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ついででもなく、義理でもなく

BUMP OF CHICKEN『新世界』がくれた新しい世界

 「全員の誕生日を覚えなさい。
 誕生日は、生まれてきてよかったねと、伝える日だから」。

 児童福祉施設に就職し、直属の上司に、「何からすればいいでしょうか?」と尋ねた時に、返ってきた言葉。
 もう20年近く前のことだが、はっきりと覚えている。職員として、もっと専門的なスキルを求められると思い込んでいた私は、ごく日常的な内容が返ってきたことに、少し驚いた。
 そして、その日から、誕生日の意味について、あれこれ考えるようになる。
 
 私の誕生日は、2月14日。バレンタインデー。
 今でこそ、「お世話になった人にチョコを渡す」という日になりつつあるが、私の学生時代は、「女性が、好きな人にチョコを渡す日」であった。恋愛感情を持っている相手に、想いを伝える日。恋愛感情は無関係の先輩等に渡す場合もあったが、それは、本命とは完全に区別され、「義理チョコ」と呼ばれていた。
 
 覚えてもらいやすい、この日にちのおかげで、私は、物理的には得をしていた。高校時代は、一応女子でありながら、両手で持てないほどのプレゼントを貰い、自転車に載せることができず、急遽バスで帰宅した事もあった。
 しかしながら、そのほとんどが、
「彼氏に渡すケーキの練習として、先に作ってみたものだから、食べて」とか、
「義理チョコが余ったから、あげるね」
といったものだった。
 
 得はしても、心は満たされていなかった。
 もともと、家庭環境にも恵まれず、他者の言動に過敏に反応してしまう私。「ついで」「義理」といった言葉には、かなりぐさっときた。誕生日を覚えていてもらえるだけ、いいじゃない。自分に言い聞かせるけれど、やはり、素直に受け容れられない。
 作り笑いで自分をごまかす日。そんな自分が嫌になる日。それが、私の誕生日だった。
  
 社会人になってからは、わざわざ自分の誕生日を公表する機会も減り、誕生日に愛想笑いをする必要もなくなり、少し楽になった。
 そして、冒頭の上司の言葉と、最愛のバンド BUMP OF CHICKEN に出逢うこととなる。

 BUMP OF CHICKENと出逢っていなければ、私の今はない。そう断言できる。やりたい仕事に就いたのに、弱くて情けない自分を見せつけられ、泣いてばかりだった時。身近な人の死。過労とストレスで倒れ、退職せざるをえなかった時。どんな時も、私のそばには彼等の曲があった。だからこそ今がある。BUMPの曲を通して、生きること、死ぬことについて、考えてきたような、この20年間でもある。
 
 施設の子ども達の誕生日、おめでとうの歌を歌い、ケーキを食べる。一人ひとりが、拙くても、自分の言葉で、その日の主役にお祝いのメッセージを伝える。おめでとうや、ありがとうを伝えられた主役は、心から嬉しそうな表情をする。
 それを見ながら、私は、BUMPの曲達を思い出す。いい事ばかりではないけれど、とにかく生きようと、手を引いてくれるような『HAPPY』。今ここから、どんな方向へだって歩いていけると伝えてくれる、『Stage Of The Ground』など。
 そう、誕生日は、自分の人生の主役は自分だと感じられる、かけがえのない日なのだ。生きてきた意味と、生きていく意味があるということを、感じてもらうために、周りの人も、心を砕いて思いを伝える日。
 私も、そんな誕生日を過ごしたかった。「ついで」や「義理」ではなく、私自身が生まれてきて、生きてきたことに、思いを馳せてほしかった。いや、実際は、周りの人は、そういう気持ちを持っていてくれていたのかもしれない。未熟だった私達は、ただ、きちんと伝えあうに至らなかっただけかもしれない。

 いろんな体験を経て、BUMPの曲と共に歩んできた今、ようやく、上司の教えてくれたことの大切さが、解るようになった気がしている。

 そして私は、『新世界』に出逢えた。
 BUMP OF CHICKENの最新アルバム『aurora arc』に収録されている曲、『新世界』。この曲は、某菓子メーカーのCMのタイアップとして作られたものだったが。歌詞に、これまでのBUMPにはなかった「アイラブユー」という言葉が含まれており、CM自体も、バレンタインデーを彷彿させる内容だったため、当初は、ネガティブな記憶が呼び起された。

 しかし、繰り返し聴くうちに、それらは、塗り替えられていく。

 〈君と会った時 僕の今日までが意味を貰ったよ〉

 〈明日がまた訪れるのは 君と生きるためなんだよ〉

 とてもとても温かく重いプレゼントを貰った気がした。バレンタインデー、ではなく、誕生日のプレゼント。転んでばかり、怪我してばかりの私だけれど、そんな私でも、生きていていい、そんな私が生きている意味があると、伝えてくれているような。これまで一緒に生きてきた、「BUMPの曲」という複合体が、私に唄いかけてくれているような。
 これまでの歩みがようやく報われた気がして、私はひどく勝手ながら、この曲を、自分のバースデーソングに認定させていただいた。

 去る2月14日、また、誕生日を迎えることができた。
 BUMPリスナーのお友達から、沢山の「おめでとう」と共に、『新世界』の〈ベイビーアイラブユーだぜ〉というワンフレーズをいただいた。
(なお、これが、「アイラブユー」ならば、誰も言ってくれなかったと思われる。 「ベイビーアイラブユーだぜ」という、対象を問わない言い回しだからこそ、年齢性別を問わず、皆が口にしてくれたはずだ。)
 とてつもなく、嬉しいことだった。私も、一人ひとりに、精一杯のありがとうを返した。ついででも、義理でもなく。
 こんなに、今日まで生きていてよかったな、と感じられた誕生日は、初めてだ。まさに、新しい世界が開けた。
 生きていれば、楽しい日ばかりではなく、むしろ、辛い日悲しい日の方が多いのは、もう十分解っている。それでも、私はまだこの世界で生きていきたい。ついででも、義理でもなく。自分の人生を生きてみたい。
 
 こんな気持ちにさせてくれたBUMP OF CHICKENに、大声で伝えさせてください、ベイビーアイラブユーだぜ!!
 
*文中〈 〉内は、全て BUMP OF CHICKEN『新世界』より引用
 
 
 
 

 

 

 
 
 


 

 
 
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