4042 件掲載中 月間賞毎月10日発表
この数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。

型遅れのタイムマシーン

back number dome tour 2018 "stay with you" に触れて

いつまでも夢を見ていたい。目を開けたら覚めてしまうような、時が経つごとにどんどん記憶から抜け落ちていくような淡いものではなくて、いつまでも余韻をもって身体から離れない、確かな温もりを持った夢が見たい。好きな曲のイントロが聞こえてきた時の高まり、会いたくても会えない人に手が届きそうな瞬間、すっかり覚えてしまった音の運びが予想もつかないところで変化して、その音の上がり方ひとつにだって心打たれてしまう。自分の世界にうまく彩りを加える方法を知らないから、私は誰かが照らす光に包まれたいと思った。私にとっての強い光とは心躍らされる音楽を届けてくれる人で、どうしてもそこに近づきたいと思った。

back number、『stay with you』
この日のライブを見て、そう思った日のことを強く思い出した。

『瞬き』から始まるセットリスト。「幸せとは 星が降る夜と眩しい朝が 繰り返すようなものじゃなく 大切な人に降りかかった雨に傘を差せる事だ」なんて、私がたどり着いたこともない問いの答えを何の迷いもなく言い切っている。誰にとっても幸せが定義するものは違うけれど、だからこそ自分なりの答えを持っている彼の描く世界を見てみたいと思うのかもしれない。

つづく『SISTER』は「地下鉄の窓に映り込む 疲れ切った逆さの君が 君の為にこの歌を歌ってる」から「泣かないで 君が費やしたすべてが意味を持つその時まで」が好きだ。いつかの自分がこれを聞いて救われるといい、それほど突き抜けた元気をもらえる応援ソングだと思う。そこから『ARTIST』『青い春』と、盛り上がるけれどもどこか薄暗さを持つナンバーが続く。「夢をみては打ちひしがれて 立ち上がってはまた憧れてさまよって 自分を知った気になって また分からなくなるそんな青い春と言う名のダンスを」行く先も分からずふらふらと彷徨っていた、だけど思い返せばそんな日々も悪くない、と思わせてくる不思議な時間。あれをダンスだと例えるのはやられた、という感じだ。いつか踊らなきゃいけない日が来たとしても、そんな一見ダサい自分探しの旅を「青い春」という名のダンスだと思えたなら、“光に包まれるその日々を”夢見て頑張れるのかもしれない。

MCを挟んで歌い出された『チェックのワンピース』は、自分もライブで歌ったことがあるからなんだか思い入れのある曲。そこから聞き覚えのないメロディーが耳に。「別に悲しい歌を作ろうとしてたわけじゃない 歌いだしたメロディをただなぞっただけ 別に悲しい歌を作ろうとしたわけじゃないのに ないのに 君の代わりなど 僕はいらないのに」ああここから『エンディング』につながってしまうのか、鳥肌が立った。
最高の失恋ソングだ、あの日見た映画のエンディングに自分たちが重なってしまうなんて。「君の代わりなど いないと気付いたのに」と言っていたのに「君の代わりなど 僕はいらないのに」に最後だけ変わってしまうところが何よりも好き。やっと最後で本音を言ってくれた、と思う反面、何でもっと早く言ってくれなかったの?と思う。あと一瞬早くお互いが手を伸ばしていれば繋がれた恋人だってこんなものだ。
「あなたが勇気を出して初めて電話をくれたあの夜の私と何が違うんだろう」というフレーズも、多分一度は誰もが思うことなんだろう。自分は何も変わっていないのに時間がすべて連れ去っていった気がする、あの瞬間。この曲で一番好きなのは「気が付けば横にいて 別に君のままでいいのになんて 勝手に涙拭いたくせに 見える全部聴こえる全て 色付けたくせに」だ。最後まで言われた言葉をなぞって、これでもかというぐらい相手の存在が自分にとって大事なことが伝わるフレーズだから。誰かの存在によって世界が色づいて、なのに一番欲しかった色が消えていくほど寂しいことってない。絶対に悲しいのに『ハッピーエンド』って言っちゃうところまで、そう言わないと終われないところまで、back numberの音楽が好きだ。

『ゆめなのであれば』のピンクと紫のシャボン玉が飛んでそうな爽やかさも、手拍子と共に始まる『半透明人間』の「もう顔も見たくないと思うから」のアレンジ具合が良かった。CD音源では決して聞けないアーティストの遊び心や癖が出る一幕、こういうのが聞きたくて私はライブへ行く。だけど、あのブロックで一曲しか聞けないのであれば、『海岸通り』を選ぶ。イントロから歌詞、荒っぽさ、女々しさまで何もかもが刺さってしまう。私は絶対的に悲しい歌詞を明るいメロディーに乗せた音楽に弱い。

最後に、私がback numberのライブに行く一番の理由。それは、この曲で叫んで飛びたいから。依与吏さんの「ワン、ツー?」に応えたい。何度もライブ映像で見て憧れた映像。たった一度だけ行けた愛媛武道館でこの曲を聴けたとき最高潮に高まった。中学校のときの夢は、この歌に出てくるスーパースターだった。「どこの街に住んでいても 遠くからでもよく見えるような光」になりたかった。『スーパースターになったら』大事な人に会いに行こうと決めていた。

「曇りひとつ無いわたしに祈りを 雨に打たれるあなたに光を」
『stay with me』という楽曲で歌われる一節を、私たち全員に届けてくれているようなツアーだった。「そばにいてほしい」と誰かに強く願った歌が、「そばにいるよ」と寄り添ってくれるライブになった。彼らの音楽に惹かれるのは、メロディーはもちろん歌詞の力が大きい。誰かに向けたラブソング、応援ソングだからこそ、まっすぐに私たちの心に届く。いつかのライブでボーカルが言った。「僕たちの音楽じゃ何も変えられないかもしれないけど」って。少なくとも私は彼の描く世界に救われたし、助けられたし、世界が色づいて見えた。自分の表現できなかった感情を言語化してくれた。back numberの音楽を聴くと、二度と戻れない青春時代にタイムスリップしたような気がするのだ。一瞬で当時の気持ちに引き戻してくれる。この世は時間が戻せないって教えられたけど、back numberの音楽が私にとってのタイムマシーンであることは間違いない。

いつの日も輝きながら声を届けてくれる彼らが“彼女にとっての型遅れ”って意味で名付けたバンド名は、由来なんて忘れてしまうぐらい月日が経って、皮肉みたいに突き刺さる。このバンドが私にとってのback numberになる日など、きっと来ない。
  • 投稿作品の情報を、当該著作者の同意なくして転載する行為は著作権侵害にあたります。著作権侵害は犯罪です。
  • 利用規約を必ずご確認ください。
  • ハートの数字はTwitterやFacebookでのリツイート・いいねなどの反応数を合算して算出しています。
音楽について書きたい、読みたい