねることで、それを如何に説得力を持たせるのか…そこに全神経を注いでいるからではないかと考える。

だからこそ、1人では出せないであろう、一聴で判断できない深い魅力に溢れているのだ。

UNISON SQUERE GARDENというオーダーメイドの服を華麗に着こなす。
それが今までの斎藤宏介の印象である。
 
けれども、"XIIX"の斎藤宏介はそれとは真逆であった。

ビジュアルからしても、ネクタイをしていないことに違和感を感じる人もいるだろうが、決して見た目の話だけではない。

とにかく"型"にとらわないのだ。
休日に好きな服装を選んで出かけるように…曲ごとにそれぞれ異なる斎藤の姿が見えた。

「Answer5」はアクティブなパーカー、「E△7」は爽やかなジャケット姿、「XXXXX」は無骨なライダース……少し想像するだけで、様々な姿が斎藤の垣間見えるようだった。

もちろん人によってイメージは異なるであろうし、曲作りは須藤によるアレンジの力も大きい。

しかし、斎藤自身が1から作った曲には、"日常感"のようなものが漂っているのだ。
それまで彼から見えることのなかった"隙"…と言えば良いのだろうか。

どこか肩の力を抜いたような、自然体の音楽なのである。
何よりバンドを自由に楽しむ姿勢が前面に感じられた。

着たい服を自由に選び、考えうる最上の着こなしで仕上げる。
新たなバンドでの斎藤宏介は、そんな等身大の姿を覗かせた。

それはUNSON SQUARE GARDENでは決して見ることのできない、彼の飾らない一面だと思う。
満を持してこのタイミングで触れたからこそ、一層素敵なものであると感じた。
 
今回のアルバムに「ilaksa」という曲がある。刺のある植物がタイトルの由来であるが、歌詞にも刺さっては抜けない"トゲ"を連想させる言葉が並べられていた。

メロディは洗練されたものに仕上がっていたが、どこか切なさが見え隠れする曲になっているのだ。

「Fantome」では、"甘い果実が 滴るまで あなたを 台無しにしてみたかったな"という大胆な歌詞が、一部のファンを騒然とさせた。

XIIXでは、等身大の斎藤を見ることができるのだろう。
だが、きっとそれはキレイな部分だけではない。

冒頭でも触れたが、一筋縄ではいかない"影"のような性質にも触れていくことになるはずだ。
聴き手にとって、未知の世界になることはまず間違いない。

それがどういう方向に転がっていくのかは、おそらく当人たち以外誰もわからない。

ひとつだけ言えるのは、斎藤自身が絶対の自信を持って音楽を発信していくということ。
その部分は今までと何ら変わりがないはずだ。

それがわかっているからこそ、彼を少しでも知る人間には、驚きはあっても不安はない。

UNISON SQUERE GARDENも、XIIXも、両方100%の力で取り組んでいく。
そう言った彼の言葉に嘘偽りはないから。

どんなかたちの音楽でも、聴く人を納得させるものを作り上げるのだと断言できる。

これから200%の斎藤宏介が見れることが楽しみでならない。
"正装"の斎藤も、"普段着"の斎藤も、変わらない魅力に溢れているのだから。

この時代に彼の音楽を見つけることができた僕らは、きっと幸せ者だ。

そんな幸福を噛みしめながら、明日もプレイリストとにらめっこをする。
そして、悩んだ末に再生ボタンを押すだろう。

明日はどちらの彼と出会うことができるのか。
答えは"午後"の"夕映え"と"午前"の"曙空"が知っているのかもしれない。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい