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また会えるって 約束して

THE YELLOW MONKEY「未来はみないで」は世界に向けて愛を発信する

初めて聴いたのは、ナゴヤドームだった。
全ての演奏が終わり、ステージを去ったTHE YELLOW MONKEY。
そろそろ席を立とうかと思っていたところ、チクタクという音とギターが突然ドームを柔らかく包み込んだ。

初めて聴く曲だった。

優しいロビン(吉井和哉)の声が響き渡ると、高揚しきった心が少しずつ体温を冷まして落ち着いていく。
「未来はみないで」
その歌詞を聞いて初めて、この曲が、あの「未来はみないで」と知る。

再集結をアナウンスした2016年冬。
当初は第1曲目になるはずだった「未来をみないで」。
結局はレコーディング直前に出来た「ALRIGHT」にその役を奪われた形となったが、このタイミングで世に出ることが許された。

その運命的な曲は、ドームツアー後にお休みに入ることを公言している彼らの置き土産のように、私たちに残されていった。

最初はやや戸惑った。
本当にこの曲を再集結後第1曲に考えていたのか? バラードであることも驚きだが、とらえどころのない歌詞には、強い決意や文字通り未来が見えない。
ALRIGHTの存在感と比較するとなんとも脆弱に感じたのだ。
もちろん、素晴らしい名曲であることを差し引いても、再集結第1曲めとしては、弱すぎるように思っていた。

だが……。あれからわずか2カ月。京セラドームで聴いたこの曲は、私に全く違う感情を沸かせた。
さらに、3月。MVの発表とともに配信された今、さらに大きな感情に包まれることになった。

それはまさに、運命の楽曲だった。

この楽曲を作った頃、ロビンは少し迷いがあったのかもしれない。
再集結を決めたはいいが、これはどこまで続けられるのか。
彼としては、再開するのであれば、最後までやりきりたい気持ちはあったと思うが、それは不確かな未来だったのではないだろうか。

未来は見ないで そんな不確かな 言葉に隠れて 迷子になったりして

だが、リハを何度も重ねていくにつれ、ロビンの気持ちに変化が起こった。
メンバーとの絆、グルーヴの自信、足が地に着いた感覚。それによって「ALRIGHT」が誕生した。

話を「未来をみないで」に戻す。
不確かな未来を語ったこの歌は、進化を遂げ続ける彼らにとって、発表するタイミングを失っていた。
そんな彼らにとって、SEASON2の終わりを飾る今のタイミングが巡ってきたのは幸いだった。
いや、彼らだけでなく。私たちにとって。

全編、美しく奏でられるバラード。
同じバラードのJAMやSO YOUNGとも全く違い、とことん優しくロビンは私たちに語りかける。
未来は明るい言葉であると同時に、不安で暗いものでもある。
だからこそ、そんなことは今はおいて、ここで好きな歌を一緒に歌わないか?

こうしよう、そうするべきだ。とロビンは一切言わない。

強く抱いてもいいかな
好きな歌を一緒に歌わないか?
今はここにいて 昔のことだけ 話したっていいから

問いかけて、誘う。「ねえ、いいだろう?」と。

歌うようなエマのギターが切なく胸に迫ってくる。
気持ちを下支えするヒーセのベースが時にメロディーを奏でる。
バスドラムを心臓の音のように響かせながら独特なスネアの音を耳に残していくアニー。

他の追随を許さないアンサンブルにロビンの限りなく優しい声が乗っていく。
いつもの絡むというより、まさにこの曲は乗っている感じだ。
緩やかな海に浮かぶ船に身を任せて、月夜を進む。

愛と再生を私たちに強烈にアピールして。
 
先日解禁となったMVをみて、この「未来はみないで」はもう一つの進化を遂げる。
監督である丸山健志氏の感性が見事にTHE YELLOW MONKEYの楽曲と交じり合う。
世界を席巻する「不安な未来」に送る鎮魂歌のように。

美しい氷の国での弔い。
悲しみと苦痛。亡くなった女性の頬伝う涙。

泣き叫び、やがて笑う赤ん坊。

劇場の床で抱き合う幸せそうな恋人たち。
 
「世界中の色々な人たちにメッセージを送るように歌ってください」
MVの撮影時、丸山監督はロビンにそう言う。

京セラライブの後、声を出さずに喉の回復に努めたロビンにとって、監督の気持ちは伝わっただろうか。
MVを観れば、それは一目瞭然だ。

この曲を作った時に感じていた未来への不透明感。
解散してしまったことの罪悪感と贖罪。

期せずして、その不確かな感情と垣間見られた希望が、今の世界に必要な歌となった。

生と死と再生、そして、愛。

悲しみと切なさと愛の躍動を見せるMVに乗せ、長いロビンの両腕のように広くて懐の深いこの楽曲は、私たちを優しく包みながらも、刺して、刺して、刺し続ける。

愛とは何かを知ったその朝に あなたはこの部屋出て行くのでしょう
愛とは何かを知ったその朝に 僕らはこの部屋出て行くのでしょう

目ざまのくちづけをして、擦れ合う肌に幸せを感じたのに、やっぱり出ていく。
その後ろ姿を私たちは、泣きながら見送ることになるのだろうか?
そんな、不確かで不安な未来が心に迫ってくる。

これほどにロビンもメンバーの音も全てが優しく、暖かく包み込んでいるのに。
 
今、ここでこの記事を書いている段階では、東京ドームのドームツアーファイナルが開催されるかどうかは不透明だ。
ロビンは京セラでこう言っていた。どの楽曲も世に出るタイミングというものを持っている。
「未来はみないで」は、まさにこの時のために作られたような曲だった。と。

まるで、4年前、現在の状況を預言したような「未来はみないで」。
私たちは最後の歌詞に望みをかける。

また会えるって 約束して

アウトロで、ロビンが黙って俯く。そしてふっと後ろを振り向く。
唐突にこのMVは終わる。

「未来はみないで」
今、彼らは世界に愛を発信する。
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